デブは精神攻撃を受ける
「『名前 富田冬子
国籍 日本人
性別 女性
年齢 25歳 彼氏いない歴=年齢
死因 自身の体重による窒息死。
身長 160.2cm
体重 618.1kg
肥満指数 241.4%(標準体重56.3キロの約5倍)
趣味 オンラインゲーム、テレビ視聴、昼寝。
好物 ファーストフード、ポテトチップス、コーラ、カリカリ梅。
苦手 野菜、苦い物、辛い物
備考 1日平均して約9000キロカロリーを摂取し、自堕落な生活を繰り返す』
以上の点で何か間違っている箇所はございますでしょうか?」
気が付いたら見知らぬ場所で椅子に座っており、目の前にいた男が私の個人情報をペラペラと喋っていた。
と言うか体重、推定では400キロかと思っていたけれど大分オーバーしていた。
我ながら中々の肥え太り具合だ。
「あの~、どこか間違っている箇所がありましたか?」
「あ、いえ、その……ふしゅー、私の体重は本当に600キロいってるんですか?」
久々に家族以外の人間と話してテンパった私は割とどうでも良い自分の体重について質問していた。
「はい、BMIや身長共々全て死亡時の物です。あ、BMIと言うのは肥満指数と言って貴女の肥満度を表す数字です。いやぁ、標準の約5倍って中々の肥え太り具合ですね!!凄い厚さの肉襦袢の重ね着!もうちょっとで世界狙えましたよ!!」
とてつもなく良い笑顔で言われた。
自分と同じ感想を抱いたみたいだけれどその感想は出来ればそっと胸にしまっていて欲しかった。
数年ぶりに話した他人、ましてや異性に肥え太ってるやら肉襦袢やらと言われて脆弱なデブは泣きそうだ。
世界を狙えたと言われても何も嬉しくない。
「さて、ここはどこだろうとか思っているかもしれませんが、ここは使者が天国行きか地獄行きかの審判を受けるための待機室みたいなもんです。
本来なら貴女にもその審判を受けて貰うのですが貴女を見て気が変わりました。
面白そうなのでそのまま異世界に引っ越しして貰います。
そこで第二の人生歩んじゃって下さい☆
まぁ、歩むって言ってもその体じゃ自力で歩行すら出来ないでしょうが(笑)」
この人はことある事にデブのメンタルを抉らないと気が済まないのだろうか。
止めて!もう私のライフは0よ!!と泣き叫びたくなってくる。
「異世界にしばらく行かせる位は僕の権限内ですし世界も僕が好きに選べるのでこっちの好みで選んでおきますね☆」
「…え、そう言うのってこっちで選ばせて貰えるんじゃ…ふしゅー」
ネット小説とかで見たのではある程度の希望は聞いて貰えていたはずだ。
「それじゃあ面白くないじゃないですか。
大丈夫!ちゃんと魔法が使えてデブに都合の良い世界にしておきますから!」
「はぁ、ありがとう、ございます?」
「あ、別にこれは貴女の生前の行いが良かったとかじゃなくってそこに貴女を送ったら面白そうだってだけなんでそれは理解しといて下さいね☆」
「……あ、はい」
「初期装備は……まあ、今のままで良いですよね。
では、人生第2ラウンド頑張って下さいね☆」
「え、今のままって」
「それでは、アデュー!!」
「ちょ、まっ」
制止も空しく、男がパチンっと指を鳴らした途端に座っていた椅子が消え、そのまま体が床を突き抜けて暗闇の中に落ちて行った。
「あ、別に貴女の体重で床が抜けた訳じゃないので安心して行って下さいね~」
そんな凄くどうでも良い情報が聞こえたのを最後に私は再び意識を失った。




