デブは身内に罵られる
超肥満体質な主人公のお話です。
「いい加減にしなさいよ!!この!デブが!!!」
いつもの日課でポテチを齧りながらネトゲーをしていると叫び声と共に勢いよくドアが開けられた。
ボス戦中で目が離せないが声からして多分妹かなーと思いながらキーボードをカチカチしてスキルコマンドを入力する。
「ちょっと聞いてるの!?ゲームしてないでこっち向きなさいよ!!」
「ふしゅー、無理、今大事なとこ」
「……ふっざけんな!!!」
そう、怒鳴ったかと思いきやパソコンの画面が一瞬で黒く染まった。
「あああああああああ!!!!何するのさ!!あとちょっとだったのにぃぃぃぃ!!」
「ゲームなんかどうでも良いから人の話を聞きなさいよ!!」
恨めしい気持ちで妹を睨むと抜いたコンセントを放り投げて蔑むような目で見つめてくる。
「ふしゅー……なにさ」
「あんたさ、今何歳?」
「ふしゅー、25だけど?」
「25にもなって部屋に引きこもって一日中お菓子やファーストフードばっか食べて喰っちゃ寝してぶくぶく太って、何その体。着れるサイズの服が無くてタオルケット羽織るだけとか意味わかんないんだけど。
太り過ぎてどこが尻かもわからない上にベッドの上が脂肪だらけで脂肪の海になってるじゃない、女として恥ずかしくないの?」
「ふしゅー、別に」
「あんたと同い年でも世の中には立派に働いている人が大勢いるのよ?あんたも母さんに迷惑ばっかかけてないで少しは痩せるなりして自力で行動できる様にして親孝行しようとか思わないわけ?」
「ふしゅー、別に」
「……太り過ぎて寝返りがうてない上にベッドから動けなくなって良い歳こいてオムツ生活とか人として恥ずかしくないの!?ありえないでしょ!?」
「ふしゅー、なっちゃったもんはしょうがないよね」
「っ~~~~~~本っ当に!信じらんない!!あんた臭いのよ!!部屋も汚いしゴミ屋敷だし体も髪も顔も脂ぎってて気持ち悪いし暑苦しいしなんか汁出てるし臭いし気持ち悪いし、本っ当にお金使うだけでクソも役に立たないんだからさっさと死んでよ!この、豚が!!」
言うだけ言って満足したのか足音も荒く妹は部屋を出て行った。
依然、パソコンのコンセントは抜かれたまま。
妹のせいで私の5時間の努力が全て水の泡だ。
それもこれも線を抜いたら落ちる古いデスクパソコンだから引き起こされた悲劇。
これを機に線を抜いてもゲームができる最新型のノートパソコンにして貰おうと心に決める。
「ふしゅー、抜いたんならさして行って欲しいなぁ」
母を呼んでさして貰おうかと思ったがさっきあれこれ言われてからすぐ呼んだらまた妹が五月蠅そうだしなぁ。
幸い、コードはベッドのすぐそばの届きそうな距離の所にある。
拾えたら自分の後ろにあるコンセント位にはさせるだろう。
そう判断してベッドから床に落ちているコードへと手を伸ばしたが、腹がつっかえてほとんど屈めなかった。
それどころか脂肪で肺が圧迫されて呼吸困難に陥りかける。
慌てて上半身を起こし、咳きこんでゼイゼイと深呼吸を繰り返す。
今度は深く息を吸ってから呼吸を止めて床へと手を伸ばしてみた。
結果は対して変わらなかった。
ふと、枕元に常備している孫の手の存在を思い出して取り出してみる。
それを手にして腕を伸ばすとなんとか引っ掛けて拾う事ができた。
この一連の行動で大量の汗と動悸、息切れ、眩暈がし始めている。
落ち着いてからベッドの脇にあるコンセントへとコードを刺そうとしたが、またもやここでも自分の脂肪が邪魔で手が届かなかった。
届かないと言うより体を後ろへ捻る事すらできなかった。
届かない手、繋がらないコード、写らないパソコン、なんだか悲しくなってきた。
軽く落ち込んでいるとふと、自分の脂肪の上に体を横向きに乗せてみればいけるんじゃないのかと思いついた。
よいしょっと両手で何とか脂肪を移動させてベッドの縁まで近づく。
この時点で既に体の下に敷いてある吸着マットはグジュグジュだしタオルケットは絞れば水が出そうなほど汗だらけになってしまっている。
だが、一時間かけてベッドの中央から縁まで移動することができた。
これだけ時間をかけたのだから何としてもこの手でコンセントに刺したい。
リモコンを操作してベッドを倒し、自分の下と背後に脂肪を置いて体を固定する
体の上に乗っている脂肪が割と重いがこれ位ならなんとか我慢できそうだ。
よしっと意気込んで、せいやっとコンセントへと手を伸ばす。
後少し……もうちょっと……と、どけ…………よっしゃあぁぁぁぁ!!!
必死で手を伸ばした結果なんとか刺すことができ、言いようのない達成感を感じる。
さて、ゲームの続きでもするかと体勢を戻そうとしたその時、自分の上に乗っていた脂肪が体の上から零れた。
あ、と思うと同時に自分の上に乗っていた脂肪が重力の法則にしたがって次々にベッドの縁から零れていき、その重みでバランスを崩した私は、ベッドから落ちた。
俯せになった体に容赦なく襲い掛かる脂肪の塊。
自分の体重により肺が圧迫され、呼吸ができなくなる。
何とか動こうとするが推定400キロオーバーの己の体重に打ち勝つことができず、もがく事すら満足にできない。
落ちた音で母がやってくるまで堪え切れれば助かるかもしれないと思ったが酸素不足で段々意識が遠のいていく。
あ、これはアカンわ。
あぁ、せめてハードディスクの中身を消去したい……。
最後に心残りが浮かんだがどうすることもできず、そのまま意識を失った。
富田冬子享年25歳、死因は自身の体重の圧迫による窒息死だった。
肥満の方に偏見とかはないです。
これはあくまでもフィクションです。
あ、デブの苦しみはこんなんじゃねえと思われた方は気軽にご意見下さい。




