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終結



イルミネーションスポットは大量のカップル達で溢れかえっていた。それもその筈、なんといっても今日はクリスマスだ。

ふわりふわりと静かに雪が舞い落ちるなか、キラキラと光り輝くツリーの下に一際目立つカップルの姿があった。まだ学生だろうか、男女共に麗しい容貌をしており、周りのカップル達の中でも見蕩れる者も多いようだ。

少年は少女の頬に片手をそえ、真剣な面持ちで言葉を紡ぐ。



「俺は財閥の跡取りだ。きっと将来、お前を困難に巻き込む事もあるかもしれない。」



彼女は目を潤ませ頬を真っ赤に染めて、それでも1ミリも彼から目を逸らさず無言で続きを待っている。



「それでも俺はお前が好きだ。お前以外の女など考えられない」


「梓。俺の恋人として、俺の隣に居てくれるか。お前は俺が必ず守るから」


「…はい!わた、しも先輩が、好きです…!大好きです…!貴方の隣にずっと、ずっと居た…!」



懸命な愛の言葉が言い切られる前に耐え切れなかったのか、彼は衝動に従って身体を引き寄せそのまま唇を重ねた。慌てたようにわたわたと手を所在なさげにさ迷わせていた彼女も、静かに彼の背に手を回した。

クリスマスに相応しい美男美女のカップルを群衆達は笑顔で祝福していた。








群衆の隙間から見えるカップルの姿を、イルミネーションの光も届かない細い路地から双眼鏡で確認しそっと息を吐いた。姿勢を変えた拍子に座り込んでいたダンボール箱の山がミシリと嫌な音を立てたが、気にせず懐から煙草を取り出し火を点ける。


此処に至るまでに会長の婚約者を引っ張り出してみたり、デートスポットを誘導してみたり、スタンガン無双してみたり、色々あったがそれも今日で終わりだ。

感慨深いものでもあるかな、と思ったのだがそうでもなかった。特にこれといって思う事もない。

ああでも、彼は今頃また泣いているんだろうか。不器用でピュアな副会長は。可哀想にな。フォローする気は欠片もないけど。




ああそうそう、あくまでこれは余談だが。梓についている魅了は一時的なものではなく死ぬまでついて回る状態異常である。私が去ったところで元に戻る事はないので、恋が実ったからといってその恋がすぐに冷めたりはしない。もちろんそれは全員に共通する事だ。

今後どれだけの人間に彼女が惚れられ、どれだけの修羅場が起き、最終的にどうなるかまではこちらの契約内容には含まれない。安心安全のおままごとは終わったか?よろしい、今度はヘルモードのお時間だぜ!という事である。

なんにせよ、どんな経緯を送ろうとも死後悪魔に食われる末路はもう二度と変わらない。悪魔の手下をやらされている私とどちらが不幸か考えようかと思ったが、心が折れそうなので途中で止めた。






深く息を吸い込み、煙を吐き出す。重たい煙草でも吸った気があまりしないのがこの身体の難点だ。そろそろ去るかとダンボール箱から飛び降りようとした瞬間グラリと意識がぶれた。





あ、やば、これ、頭から落ち――――――









落下しようとする女の身体を難なく受け止めたのは、先程まで影も形も存在しなかった青年だ。冬真っ只中の12月にコートも羽織らず、日本の路地裏にまるでそぐわない英国紳士のような姿で平然としている。白髪の男は折れそうな位細い腕で軽々と女を抱き上げ、路地の暗闇に姿を消そうと歩みを進めようとする。

その姿が暗闇に溶けて見えなくなる寸前に男は一度だけ振り返って、カップルで賑わう広場を眩しそうに見つめてクスリと笑うとそのまま闇に消えていった。

二人が去ったそこにはもう火の消えた吸いかけの短い煙草しか落ちておらず、静かにその上に雪がしんしんと降り積もっていた。



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