舞台裏の回想
本日2話分更新しましたので、まだご覧になってない方は前話からご覧いただくようお願いします。
今回のお話、お食事中の方はご注意ください。
「そういやマスターって、人間を生まれ変わらせたりは出来んの?」
「ん?」
次の仕事のためにチクチクとメイド服を手縫いしている悪魔に問いを投げる。今回のヒロインの肉体も必要な小道具も指パッチンで一瞬だった癖に、なんでこういう所に手間をかけたがるのか。
「それはもちろん。愛しのキティのお洋服が既製品だなんてとんでもないからね!僕がひと針ひと針愛を込めて縫わなきゃ!」
「よーし。次の仕事は全裸で行く」
「世界観台無しだね!」
「ツッコミどころはそこでいいのか?あと最初の質問の答えは?」
「ん?生まれ変わりについてかい?」
「そうそう」
ソファーに並んで座りながら、テンポよく会話を交わす。悪魔の視線は手元に。私の視線は皿に乗ったシュークリームに。シュークリームの上からたっぷりと蜂蜜をたらし、さあ食べようと私がシュークリームを手に持ったタイミングで悪魔が口を開く。
「たとえば、そのシュークリーム」
「うん」
あ、嫌な予感しかしない。
「その中に黒光りする元気なゴk「それ以上いけない」が入っていたとするよ?」
すぐさま手に持っていたシュークリームを悪魔の顔に投げつける。べしゃりと顔面がクリームまみれになったが、悪魔は気にせず裁縫の手を止める様子もない。ちなみに当然の事だが、シュークリームの中から黒い悪魔は出てこなかった。
というか、どうしてピンポイントで食欲をマイナスに振り切らせる呪文をわざわざ唱えるのか。死人に食欲なんてないけれど、気分的にはもちろん最悪だ。
「僕がそれをシュークリーム工場の工場長に渡して、他のシュークリームと一緒に混ぜてね☆って言ったらどうなると思う?」
「私が工場長なら殺すと思う」
「工場長過激派だね!まあ、普通断られるよねえ?」
「だろうね」
「だけど、工場に入る鍵も制服も持っていて、作業内容やそこにいるスタッフも把握している状態で、スタッフに成りすまして1個だけすり替えるのなら?」
「あー…」
「カンタンでしょ?」
「いやまあ、実際のところカンタンなのかはさておき。工場長に頼むよりはな」
「そうそう!工場長ってばおカタいんだもの!!」
「アンタは工場長の何を知っている」
わかったような。わからないような。
悪魔の息がかかった魂を生み出すことを神様はお許しにならないとか、そんな事なんだろうか。なぜシュークリームに例えたのか。私への嫌がらせ以外の何ものでもない気がする。
薄皮を破って黒い悪魔が飛び出し、工場内を汚染し尽くしたとしても、知ったことではない。だけどまあ、なんともゾッとする話だこと。
つまり今の話を要約すると。
「つまりマスター。ぶっちゃけ難しくて、人を生まれ変わらせたりは出来ないのね?」
「出来ないなんて言ってないさ!」
「出来るとも言ってないよな?」
「…」
「…」
にっこり。
笑顔で見つめ合ってると悪魔がふいに指を鳴らす。
その瞬間、皿に山盛り乗ったままの残りのシュークリームから、形容しがたい『カサカサ音』が聞こえだした。
「な!ば!何してくれてんだマスター!!!百回死ね!!!」
「キティが僕の事虐めるから悪いんだよ!!」
「子供か!!ちょ、まっ、ぎゃああああっ!!!」




