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失態(前編)







ゾンビを倒すにはどのような方法が有効か?

ここでいうゾンビは人外らしく強力なパワーをもち、また尋常ではないレベルのタフさをもつ化物だ。


ゾンビハンターではないので最適な方法かはわからないが、もし私なら遠隔的に攻撃するかひとまず動きを止めてから倒すだろう。

なにせいくら強靭な肉体があろうと自ダメージ無視のパワーがあろうと、反撃できなければ意味がない。

であれば届かない位置に自分が居るのはなかなか有効な手立てじゃなかろうか。

まあ対ゾンビに限った話ではないが、遠隔攻撃を持たないノーマルなゾンビならダメージを与えてる内に倒せるだろう。




「…ああ、つーことは意外と頭いいんだなお前ら」


「なに言ってんのアンタ?頭おかしいんじゃない?」




まさに今の状況がピッタリだ。まさか出会い頭に組み敷かれ床に這いつくばる羽目になるとは。

基本的に先制攻撃は常にこちらがとり、間髪入れずに交渉(物理)を行ってきた身の上として当たり前のようにやり返されるのはいささか恥ずかしいものがある。私にしろ一般的な学生にしろ隣人が前触れなく襲いかかってくると思える程、この学園は世紀末していない。はずだ。前提から崩されそうだが。



使われていない空き教室には私を入れて6人。男子と女子が半々、うち男子生徒1人は私を上から押さえ付けている。

女子生徒がピーチクパーチク喚いているが、現状の確認が最優先だ。









にしても、なんだ、たったの6人か。

うん、普通にいけるな。









ボキッ









「………は?」




驚愕も無理はない。不必要に驚かせた事を深く詫びたいぐらいだ。想定していない事態に遭遇すると殆どの人間は思考を停止させる。申し訳なく思いながらも力が抜けた隙に両手の拘束を解く。どうにか身体の上のデカブツをよけると、左手の指を正常な方向に折り直した。問題なく動きそうでなにより。


行ったのは、なんのことはない、ただ単純に前触れなく自分の左手の親指以外の指を逆方向に骨ごと折っただけだ。

たまたま手首から上が自由で床に面していたので、ボキッと。

携帯を逆パカするとこんな気分になるんだろうか。携帯がもったいないので試す気は更々ないが。




「は…え、いや、お前何してんの!?頭おかしいだろ!!!」


「それはさっき聞いたよ」




ジリジリと後ずさるかわい子ちゃん達にニッコリ微笑みかけると、手っ取り早く一番近い位置に居た先程の男子生徒に改造スタンガンをプレゼントする。借りは返す主義だ、今日から。




「動くな」




たった今1人の人間を気絶させた凶器を見せびらかし、視線と言葉で逃げる足を縫いつける。




「ふざけ…ぐえっ!!」




反撃に転じようとこちらに襲いかかる馬鹿も居るが、言葉を言い切る間もなくみぞおちに拳を叩き込む。衝撃に耐え切れなかったのか胃の内容物を吐き出されたのでその頭ごと蹴りとばした。首の骨を折った感触はしなかったので恐らく生きているだろう。

休む間も与えず一番入口に近い男子生徒を気絶させ、続けて震えている残りの女子生徒を気絶させる。改造スタンガンちゃんの無双である。


一応ここで念の為ではあるが、此処は乙女ゲーム世界であって、決して格闘ゲームではないことを記しておこう。近頃の乙女ゲームは交渉(物理)がものをいうのだ…本当ですよ?嘘じゃないですよ?


後腐れないよう全員下半身丸出し&M字開脚状態を写メり、蹴り飛ばして起した後にそのまま写メを見せしっかり言い含める。暴力、ダメ、絶対。オッケー?オッケーオッケー。聞き分けの良い子もお姉さん大好き。美少女の次くらいに。







適当にその場を去ろうとドアを開けると、まあなんという事でしょう。

扉を開けるとそこには、麗しの副会長様がいらっしゃいました。マジかよ。



3秒位無言で見つめ合い、お互いに気まずい時間を過ごす。何処から見られていたかによっては、念願の対生徒会メンバーへの交渉(物理)も辞さない覚悟だ、が…右手には携帯。相手は隙だらけ。ふと悪戯を思いついてしまったのでそのまま実行に移す。




「…っ!?」




胸倉を引っ掴んで無理矢理唇を重ねた。

パシャリとその場面を右手の携帯で自撮りすると、抵抗する手に逆らわずにそのまま身体を離した。




「この写真を梓に見られたくなきゃ、今のは黙っとけよ」


「………」


「返事は?」


「………」




いや、おい。いくらなんでも歴戦練磨の副会長様がキス如きで動揺しすぎだろ…!?は!?な、なんで泣き出す…!?




「………っ」


「え、いや、はい?先輩?え、ちょ、なんでそんなボロボロ泣いてんすか」


「………の、に」


「は?すいませんよく聞こえなかったんですが―――」


「…はじ、めて…だった、のに」







空耳を拾ったようだ。いや、頼む、そうであってくれ。

どんなに願っても目の前でボロボロ涙を零す副会長様の姿は変わらない。どうしよう久しぶりに死にたい。



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