悪魔の日記
『キティの観察日記』
『×月×日
お仕置きをしてから随分経ったけどキティがピクリとも動かない。
あまりに暇なのでキティの観察日記を始めることにした。
色々悪戯してみたけど全く反応しないので、つまらない事この上ない。
やっぱりキティは動いてた方が面白い。』
『△月■日
キティは今日も動かない。
ま、そもそも時間の概念が存在しないこの空間では一秒も一年も大差ないんだけど。
…あれ、もしかしてキティ、もう壊れちゃったのかな?
ギリギリ大丈夫なラインだったはずなんだけど、読み間違えたかなあ。
壊れたなら食べちゃっても良いんだけど、もう少し様子を見てみよう。』
『@月!日
キティは今日も動かない。
髪の毛を色々弄った後に写真を撮った。
キティの意識が覚醒したら見せてあげよう。
』
『?月*日
キティは今日も動かない。
つまらない。』
『☆月◎日
キティは今日も動かない。
つまらない。』
『♂月♀日
キティは今日も動かない。
つまらない。』
『@月#日
キティは今日も動かない。
つまらない。』
『○月%日
キティは今日も動かない。
つまらない。』
…同様の文面がしばらく続いた。
『※月#日
暇潰しにキティを丸洗いしてたらキティの指先が微かに動いた。
とっても嬉しくなったので今日はお祝いに特大ケーキを用意してみた。
まだ咀嚼は難しいようで、口に含ませても自分から飲み込もうとしない。
食べなくても問題はないけど、せっかくのお祝いの印なので無理矢理飲み込ませる事にした。
口から零れたクリームを丁寧に拭って綺麗にして上げて、僕はようやく満足した。
久しぶりの楽しい一日だった。』
『◇月■日
キティの意識が戻った。
と言っても芋虫のように身体をもぞもぞ動かすようになっただけで、完全に覚醒したとは言い難い。
真っ当な自意識なんてないはずなのに、僕が触れると身体を震わすのが可愛い。
これだけ恐怖が刻み込まれていれば二度目のお仕置きは必要ないだろう。』
『×月■日
キティの眼に意思の光が現れ始めた。
まだ声は出ない。身体の自由も効かない。
意識がはっきりしだしたおかげで、僕への拒絶反応は強くなる一方だ。
触れるだけで吐いたり、気を失ったりする。可愛い。
やっぱり動くキティの方が可愛いらしい。』
『#月※日
近付くと逃げようとする素振りを見せるが、身体が動かずプルプルと這い蹲って震えるキティ。可愛い。
あえて足音を立てながらゆっくりと近付くと、触れる距離まで辿り着く頃にはキティはとっくに意識が飛んでいた。
流石に怯えさせるのも飽きて来たし、強制的に慣れてもらおうかなあ。』
『▲月◎日
やった。ようやくキティも僕に慣れてきたようだ。
嘔吐や失神は殆ど起こらないようになってきた。
四六時中抱き上げて離さずに愛でていた成果が現れ、僕も大満足だ。
震えはまだ止まらないし声も出ないけど、この調子ならその内元通りになるだろう。』
『+月×日
キティが自分で歩けるようになった。
這って進んでた頃からすると驚異的な成長だ。
まだ足が震えているので思わず膝カックンを仕掛けると、キティは顔面から転んだ。可愛い。
起き上がらず視線だけを此方に向けて、無言で睨みつける顔もとっても可愛い。』
『□月○日
キティの声が少しずつ出るようになってきた。
まだ掠れてるけど、久しぶりのキティの声だ。可愛い。
舌っ足らずに「ますたあ」って呼ぶのがたまらない。
抱き上げようとしたら、無言で鳩尾に拳を食らった。
痛くはなかったけど精一杯の反抗が可愛らしすぎて、うっかり無理矢理抱き締めてしまった。
キティは可哀想なくらい固まって震えていたのには気付いてたけど、勿論離しはしなかった』
『÷月■日
キティは殆ど元通りに回復した。
僕のおかげだね!って胸を張ったら、もの言いたげな眼差しを向けられた。
誰のせいだよ、という意味を感じた気もするけど、僕にはちっとも何の事かわからない。』
『■月△日
キティが仕事に行きたいと言い出した。
単純に少しでも僕から逃げたいだけかもしれない。
キティが何処に居ようと僕はそこまで辿り着けるし、何処に居たって逃げられやしないのに。
ああ、キティってば、本当に愚かで脆弱で可哀想なくらい可愛くて面白い玩具だなあ。
別段僕は僕を裏切る事さえしなければ、何したって怒りはしないのにね。
そろそろキティも元気になったし、日記も飽きたから止めることにしよう。』
…日記はそこで途切れている。




