はじめまして
手段は多ければ多い程いい。
あらゆる状況を想定しながら動いておくと、大分その後の展開が楽になるのだ。布石は早めに打っておくに越した事はない。
まあ、凡人たる私の思考回路レベルじゃ大した事は出来ないんだが。単純にカッコつけてみたかっただけである。
「転校生の案内、ですか?」
「すまんな唐沢。お前も忙しいだろうに」
「お気遣いなく。面倒ごとは常磐に全部任せてますから」
「嘘つけ。下手すると会長よりもお前の方がよっぽど多く働いているだろ」
「まさか」
笑顔で軽く受け流すと担任の大竹先生は胡散臭そうな視線を此方に向けてきた。サボっていて不審がられるならまだしも、真面目に働いていてこの視線は酷くないか。胡散臭いのは否定しないけど。
「とりあえず校門まで迎えに行って、職員室まで案内すればいいですか?」
「ああ。忙しいなか申し訳ないが宜しく頼む」
「はい。…ところでその転校生は何時頃にいらっしゃるんです?」
「もう来てるはずだ」
「はい?」
机に置かれた時計を確認すると、なるほど。やや早いが案内時間を含めると、確かにそろそろ着いていておかしくない時間だ。うんうん、だが許さん。
「先に言って下さい。もしくは今すぐ死んで下さい。」
「すまんすまん」
「はあ…失礼します」
もう既に待たせてるであろう転校生を一刻も早く迎えに行かなければならない。足早に職員室から出るとそのまま真っ直ぐ校門まで向かう。途中廊下で書記の佐々木とすれ違ったので、必要な用件を済ませるついでに常磐会長への伝言も頼んでおいた。今朝はもう生徒会室に寄れそうもない。
無駄に広い校舎を抜けると校門まではあと僅かだ。自然溢れる風景の中で気持ちもなんだか浮き足立ってる気がする。
閉ざされた校門まで辿り着くと、門の向こう側に佇む少女と向かい合った。写真通りの綺麗な子、というのが第一印象だ。やっぱり直接顔を見たところで全く記憶には引っ掛からないけど。目が合った彼女が何かしらの言葉を発する前に笑顔で黙らせ、サボり癖の酷い守衛を叩き起してさっさと門を開けさせる。
ガラガラと擦れるような音を立てながら校門が開いた。もう私と彼女の間を隔てるものはない。
「えーと、相原さん?でいいのかな」
「あ、はい」
「迎えに来るのが遅くなってごめんなさい」
「いえ…」
上手に視線をずらされたものの、彼女の声からは微かに苛立ちが滲みでていた。誠に申し訳ないと思う。待ちぼうけにさせるつもりはなかったんだよ、うちの担任以外は。
「はじめまして、副会長の唐沢です。君と同じクラスだよ、宜しくね」
「はじめまして、相原です。宜しくお願いします」
握手を交わした手の冷たさに少し驚かせたようだった。




