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休日そのさん






便宜上は『鳥籠』と呼んでいるが、中に入っているのはいつも私一人だけだ。

日本人女性の中で平均的な身長の私が寝転がって、ちょうどいい位の直径の鳥籠だ。大体どの位のサイズかは想像出来るだろう。

遥か高みにある止まり木のような代物が妙に物悲しい。あの位置では私の身長だとぶら下がる事も出来やしない。




「お待たせしましたあー!悪魔の、ドキドキ☆クッキングー!!」


「チェンジで」




オチが読めるボケはやめよう。心が痛くなるから。




「ええー!キティってばノリわっるーい!!」


「アンタは頭が悪そうだな」


「いえーす!うぃーきゃーんっ!」


「日本語で頼む」


「はい。私達は可能です」


「訳した!?」


「つまりキティも馬鹿仲間☆」


「会話全く成り立ってないけども!だが馬鹿か否かに関しては否定出来る要素ゼロだわ畜生!」





コイツのノリに付き合ってる時点で答えなんぞ丸分かりである。ちなみにこれは完全に余談だが、毎度毎度マスターのテンションに合わせてボケたり突っ込んだりしている今も、私の表情筋はお休みを頂いております。つまりオール無表情。いや、まあ、表情作れなくもないんだけど。ないはずのエネルギー使う気もするし地球に優しくしていく方針で。あいむエコゾンビ、いえーい。




「ほら、地味に酸素も消費してないし」


「いきなり話が飛びすぎてサッパリだよキティ!」


「トイレも行かないし」


「キティってば存在がアイドルすぎてマジヤバだね!ゲロカワだね!」


「グロカワの間違いじゃなかろーか」




具体的に言うと死んでるあたり。

いそいそとテーブルに調理器具や材料らしきものを並べていた悪魔は、作り始めるまでもなく気が失せたのかもうそちらには視線すら向けていない。悪魔は何事もなかったかのようにつらーっと定位置たる椅子に座ると、組んだ足を勢い良くテーブルに投げ出した。その勢いでいくつか床にボウルが転がる。




「…はあ」



ギイィッと軋むような音を立てながら鳥籠の扉を開けるとそのまま身体を落下させた。着地の姿勢を繕うのもめんどくさい。肩から床に落ち、弾みで首もグキリと音を立てたが、起き上がって適当に首の位置を戻した。脇に転がっていたボウルもついでに拾う。




「キティ?どうしたのー?」


「たまには愛しのマスターに手料理でも、と」


「き、きてぃ…!!!!」




キラキラと目を輝かせて頬を紅潮させている悪魔にニッコリと笑いかける。笑顔を保ったまま作業を行うも手元は殆ど見ていない。味なんぞ知ったことか。テーブルの上が私が気にならない程度に片付けばオールオッケーである。わかりやすく説明すると、ドリンクバーに行くと中学生とかがやりそうなアレですアレ。




「えーと、キティ?」


「ん?」


「ナニコレ?」


「愛の手料理?」




材料に特殊な物が使われていたのか、全部混ぜきった後にボウルに残ったのはスライム状の蠢くナニカだった。蛍光ピンクに深緑を混ぜてところどころにオレンジ色をトッピングしたナニカだ。

…いや、待て。スライム状かと思ったらコイツ昆虫の足みたいなの生えてきた。あ。自分で起き上が………うわあ。




「ッキティー!!!コレ取ってえ!!!」


「ごめん。私ムカデっぽいのあんまり得意じゃないんだ」


「コレ見ながら平気で欠伸してるんだから余裕でしょ!?」


「無理ダワー」




色彩だけでも気色悪いのにムカデみたいな大量の足を生やしたナニカは、床を滑るように移動すると悪魔にベッタリと張り付いた。硬化したのは足だけのようで剥がそうと藻掻く悪魔の手にべちゃりとナニカの一部が引っ付き、そこからまた分裂して増殖しようとしているようだ。うん。これなんてモンスター?


標的にされるのは勘弁願いたいので、避難場所はないかと近くにあった壁をベチベチと叩くといつもの扉が現れた。これ幸いとドアノブに手をかけ悪魔に軽く手を振る。




「んじゃ、お仕事行ってくるわ」


「ちょっ!もが、ぐっ…待っ、て!うぇっ!」




待つ馬鹿は居ない。さらばマスター。安らかに眠れ。




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