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序盤の根回し






恋敵かと思いきやラスボスでした。

どうしてそうなった。











正直なところ、ただの死人に大した力などないのだ。

もちろん普通の人間から見れば脅威を感じる化け物だろうが、火を吹いたり鎌鼬を起こしたりが当然の妖怪共にたかだか耐久力全振り程度がどう立ち向かえというのか。今回も初っ端からの詰みである。…たがしかし、それを乗り越えてこそのゾンビだろう。座右の銘はねばーぎぶあっぷ。




さて、冒頭から御説明したとおり今回の役割はラスボスである。前回が親友ポジションだったのを考えると極端から極端にも程があると思うがひとまず置いておこう。


実際に交渉(物理)を使用してラスボスを目指すには些かどころではなく、レベルが足りない。延々とレベル上げをするのも私は嫌いではないのだが、時間がかかりすぎるから端折りましょう。結論を言うと。

悪魔パワーで強い妖怪を片っ端から魅了しました。

逆ハーレム(見た目8割人外)の誕生である。







「ほう…なにやら面白い娘がおるようじゃの」


「…蓮華様が気になさるような存在ではございませぬ」






布団の上に肌着1枚で寝転がり、コロコロと笑いながら鏡の縁をなぞる。鏡には遥か遠くにいるヒロインが映し出されており、なんとも楽しそうな様相だ。淡い茶色の髪を靡かせながらイケメンを侍らせ、妖怪退治に赴く様をまさかラスボスに見物されてるとは思っていないだろう。


今回は妖怪vs巫女というわかりやすい構図だが、うっかり殺してしまわないよう、現代っ子にトラウマを植え付けないよう、気を使いつつボロボロにするのはなんともめんどくさい。最終的にこちらが負けても不自然のないよう鍛えなければならないし。妖怪達が暴走しないようキッチリ管理しなければ。






「そう言うでない。久方ぶりの暇潰しじゃ。わらわの手で大事に大事に愛でてやらねばならんの」


「………」





傍らに控えている朔夜はひどく不満そうだ。おそらく私の関心が他人にあるのが許し難いのだろう。悪魔の魅了も手加減をすればいいものを、思考回路をねじ曲げる程の強制力だ。全く融通のきかない状態になっている。





「太陽神に愛された巫女姫のう…簡単に殺すでないぞ朔夜。暫くこやつで遊んでやろう」


「仰せのままに」






どれだけ不満を内に溜めようとも朔夜は私の言葉には必ず従順に従う。従順すぎる部下が必ずしもプラスになる訳ではないが、今回のケースには最適だ。恐ろしい程に強く、冷酷で、目的の為ならば手段を選ばない大妖怪を無理矢理支配出来ている現状がなんとなく空恐ろしい。

ひとまず朔夜に伝えておけば弱い妖怪達にも指示が行き渡るだろう。この後他の上級妖怪にも二三言いくるめておけばなお確実か。




眺めているのにも飽きたので鏡の裏側のスイッチを切った。言い忘れていたが鏡はメイドイン悪魔製でスイッチの切替でヒロインをストーキング出来るようになっている。この世界観でデジタル通り越してファンタジーな代物を持ち込ませるあたり、アイツの性格は歪んでるなと思わなくもない。今更か。




思考している最中も無言で熱の篭った視線を向けられていたが問答無用で黙殺した。気づかない程鈍感ぶるつもりもないが、いくらイケメンだろうと魅了で夢中になられてもこちらは冷めるばかりである。元々燃え上がるものが私の中にあるのかすら定かじゃないというのに。



居心地が悪くなる一方なので適当に追い出した後布団の上でゴロンと仰向けになって小さく息を吐いた。

…改めて考えると私とヒロインのどちらにしても、魅了効果で操った男(?)達を戦わせて楽しむ立場なんだから皮肉なもんだ。化け物は本来こちらだけだろうに、向こうの頭も化け物みたいな所業をしているのである。巻き込まれる側にはたまったもんじゃないだろう。



まあ有象無象の苦悩なんていちいち飲み込んでいられない。私の仕事はただひとつ、ヒロインたる彼女の恋を成就させ、ハッピーエンドに導くだけだ。











…そういや一人称わらわにしちゃったんだけど、そろそろシラフでいるのがしんどくなってきた。

ラスボスらしいキャラ作りしようぜ!っていう悪魔の徹夜明けみたいなテンションに乗るんじゃなかったなあ。くそう。






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