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休日そのいち




この部屋の中では時間の感覚が酷く曖昧だ。

窓もなければ外に出るための扉もなく、インテリアの時計はいくつか置いてあるものの針は全て違う時間を指し示している。

重苦しい雰囲気を漂わせる内装についつい気が滅入って溜息を吐きたくなるが、結局煙草の煙を深く吸い込む事で自分を誤魔化した。変に異議申し立てをすればとんでもない内装に変えられるだろう。悪魔ならやる。絶対にやる。

煙草を口に咥えたまま高級感たっぷりの革のソファに寝転がりそのまま目を閉じようとしたが、耐え切れずに片手で軽く煙草を握り潰すと悪魔に声をかけた。




ピロローン ピロローン ピロローン ピロローン


「…で、なにしてんのマスター」


「んー?」


ピロローン ピロローン ピロローン ピロローン




椅子に体育座りをしている悪魔の手には、まるで似合わない携帯ゲーム機が存在感を醸し出している。さっきから耳障りな効果音が鳴り響いているが一体なんのゲームをしているのやら。



「この音が気になるかい?」


「オブラート無しで返答すると『うるさい、しね』かな」


「この音主人公が死んじゃうと鳴るんだけど、音量0にしてもこれだけオフに出来ないんだよねえ」


「それ完全に呪いのゲームじゃん」



自称ゲーマーの悪魔はなにかとこの部屋にゲームを持ち込みたがるが、そのジャンルはバラバラだ。なかには今回のようによくわからないクソゲーも混じっている事も多い。



「何が楽しいのそれ」


「まるで楽しくないのが楽しいよ!」



なるほど、つまらなすぎて笑えるレベルまで到達したのか。しかし流石に飽きたのかゲーム機を床に放り投げると、ニヤニヤしながらこちらにやってくる。しまった、寝転がっていたせいでうっかり逃げ遅れてしまった。



「キーティ、あそんで?」


「だが断る」


「えー、つれないよキティ!僕はこんなにも君に夢中なのに!」



人の腹の上に頭を預けたまま悲しそうに目を伏せる悪魔であった。その左手が人の太腿の内側を撫で回していなかったら格好がついたんだが。

でもまあ確かに、小さい子が蟻の巣に水を注ぎ込むような形での愛なら常々感じている。コイツとはどれだけ会話を交わし冗談を交わしても、絶対的にわかりあえない生き物だと知っていた。お気に入りのペット…いや、ちょっと面白い動きをする虫けらを見る目をいつもしている。それに傷つく程の繊細さは3時間前くらいに本棚の裏に落としてきた。



「っておい。マスター。勝手に人の身体分解すんなってこの前言ったろーが」


「キティってばあんよも可愛いね!」


「足単体で愛でられても反応に困る」



油断していたところで左足を付け根から持っていかれた。痛みがないのはいつもの事だけど、今更なんだが人体ってそんな簡単に切断出来たっけ?疑問が浮かんだので率直に尋ねてみた。



「え?だって僕だし」


「…え、ああ、うん。はい。ソウデスネ」


「そんなに冷たい目をされたら僕、興奮しちゃうよ!」


「誠に申し訳ありませんでした」



わざとらしく頬を染められたが、あまりにも気持ち悪すぎてマッハで謝罪した。演技だとわかっていても耐えられない気持ち悪さだった。



「まあ、ぶっちゃけ物理的にちぎってる訳じゃなくて概念的に取り外してるだけだからねえ」



詳しい理論も説明されたのだが、ところどころ人間の耳に聞き取れない単語も混じる程度には専門的な話だったので、正直殆ど意味がわからなかった。わかった事といえばこの肉体は悪魔が自由自在に修正が可能という事くらいだ。



「ロケットパンチ出したりとか…?」


「もちろん出来るよ!」



なん…だと…

ロマン溢れる話題に釣られてしまうのが私の悪い癖だ。



「ただまあキティ自身がロケットパンチの出し方を知らないから、適当なところ押したら自動で発射されるよう改造しないとだけどね!」


「え、そういうもんなの?」


「脳も心臓も停止している死体を動かしてるのは僕の魔力と君の魂だからねえ。残念ながら君がやった事のない動きは出来ないよ?」



となると下手すると間違ってスイッチを押して、飛び出た拳がうっかり誰かの顔面に衝突したりもありうる訳だ。

………。




「…考えさせて」


「そこで諦めないのが全くもって君らしいよ可愛いキティ!」




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