初仕事終了
「お疲れ様でしたー!」
ぱんぱかぱーんと気が抜けるSEと共にパチパチと拍手をされた。意識が戻った瞬間の出来事がこれである。まるで意味がわからない。
ドヤ顔をしている悪魔をスルーして状況の確認をする。どうやら自分のテリトリーである人間にはギリギリサイズの鳥籠の中に戻ってきたようだ。迎えに来てくれたのは助かったが、問答無用で意識を刈り取って拉致するあたりちょっとどうかと思う。
「え、キティ?キティちゃん?なんで僕にそんな冷たい目を向けるんだい?泣くよ!?泣いちゃうよ!?」
「泣けよ」
「ひぎい」
「鳴いた!?」
別に急に拉致された事自体はどうでもいい。主従関係にある以上悪魔の行動に逆らうつもりはない。不満があるとすれば一つだけだ。
「まだあとちょっと吸えたのに…!」
「そこなの!?ホントにブレないね君は!!」
ゲラゲラと笑いながら悪魔は何処からともなく煙草の箱を取り出し、そのまま私に投げ渡されるかと思いきや、コントロールを誤ったのか鳥籠の隙間を抜けられず煙草は跳ね返って床に落ちた。
…。
……。
………。
…え、何この間。すごく気まずい。
「…マスター」
「…何も言わないでキティ」
悪魔は哀愁漂う表情でノロノロと煙草を拾い直した。再度こちらに投げ渡された物を今度こそ綺麗に受け取ると無言で封を開け口に咥える。ライターも手元になかったので悪魔に目で催促すると指パッチンで火を点けてくれた。何処の大佐だお前。
深く吸い込むと味がするような気がする。気のせいかもしれないけど。気のせいだろうけど。
「で、お仕事完了でいいの?」
「もちろんさ可愛いキティ!君はやっぱり最高だ!」
先程の出来事はお互いに無かった事にして話を戻す。なるほど、慰労のつもりか前回見た時から部屋の内装がいくつか変化していた。例えるなら小学生のお誕生会みたいな感じに。
「祝われてんのか馬鹿にされてんのか」
「全身全霊で祝ってるよ☆」
「ありがとう。とりあえず死ねよ」
「死んでるのは君の方だよ!」
もはや定番の流れに毎度爆笑するあたり、悪魔の笑いのボーダーラインは最底辺なんだろう。箸が転がっても笑えるお年頃というやつだ。実際に何歳かなんて知らないが。
「次の仕事はどんなところがいい?ファンタジーとか行っちゃう?」
「え、すぐ出勤しなきゃな感じ?」
「まさか!せっかく愛しのキティが帰ってきたんだもの。暫く僕と一緒に居てもらうよ!」
あれだけそろそろ帰りたいなとか思ってたわりに、実際に仕事を終えて帰ってくると逃げだしたくなるのは何でだろう。
甘い言葉をかけられているはずなのに悪寒しかしない。
「まずはケーキでも食べようか!せっかく用意したんだから全部食べてねキティ!」
「ああ、うん。それはいいんだけど」
「ん?どうしたんだい?早くそこから出ておいでよ」
鳥籠の高さはそれなりにあるものの、登るならまだしも飛び降りるのは造作もない。扉を開けて落下すれば済む話だ。だが、
「先に両足返してくれないと動けないんだけど」
「あ」
意識のない間に勝手に身体の一部を持ってくのもちょっとどうかと思うよマスター。あと人の生足(単品)を撫で回しながらうっかり忘れてたって顔をするのもどうなんだ。天然か。




