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9話『危険なのは海じゃなくて〜前編〜』

 海は危険だと聞くが、危険なのは海ではなく人なのだ。

今年はクタビレ荘メンバー数名の都合が悪くて夏祭りに行けなかったため、日を改めて晶子ちゃんが企画した海水浴ツアーにて起こった悲劇をお知らせします。


《午前十時・クタビレ荘前》

ミーンミーンとセミが鳴くなか、晶子ちゃんの元気な声がセミの声をかき消した。

「ウチ車の免許取ってん♪」

満面の笑みの晶子ちゃん。

「俺達を殺す気ですか?」

「あははは♪ オモロイこと言うな完助君♪」

笑えないぞ晶子ちゃん。


「ちなみに皆さんは晶子ちゃんの車には乗りたくないと仰っております」


俺がそう言うと、晶子ちゃんは皆を睨み付けて言った。

「皆チャレンジ精神っちゅーのが無いんか! テト〇スで下ボタンを押しっぱなしみたいなチャレンジ精神が!」

1分もたないなソレ。


ではでは説明しましょう。

今回は二台の車を使って海へ行くことになり、人数を均等にわけるためにジャンケンで決めるという提案が出た。

問題は二台ともギュウギュウ詰めでも全員が乗れないと言うこと。


ドライバーは自称・伝説の走り屋の大坂晶子ちゃん。もう一人は一撃愛子さんだと言うこと。


晶子ちゃんが免許を取って二十四時間しか経っていないと言うこと。

な……笑えないだろ。

「にしても愛子さんが車の免許を持っていたとは」

「そうなのよ完助君、あまり乗らないんだけど一応ね♪」

あまり乗らないにしても愛子さんの運転の方がまだマシか。

「それでは場所もわかっていることだシ、アタイと阿呆豚はシェリカ・ティールのUFOで向かいますダヨ♪」

シェオルンと阿呆豚がUFOに乗り込む。

「ズルいぞ! 俺達も乗せろ!」

「悪いが定員オーバーだ。ケケケケ……」


バカデカイUFOに何で二人と一匹で定員オーバーなんだよティール君。


ピューン!


新キャラメンバー達を乗せたUFOは勢いよく飛んで行った。

チクショ〜逃げやがって〜。

「ほなジャンケンしてや〜♪」

男には勝たねばならない時がある……それが今だ!

全員で声を上げた。


「ジャ〜ンケ〜ン!」

「待て!」

「ん?」

シュバリエさんがジャンケンを止めた。

「私は自分のバイクで行かせてもらう」

くっ……ヘリの免許に続いてバイクの免許も持っていたのかこの人は。でも車の免許は持っていないらしいのが不思議だ。

「サイドカー付いてますけど?」

恵理華ちゃんが聞いた。

「も、もちろん……その」

少し頬を赤らめるシュバリエさん。

「終羽里殿を乗せるんじゃよなシュバリエ♪」

間様がニコッと笑って言った。

やっぱりか……このレズビアンめ。

「途中で絶対に捕まりますよ?」

「心配するな完助。ちゃんと裏道を通る」


そ〜いう問題じゃないでしょ〜が。

「行こう終羽里」

「……また後でね兄さん」


ブロロロ!


俺に向かって手を振る終羽里。

二人の子供が行ってしまった。

「絶対に捕まりますよね間様?」

「あの二人のことだ、まず捕まらんじゃろ。そんなことよりシュバリエは冗談が通じんからな」

「何の話です?」

「海に着く頃にはイケない関係になってるかもしれんの……あの二人」

リアルなこと言わないでくださいよ間様。

それを聞いて誰よりショックなのは拳使郎なのだから。

「……うっ……ヒック」

拳使郎マジで泣いてるし!


は、話は戻ってジャンケン開始。

これだけ少なくなればギュウギュウ詰めで何とか乗れるぞ。

「ジャンケン! ポン!」


【愛子車メンバー・愛子、友蔵、拳使郎、間、結衣、寿】

【晶子車メンバー・晶子、完助、ピョン太、麗華、恵理華、恥芽】


ドォォォン!


俺の中の何かが爆発とともに壊れた。

「腹をくくるしかないですわ完助」

慰めてもらってるところ悪いけど麗華ちゃん……顔引きつってますよ。

「それじゃ出発ね」

手を叩いてニコッ笑う愛子さん。

「ヒョーヒョヒョ♪ すまぬの完助君♪」


ムカつく笑顔ですこと……おのれ糞ジジィめ。

「間様は後ろの席中央にお座りください。乗り心地が悪ければ直ぐに仰ってくださいませ」

間様の車椅子をトランクにしまいながら結衣さんが言う。

「相変わらず結衣はお堅いの」

「ありがとうございます」

「褒めとらんぞ」


次々と愛子車に乗り込んでいくなか、拳使郎だけが呆然とした顔で俺の方を見てる。先ほどの間様の言葉が相当応えてるな。

いや〜俺のこと見られても行っちゃったしな終羽里のやつ。

「愛子さん! 私はドコに座ればいいですか!?」

「そ〜ね〜? 千鶴ちゃんは車の上かしらね? 特等席よ♪」

「特等席ですか? やったー♪」

ハシャギだす寿さん……気付け! 遠回しに邪魔だと言っているのだぞ!


「完助く〜ん。はよ乗りや〜」

運転席に座り、手招きする晶子ちゃん。まるで死神が手招きしているようだ。


行きますか……地獄へ。

俺は覚悟を決めて晶子車へ乗り込む。

俺は運転席後ろに座り、膝の上に恥芽を乗せる。五人乗りの車なので仕方ない。

その隣に麗華ちゃん、そして恵理華ちゃん。

助手席にピョン太が座った。

「安全運転で頼むピョン」

晶子ちゃんに語りかけるピョン太。だが……それは遅かった。


ブォォォン!

「ぎゃあああ!」

アクセス全快で走り出した晶子車。

先導するはずの愛子車をぶち抜き高速道路へ向かう。

「くっくっくっ♪ 人がゴミのようやで完助君♪」

このム〇カ……ハンドルを握ると性格が変わるタイプか!?


「止まってください! 恥芽君に悪影響ですよ!」

必死に晶子ちゃんを止めようする恵理華ちゃん。

しかし決して速度は落ちない。

「お兄ちゃん怖いよ!」

「心配するな恥芽! 俺が……」

「恵理華! やはり乗るべきではありませんでしたわ。扉を開けなさい! 恥芽を連れて脱出ですわ!」

「でも完助さんとピョン太さんは?」

「全力で見捨てますわ!」


ガチャ!

バサバサッ!


麗華ちゃんは俺から恥芽を奪い、恵理華ちゃんと供に翼を生やして空へと逃げた。

「おいてくな〜!」

泣き叫ぶ俺。

大人しいピョン太。

「ん?」

助手席を覗き込むとピョン太はすでに意識がなく、口から泡がでていた。


「晶子ちゃん! このままじゃピョン太が逝ってしまう!」

「安心し……そのまま安らかに逝かしたる!!」


アホかー!


鋭いドリフトと見事なドラテクで高速道路を攻める晶子ちゃん。


「おろせ〜!」


ズギャギャギャギャ!




やがて、暴走しながらもちゃんと目的地の海に辿り着いた晶子車。

「はぁ〜スッキリしたわ〜♪」

晶子ちゃんが助手席を見て言った。

「あれ? もしかして呼吸しとらん?」


生存者一名。

重症者一名。

死者一名?


続々と他のメンバーが集まるなか、俺はすでに疲れ果てている。

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