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5話『くだらない男に成敗を』

 いつものように大学へ行き、いつものようにボロアパートへ帰るためにバスに乗る。

授業は退屈だ、バイトが無いとさらに退屈だ。

この時間帯、バスの中は貸し切り状態のように空いている。


もうちょっとバイトの時間を増やそうかな? そーいえば花粉症が流行っていてクラスのヤツら少なかったな。

そんなことを考えながらバスを降りて我が家へ帰宅。

ガチャ。

「……お帰り兄さん」

「うぉ! た、ただいま終羽里。なんだよ、電気くらいつけろよな」

201号室の電気を消して、部屋の隅でココアを飲みながら座っている妹。服装は学校から帰ってきたままの制服姿。

一応この子も、中学生になりました。

ちなみに最近、ココアが妹のマイブームらしい。


……ん? 部屋の中で音楽が流れているぞ。


「何聴いてんだ?」


妹が音楽を聞いているのは珍しいことだ、俺はCDコンポから流れる曲に耳を傾けてみた。

『時間とともに〜壊れるメロディ〜♪』

バラードか?

『食べたくなる〜大トロ五十貫〜♪』

なんだコレは!

歌詞の意味が全然わからん!

「なんて曲なんだ終羽里?」

「……大トロサンバ」

サンバ!?

どこにサンバが含まれているんだ?


う〜む未知の曲だ。


《クタビレ荘庭……PM.18:30》


「なんだって?」

「だ〜か〜ら〜。花粉症を治す秘伝の薬品を持っていないか聞いてるアル」

夕飯を作っている最中に、シェオルンに呼ばれた理由がコレである。

花粉症で悩まされている人には悪いが、俺に花粉症なんて聞かれてもな……かかったことがないから正直困る。


「くしゅん! 見損なったアル完助、男の中の男と思っていたのに見込み違いだったヨ!」

クタビレ荘に来て数日たらずのヤツに言われたかないわい。


「もぅいいネ。いざとなったらアタイには後十三回の変身が残っているから大丈夫アル」


そう言って阿呆豚とともにクタビレ小屋へ入っていった。

フ〇ーザを軽く超える変身の数だが五回くらいで最早人間としての原形を留めていない気がする。


後ってことは最低でも一回は変身したことあるのかなアイツ?


「フッフッフッ、なるほど花粉症は使えるピョン」

出ました! クタビレ荘で俺と並ぶ不幸な男、飛美ピョン太!

「オイオイまた悪巧み……か?」

あれ? 小さくないかい?

明らかに小さいよな?


また変な薬でも飲んだんじゃないだろうな、もしくは新しい黒魔術か?


「なんで小学校低学年くらいまで縮んでんだよウサギ野郎?」

最近のマンガで十歳の女子高生とか、チビッコ先生とかが人気あるらしいが。お前のキャラでは無理だ。


「いや、女子高生とかにキャーキャー言われたくて『収縮魔術』を頑張ってみたピョン」


「じゃかましいわ! くだらないことを腕上げてんじゃねぇ〜よ!」

キャーキャー言われたいって……発想も古い。オヤジかテメェは。


「いや〜昨日ハ〇ーポッターとかいう小説を読んで改めて黒魔術の素晴らしさを感じたピョン」

コイツ……ブームの波に乗り遅れ過ぎてんな。


「では、さっそくだピョン」

ピョン太は黄色い粉の入った瓶を取り出した。

「なんだソレ? もしかして『世界中の人間を花粉症にする粉』とかだったりするのか? ははっ……まさかな」

「さすが完助君。よくわかったピョンね〜?」

いっぺん死んでこい! この山猿が! ウサギだけど山猿が!

そんなものを作って世界に蒔こうとしやがって……つーか『なるほど花粉症は使えるピョン』とか言ってたくせに、すでに用意できてるって意味わからんわ!

さすがコメディだなオイ。

「くっくっくっ、コレを使えば世界征服も夢ではないピョン。まず最初の犠牲者は此似手完助……キミだピョン!」

「待てコラァ! 作者はそんな壮大な話を望んじゃいねぇ〜ぞ!」

ウィルスとかなら映画になりそうな雰囲気だが、花粉症ってレベル低すぎるぞ。まるで深夜の低予算番組じゃねぇかよ。

「さぁ! 今この瓶にかけた封印を解放するピョン!」

するとピョン太は呪文を唱えだした。

「テクマクマヤコンテクマクマヤコン」


有名な魔女っ子アニメの呪文を棒読みで唱えるなんて恥を知れ恥を!

つい先ほど覚えましたって顔しやがって。


「もちろん世界のために阻止だ!」


俺は都合よく落ちていたバットを手に取り、ピョン太に向かって殴り付けた。

『注意……もちろん、そう都合よく落ちていないので探さないでください。あと人に向かって殴り付けるのも止めましょう。バットは飽くまでも野球をするための道具です、頑張ってね高校球児』


ガキィン!


鈍い音とともにバットが曲がった。

「フッフッフッ、鋼鉄化の魔法だピョン。そんな攻撃は僕には通用しないピョン」

チクショウ……こんなバカでも一応魔術師というワケか。

瓶のフタに手をかける魔術師ウサギ。

「やめろピョン太!」


ババッ!


俺の叫び声を合図に現れた二人と一匹。


「いいかげんにするのじゃ!」

エントリーナンバー1番『一撃友蔵』の必殺みぞおちパンチが炸裂。


ボフッ!

「がふっ!」


「心置きなく死んで下さい」

エントリーナンバー2番『一撃愛子』の必殺ハイキックが爆裂。


ベキッ!


殺しちゃダメですよ愛子さん。ってか首折れたんじゃねぇかピョン太のヤツ?

首があるか知らないけど……。

「グォォォ! フィニッシュ!」

エントリーナンバー3番『阿呆豚』の背骨折りが豪裂。


バキバキバキ!


「ぎゃああああ!」


豪快にウサギを抱きしめるパンダ。

パンダがクマみたいに吠えるなよな。


ポテッ。


ゴミのように地に倒れ、元の体の大きさに戻るピョン太。魔法の効力が切れたのか?

しかし、いくらなんでも‘殺りすぎ’でしょ……エグい。

ピョン太を直視できない。

「ふぅ〜。助かったぜジィさん」

「いやいや気にするな若者よ! がっはっはっはっ!」

愛子さんが頬に手をあてて言う。

「この瓶を空けたら犠牲者は最初に空けた本人であるってことに気付かなかったのかしらねぇ?」


言われてみればそうだ、世界征服とかいう問題じゃない。もともと花粉症で世界征服ってワケわからんし。


後ほど花粉症瓶は間様が回収。処分したらしい。


相変わらずのウサギに付き合いきれねぇぜ……まったく。

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