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フォンダンショコラ【月華】

月華編はとりあえず完結!こっからどこまでいけるか………。


 朝。昨日貰ったネックレスが太陽の光を浴びて輝く。今日はバレンタインデーだ。


 私はいつものように(を装いながら)学校へ向かった。


 学校についた途端、いつもとは違うその光景に、思わずビックリする。


 校門に集まっている人、人、人・・・しかも全員女子。近くに女子高があるせいだろうか。その女子高の生徒達が男子を待ちわびて校門付近を塞いでいるのである。


 私はその中を縫うように進んだ。


 クラスに入り、いつもと同じように席に座る。だが、一向に先生が来ない。


「今日は特別授業って事で、先生はお休みで~す!」


 事情を知っているのか、璢娘さんが嬉しそうに言った。所謂ぶりッ子ポーズできゅるん♪(謎)という感じである。


「あ、月華ちゃんおはようっ♪はいっ、友チョコよん♪」


 バレンタインデーの影響か、女子のテンションが高い。


「月華さん、はいっ」


「月華ちゃんこれあげるっ」


 次々とクラスメイトの女子が友チョコをくれた。私もそのお返しをするように友チョコを配っていく。


「きゃ~~~ッ!!!」


 急に外が騒がしくなったので、窓から校門の方を眺める。原因は一発で分かった。男子軍が登校してきたのである。


 既に私達女子は、友チョコを渡す事も考えいつもより早めに行動していた為、準備万端だ。


「本命、頑張って渡さないとだね!月華ちゃんっ!」


「うっ、うん。」


 皆に励まされ、緊張が少し和らぐ。彼が来たら、私は昨日作ったフォンダンショコラを―――。


だが。


 男子が一向にあがって来ない。クラスに一番のりしたのは、女子の間を逃げてきたらしい輝生さんだった。


「おはようございます。」


 一応、昨日の件もあったし挨拶してみる。


「・・・・。」


 一点を見つめたままで、返答は無かった。その一点は私がつけているネックレスのようだったので、私は一度微笑む。彼はふい、と横を向いてしまった。


「な~に黙ってるのよ。まさか緊張してるの?」


 机に座ったノエルさんが挑発するように問う。だが彼は反応を示さなかった。


「あ、図星かしら?珍しいわね、反発してこないなんて」


「今日は本調子じゃねーんだよ」


「ふぅ~ん。じゃあこれでも食べて元気になればいいんじゃない?私、友チョコしか作ってないからこれしかないけど。」


 ポイ、と投げたのは多分市販の小さなチョコレート。輝生さんはそれを片手でキャッチした。


「一応お礼は言っといてやるよ。有り難な」


「明日は雪が降るかしらね」


「そうだ。俺からもこれやるよ。丁度あげる奴居ないしな!」


 もしかして――!

 私の勘は的中した。彼が投げたのは、昨日私と買いに行ったあのネックレスだ。


「? 何よ、これ」


 小さな袋に入っているため、すぐには分からないのだろう。でも開けてすぐに気付いたようだ。


「!!」


 昨日眺めていたネックレスだと。


「ふ、ふん。あんたにしては上出来じゃない」


「そりゃどうも。じゃ、俺帰るわ」


 恥ずかしいのかすぐに帰ろうとする輝生さんをノエルさんが追いかけていった。

 案外似た者同士なのかも。


 二人が去ったのを見て、私は自分から彼の元へ向かうのを決めた。廊下を走り、一気に階段をかけ降りる。そして、彼がいるであろう、校門前へ。

 あれから20分は経ったというのに、人は留まることを知らない。女子高生はまだこの場でキャーキャーしていた。

 私はかき分け彼を探す。


「・・・あ」


 人の塊の奥から、聞き慣れた声。あの奥に彼がいる!私の直感がそれを告げた。


「緋威翔さんっ!」


 女子高生の奥に、彼のトレードマークが見えた。あの帽子だ。


「月華さん・・・!おはようございます」


 沢山いる女子を何とか整列させようとしている彼がいた。


「今日はバレンタインデーとはいえ凄い人ですね。僕はどうしていいのやら」


「ちょっと、来てください」


 こんな大勢の中じゃ、私の声なんてかき消されてしまう。それに、私は。


「ちょっと何よ!横入りしないでっ」


 女子高生の罵声が聞こえたが、私はそれを敢えて無視した。彼の服の裾を引っ張り、校内へ。流石に校内へは侵入出来ないだろう。学校の生徒ではないのだから。


「ふぅ、助かりました。有り難うございます」


「あのっ」


「どうしました?そんなに改まって。」


「話を、聞いてほしいんです」


 言わなきゃ、彼に。私の・・・気持ちを。その為にここまで来たんだから。


「話があったなら、もっと早く言ってくれたら良かったのに。すぐに駆けたでしょう、貴女の望みとあれば」


「・・・ッ!」


 彼の、甘い言葉。私に対して紡がれているのは嬉しい。けど。圧されている場合ではない。


「緋威翔さん」


 ドキドキという心音が相手に聞こえてしまいそうなくらい高まる。緊張で震えも止まらない。それに、想いも・・・。

どこから話していいのかが分からないし、どう言えば伝わるかも・・・。


 思えば、彼に言う言葉を何も考えていなかった。ケーキを作るのに集中しすぎて。


「・・・とりあえず、座りましょうか」


 授業がないため、クラスはほとんど空室だ。その中の一つに入り、椅子を2つ並べる。


「どうぞ」


 片方の椅子には私、もう片方の椅子には彼が。


「き、今日は何の日だか知っていますか?」


 敢えて、この質問からすることにした。


「バレンタインデー、ですよね。」


「私は、その・・・」


「月華さん。」


「は、はいっ!」


 そっ、と出された手は、頭の方へ。温かい手がやんわりと触れる。緋威翔さんは、私の髪に何かを乗っけた。


「バレンタインデー・・・日本では女性が男性にチョコレートを贈りますが、海外では男性が女性へ花を贈るって、璢夷さんから聞いたので・・・思わず育てていた花を花飾りにして持ってきちゃいました」


 にっこりと微笑む彼と教室に二人きり。どんな顔をしていいのかわからなくなって、思わず泣き出す。


 嬉しくて、しょうがなくて。


 彼は私を見守りながら、優しく頭を撫でた。段々と落ち着いてきた私は、勇気を振り絞り・・・。


「わ、私もっ緋威翔さんに渡したいものが・・・」


 やっとの事で、私はフォンダンショコラを入れた箱を取り出した。


「僕に、ですか?」


 彼は、嬉しそうに箱を受けとる。


「今まで貰った中で、一番嬉しいチョコレートです。有り難うございます」


「わっ、私は――」


「それ以上は、言わないでください。」


 緋威翔さんの指が、私の言葉を遮った。内緒、という時と同じように。


「それ以上の言葉を言われたら、僕は――」


 切なそうに、憂いを含んだ微笑を洩らす緋威翔さん。その姿は、もう絵画のようだった。私は何となくこれ以上言ってはいけないような気がして、言葉に詰まる。


「――ッ」


「有り難う。月華」


 彼はそう言い残し、教室を後にした。最後に残した言葉は敬語でもなく、名前もさん付けではなかった。親しみを込めたその言葉に私は言葉を無くす。


 言えなかった。でも――“伝わった”


 今はそれで充分だ。伝える時は、今ではない。それに、チャンスはいくらでもある。


 いつか彼に伝えよう、私の言葉で、“好きです”と。

とりあえず次はちょっと話に出てきた輝生くんとノエルちゃんから進めます。そして緋威翔くんは最後♪←


上に出てきた子以外でリクエストがあれば、その子から進めますが、まぁ、13日までにリクエストは来ないと予想。


では次回をお楽しみに。

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