準備【月華】
おぅお……、現在2月8日。一話書き上げるのに3日掛かってしまったアァアア
間に合うのか!?いやこのままだと間に合わないぃいい!
……取り乱してすみません。
ではどうぞ。
明後日に控えるバレンタインデーの為、私はショッピングセンターに向かっていた。勿論その理由は、バレンタインデーに皆にあげる友チョコと、あの人に贈る本命チョコレートの材料を揃える為である。
本当はもっと早く準備すべきだったのだが、学校の都合上行けなかったので仕方ない。
ショッピングセンターに着き、早速材料集めを開始する。最初は、キットを見る事から始めた。
今やバレンタインデーは、この世界全域での一大イベントとなっており、セットも沢山売られている。簡単に作るのにはセットは欠かせない。
エスカレーターで6階まで上がり、キットが売られているかを見ることにした。
6階はバレンタイン専用のフロアになっているらしく、所々にセットやら道具やら材料の1つ1つまでがぎっしりと棚や机に並び売られていた。
私はそれを1つずつ確認しながらそのフロアを回った。
まず目についたのは、キットを売っているらしいエリアにある、クッキーだ。個数が多く作れる事がうりらしい。
(・・・友達に分けるには丁度いいかも?)
私はそう考え、一案として確定した。
「あ、月華ちゃん」
やはりバレンタインデー前はこのフロアで知り合いに会いやすい。
「おはようございます、セイラさん」
「おはよう。・・・月華ちゃんも?」
「えぇ、準備をって思って。」
にこやかな笑みを洩らしつつセイラさんは言う。私はそれを見ながら家庭的なセイラさんの想像をする。エプロン姿でケーキを焼く姿を思い浮かべ、料理は上手いのだろうという結論に至った。
「月華ちゃん。」
「はい?」
「本命は勿論あの人だよね?」
「えっ」
急に聞かれ焦る。顔から火が出ているように熱くなった。
「本命がいるのは図星みたいね」
セイラさんは、ふふふと上品に笑って私の顔を指先でツン、と軽くつつく。
「孤中くんでしょ?」
「ひゃあっ」
こうも簡単に当てられてしまうと、こう声を出すしかなかった。
「やっぱりね~」
くるりとターンをし、こちらににっこりとするセイラさん。その姿があまりにも美しすぎて、顔を背けそうになってしまう。
「そういうセイラさんは、聖夜さんに?」
「ええ、そうよ」
反撃したものの、効果は見当たらない。許嫁という事もありこういう言葉は余裕か。
「お互い頑張りましょうね」
セイラさんはそれを告げると自身の準備をするらしく、その場を去った。
私は焦りと恥ずかしさが込み上げながら、その場に暫く立ち尽くした。
こうもしていられないと行動を再開したのは数分後。
テーブルに並べられたセットを見て、色々な可能性を模索していく。
だが、私の料理力で作れるものなど限られている。ケーキなんて作れる訳がない。真っ黒にしてしまって泣くのがオチだ。
そうならないように、簡単なものを作るのが最善策だ。
溶かして固めるだけのカップチョコや、生チョコ。それくらいなら作れる。
だがトリュフやレンジを使うものとなれば話は別だ。・・・と言っても、本命のチョコレートが簡単な物ではつまらないし、申し訳ない。ここは頑張って新しいジャンルに取り組むのがいいのだろうか?
私のバックがバイブレーションで震えた事に気付く。急いで携帯を取りだし、弄り始める。
来ていたのはメールだったらしい。
私は受信ボックスを開き、メールを見つめた。件名は『バレンタインデー』、内容はバレンタインデーのチョコレートを何処で作るかというものだった。差出人は政宗さんである。
『どうして?』と返信すると、『料理が苦手だから誰かと一緒にやりたい』という返事が返ってきた。
政宗さんも料理が苦手なのかと少し安心しながら、私は自身も料理が苦手だと伝えた。
それからのやりとりはこうだ。
『誰か料理の上手い人は・・・』
『セイラさんは料理上手いと思いますよ?』
『セイラちゃんか・・・うん、聞いてみる。もしOKだったら月華さんも来る?』
『行きます!』
お互い絵文字を使うのも苦手なのか、文だけの会話だった。
会話が終わってから、また買い物に戻る。
それにしてもいい機会だ。教わりながら料理が出来るかもしれない。ならば、頑張ってケーキを作ってみようか。
そんな思いが巡った私は、先程見たような簡単なキットではなく、ちょっと手の込んだキットを見始めた。
やはり簡単なセットよりも見た目が豪華だ。それに見映えが良い。
バレンタインという事も考えて、チョコレートを使うケーキを作ろうと考えた。それに該当するキットは、ガトーショコラ、チョコシフォンケーキ、チョコレートケーキ、フォンダンショコラ、ザッハトルテ等である。
ザッハトルテなど、余り聞きなれないスイーツに興味がいく中、私は彼の好きなケーキを思い出していた。
確か彼の好きなケーキは、フォンダンショコラだった筈だ。
一瞬にして他のケーキへの興味が薄れた事で、私はそれを作る事に決めた。
自分で材料を集める事は難しそうなので、キットを買っていく事に決めた。なんでも、6個は作れるセット内容になっているらしい。
6個も作れるのならば、その内の1つくらいは上手くいくだろう。
1260円と他のキットに比べて少々高いが、まぁ、本命なのでそれくらいは当然だろう。
キットを買い、一安心。次はキット以外に必要なもの、即ちラッピングするものとキットに入っていない材料だ。
材料で必要なものは、卵とバターだ。それは後でスーパーで買うとしよう。
次にラッピングは――さてどうしようか。皆に配る分を決めないと枚数等が決められない。皆に作るのは生チョコにするとして・・・・。そうすると必要なのはラッピング用の袋ではなく、生チョコを入れる箱だ。
箱は近くの棚に沢山詰められている。私はその種類と模様のバリエーション、大きさなどを見て、ビックリしてしまった。皆に配る事を考えると、あまり大きな箱に詰めることはできない。
私はピンク色の無地の箱を女子人数分、水色の無地の箱を男子人数分購入する事にした。何故無地の物を選んだのか。それは、後でリボンをつける際にリボンが選びやすいからである。
次に箱に結ぶリボン。これは男女共に茶色の無地のリボンを選んだ。茶色は水色にもピンクにも合う色だ。
結局とてもシンプルになってしまいそうなので、中に敷く紙をレースにした。そして似たようなレースの模様をした丸い紙(これが何なのかは良く分からない)を購入した。
途中メッセージカードを見つけたが、作られた言葉より自分で考えたものの方が良いと思い、買わなかった。
ラッピング用の道具は粗方揃ったので、今度は地下の食品売り場までエスカレーターで降り、バターと卵を購入した。
これで明日を無事迎えられる。そう思い時計を確認しようと携帯を見る。新着メールがあると画面に表示されているのに気付き、迷わず受信ボックスを開いた。
『件名:オッケーだって!
差出人:心向 政宗
本文:明日、セイラちゃんの家のキッチン使って良いって!セイラちゃんはバレンタインの準備に余裕があるらしいから、作り方とか指導もしてくれるって!月華ちゃんも一緒にやろう?』
先程の件の続きのようだ。
私は『本当ですか!有り難うございます!当日必要なものとかはありますか?』と返信すると、『自分の作るものの材料だけで大丈夫だって!』という返事が返ってきた。
・・・材料だけという事は、それを作るのに必要な道具は要らないという事はなのか?
私は心配になって、『道具は持っていかなくて平気なんですか?』と送った。
『うん!なんでも、セイラちゃんの家で料理教室とかやってるから、機械とか道具とかも沢山あるんだって』
流石お嬢様。あんな広い豪邸に住んでいるだけある。
『分かりました!ところで、皆さんもセイラさんの家に?』
『うん。皆誘ったよ』
どうやら女子は全員参加らしい。
バレンタイン前日に集まるということで、政宗さんに詳しい内容を聞いた。
やり取りが済み、買い物も済んだ私は家に帰り始めた。両手に袋を持って。明日はセイラさんの家で、これを作ると思うと、不安とドキドキが込み上げて来る。
バレンタインまで、後2日。
折角なので、本当の日付と同時進行(つまり予約投稿)にしようとしたけれど、そうすると当日がもの凄いことになりそうなので止めました(笑)