大好きな理由【霧雨】
バレンタイン当日。
皆さんは如何お過ごしでしょうか。
私が璢夷くんを大好きな理由。その1、優しい所。その2、かっこいい所。その3・・・出したらきりがない。今日はそんな彼の為に、チョコスウィーツを用意したの。
綺麗なラッピングをしたブラウニーが私のバッグの中にちゃんと入ってる事を確認してから寮を出る。
――きっと、喜んでくれる。優しい彼ならば。
学校に近付くと共に上がるテンションとざわめく声。その声は誰だか分からないけれど、兎に角騒がしい。
一体何の騒ぎ?
学校のすぐ近くまで来て、やっとその理由が分かった。騒がしい原因は、私達の学校の入り口に集まった女子高生の黄色い声だったんだと。
勢いのある女子の中に、ぽつぽつと男子が見える。きっとあの男子にチョコレートを渡しに来たのね。
ちょっとどいてくれると言わんばかりに通り抜けようとすると、そのぽつぽついる男子の中に彼がいる事に気付いた。
彼にまとわりつく女子は皆それぞれが着飾っていた。メイクで自分を飾り立てる者、いかにも気合いを入れてきましたというような服装・髪型をしている者。
そんな女子を相手にする璢夷くんは、沢山のチョコレートを受け取っていた。しかもただ受けとるだけではない。その一人一人に礼を言うと共に、花を渡していたの。
優しいにも程がある。私なら冷たくあしらう所を、彼はそうしていたのよ。
女子はチョコレートを渡した後もその場に残っていた。璢夷くんの事だから帰れといえないのでしょう。それを汲み取った私は、適当な理由をつけて璢夷くんを連れ出した。
「璢夷くんってば何で女子をそのままにしておいたの?貴方が自由に動けなくなってしまうじゃない」
彼は参ったという顔をしながら答えた。
「いや、彼女達が頑張ってこれを用意してくれたんだ。それを考えたら冷たくあしらう事など出来ない」
誰にでも優しい璢夷くんらしい回答。私はそんな彼を少しだけ哀れに思った。
「貴方は優しすぎるわ」
「そうか?」
二人で道を歩きながら話すなんて久しぶりだわ。いつ以来かしら。
「璢夷くんって変わらないわね」
昔から変わらない。その優しさ、その性格。周りに振り回されても、常に他人を第一に考えてる。私はそんな貴方が好きよ。
「お前が笑うなんて珍しいな」
璢夷くんを間近で見て表情が緩んだのを見ていたのか、彼がクスクス笑いながら言ってきた。
私は彼を笑顔に出来たのが嬉しくて、つい微笑む。
あぁ、こんな時間が毎日続いたらいいのに――。こうやって二人きりで他愛もない話をして、二人で笑っていれたら・・・。
「霧雨ちゃーーーん!」
二人、きりで――。
「ケイン、こんな所で何してるんだ?」
「あ~それがさぁ、運命の導きってやつなのかなぁ、霧雨ちゃんに会いたいって思ったらなんと!叶っちゃった!」
「私はアンタに会いたく無かったわよ!何よっ折角璢夷くんと二人きりで――」
「おいおい、さっきまでの顔が台無しだぞ?」
「――ッ!」
「そうだよ!さっきの霧雨ちゃん可愛――」
「見てたのね」
私と璢夷くんが仲良く話している間、お前はずっと――!それで私達の仲を引き裂こうだなんて!最低っ!
「霧雨ちゃ――」
「アンタなんか大っ嫌いよ!行きましょ、璢夷くん!」
「え、あ、ちょっと待てそれではケインが――」
「良いの!放っておいて!」
「そんなぁ~霧雨ちゃん、俺も入れてよ~ッ」
「生憎アンタの分のブラウニーはないの!」
「ガーーンっ」
「お前も本命がいるのか」
ショックを受け地べたに倒れるケインをシカトして、話に食いついてくれた天然な璢夷くんに向かって――。
「勿論貴方へよ。璢夷くん♪」
最上級の可愛さアピールで告白!我ながら上出来だわ。
「・・・何か申し訳ないな。すまない、ケイン」
「い、いいんだよ知ってたから・・・」
な、なんで璢夷くんが謝ってるのよ!別に悪いことなんてしてないのに。
「・・・霧雨。」
「なぁに?璢夷くん?」
「すまないが、これは受け取れない。ケインに――申し訳がないからな。でも有難う。気持ちだけ貰っておく」
「でも――」
「あ、あとこれ・・・礼だ。いつも慕ってくれて有難う。」
璢夷くんの手に握られた、黄色い花。さっき女子高生に渡していた花と、全然違う。しかも、さっきの女子高生には同じ花をあげていたのに――。
「では俺は用があるので失礼する。じゃあ、また明日な」
彼は花を渡した後、どこかへ向かっていった。
「――ッ」
受け取って、貰えなかった。頑張って作ったのに。でも――この花、凄く嬉しいわ・・・!
「霧雨ちゃん・・・?」
でも、こいつは許せない。こいつさえ居なければ――ッ・・・でもそんな風にケインを扱う事を、彼が望むはずがないわ。
「・・・ごめん霧雨ちゃん。」
「えっ?」
「俺、自分勝手な事して霧雨ちゃんの邪魔しちゃった・・・最低だな、俺。」
いつになくしょんぼりするケインを見て、私は何だか切なくなった。
ケインは明るくて空気読めなくて馬鹿でアホだけど、そこが彼の長所なんだから!
「――これ、アンタが責任持って食べて」
「で、でもそれはさぁ!」
「良いの!」
私は半ば無理矢理ブラウニーをケインに渡し、即行私は寮へ帰ろうとした。
「霧雨ちゃん」
「何よ。まだ謝るの?」
「俺のこと、気にかけてくれたんだ」
――何でそんな嬉しそうな顔するのよ。璢夷くんの御下がりのブラウニーを貰ったくらいで。
・・・分からない――。
「俺はさ、大好きでしょうがないんだよ。霧雨の事。」
「そう」
返事は軽く返した割に、速まる鼓動。いつもと違うあの馬鹿の態度。
普通なら、相手を責めるような言葉を吐いていたところ。でも今日だけは特別に貴方に
「・・・有難う」




