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安定ポジション【聖夜】

 いつものように目を覚まし、カレンダーを確認する。今日は待ちに待ったバレンタインデーだ。


 チョコレートを一つももらえない男子には悪いけど、俺がチョコレートを貰えるのは確実だと言える。だから余裕の顔をしてセイラと前日に約束した公園に向かった。


 昨日セイラとメールをした際に、公園で待ち合わせと決めたのには訳がある。サプライズで彼女の大好きな薔薇の花束をプレゼントしようと思っていたのだ。だけど予定変更。今日は彼女を誘って街をぶらつこうと思う。


 何故って非リアに見せつける為。優越感に浸るその時間が欲しいから。それに、素直に言えば、彼女と一緒にどこかへ出掛けたい。


「あ、セイラ・・・ごめん、待った?」


 いつものようにお洒落なセイラを見て、にっこりと微笑みながら、いつもの台詞。彼女は決まったように、私も来たばかりよと言った。


 これぞカレカノの醍醐味。


「じゃあ行こうか」


「何処へ?何処かへ連れていってくれるの?」


「あぁ。さぁおいで」


 彼女の手をさっ、と握り二人で歩き出す。すれ違うカップルのなんと羨ましそうな顔!非リアに関しては、滑稽な顔をしていた。あーまたカップルか・・・うんざりだよ。という顔だ。


「何処に行きたい?」


「うーん・・・花畑がいいな」


 彼女らしい注文だ。


 俺は即座に近場にある花園を探した。しかし時期的に薔薇が見られる場所はない。


 しょうがないので、花鳥園に向かう事にした。


「うわぁあ・・・色んな花が咲いているわね」


 嬉しそうな顔をするセイラを眺めつつ、用意されていた椅子に座りゆったりと過ごす。セイラと過ごすこの時間が、俺が生きている理由だ。


「聖夜、この花綺麗ね」


 名前も知らない白い花を指差していうセイラ。何とも愛らしい。彼女を独り占め出来る立場にいる俺は、妙な安心感に支配されていた。


 ――彼女は裏切らない・・・。


「聖夜?もう、聖夜ってば!」


 セイラに呼ばれている事に気付かず、ハッと我に返る。どうやら昔の古傷を思い出していたようだ。


「ごめんごめん。その花、なんていうの?」


「carolっていうんですって」


「賛美歌・・・へぇ。」


 確かに美しい花だ。セイラによく似合う。


「こんな時期に咲くんだね、この花」


「春に向けて賛美歌を歌うって意味じゃないかしら?」


「なるほど。・・・それよりセイラ――おいで」


 膝の上にセイラを座らせ、他愛もない話をする。そんな中、急に彼女がハッとしたように言った。


「――あ、そうだ。私聖夜の為にフルーツケーキ作ったの」


 セイラが持っていたバッグから、フルーツケーキの入った箱が現れた。


 昔から、俺はセイラの作るフルーツケーキが大好きだった。事ある毎に彼女に作ってもらったものである。――武器が生まれるまでは。


「そういえば久々だね」


「そうでしょう?懐かしいと思わない?」


「うん、懐かしいよ」


 セイラがフォークでケーキを切り取り、俺の口元へと運んだ。


安定の時間。こんな日々がずっと続けばいいのに。・・・いいや、続くんだ。


だって俺達は、『許嫁』なんだから。


 許嫁と言っても、無理に親が決めた訳じゃない。双方の想いを知った上で、俺の親が『セイラが誰か他の人にとられないように』許嫁にしたんだ。


 簡単にいってしまえば、婚約しているようなものだ。親が許嫁と決定していなくても、きっと同じポジションになっていたと思う。


でも、今では親にちょっと感謝してる。双方の親が決めたことだから、周りはセイラに手出しすることが出来ない。


「セイラ、大好きだよ」


 毎日のように伝えてる想い。彼女はそれをちゃんと返してくれる。


「私もよ、聖夜」


 俺は一番の幸せ者だな。

あー暗くなってきたなぁ。

現在2月13日の17時40分。


明日はバレンタインデーですな。


さて、後何人間に合うかなぁ?

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