迷い【璢胡】
皆様こんにちわ~ww
只今マッ○にて○ックフルーリーをぱくぱくしておりますた。
女子トークしている中で執筆しておりました(笑)
昨日焼いたこのケーキ、上手く焼けたのに渡せなさそう・・・。
窓の外を見ながら溜め息をつく。どこもかしこもカップルが歩いている――。羨ましい。私もあんな風にあの人と歩けたら。でもそれは夢のまた夢――。
彼は、遠い存在だから。
時計を気にしつつ、家を出る。皆に渡すチョコシフォンケーキと昨日焼いたあのケーキも一応持って家をでた。
学校について気が付く。そうだ、今日は自由投稿だ。・・・来なきゃよかった。
女子に手厚く迎えられながら、チョコを貰っていく。私はそのお返しにとチョコシフォンケーキを渡していった。
「どうしたの?元気ないね」
「あ、亜里亞さん・・・」
理由を話そうにも、話せない。理由が理由だから。
「・・・まぁ無理には聞かないけど・・感情を抑え込んじゃ駄目だよ」
私はこくりと頷いた。
「本命、頑張って渡さないとだね!月華ちゃんっ!」
「うっ、うん。」
すぐ先には、恋を応援してもらっている月華ちゃんの姿があった。私が月華ちゃんだったらどんなに気持ちが楽だったことか。
「きゃ~~っ!」
外から聞こえる女子の黄色い声。正直耳障り。こんな気分の時に聞きたくない。あぁ、帰りたい。
・・・・うん、帰ってしまおう。どうせ自由登校だもん。帰ったって大丈夫。
私は教室を出た。今日のノルマは達成している。残るはオマケだけ。それは、別にあってもなくても・・・。
校門に来てみると、何故あんな黄色い声が聞こえたのかが分かった。近くにある女子高から女子高生が沢山押し寄せていたのだ。彼女達の目的は、きっと。
「緋威翔さんっ!」
女子高生の中に、必死に緋威翔さんを探す月華ちゃんの姿が見えた。彼女の探す彼は女子の向こうだ。
「月華さん・・・!おはようございます」
沢山いる女子を何とか整列させようとしながら、彼は月華ちゃんに向かって言った。彼は彼女を贔屓にしているのがよくわかる。
「今日はバレンタインデーとはいえ凄い人ですね。僕はどうしていいのやら」
「ちょっと、来てください」
そんな緋威翔さんを好きな月華ちゃんは本命チョコを渡す為に呼び出したようだ。
こんな大勢の中じゃ、声はかき消されてしまうそう考えたのか、月華ちゃんは緋威翔さんを引っ張っていった。
「ちょっと何よ!横入りしないでっ」
後ろからは女子高生の怒号が聞こえる。私はその後が気になって、二人を追いかけていった。
「ふぅ、助かりました。有り難うございます」
「あのっ」
「どうしました?そんなに改まって。」
「話を、聞いてほしいんです」
改まった雰囲気に包まれる一角。そっか、月華ちゃんは告白をしようてしてるんだ。
「話があったなら、もっと早く言ってくれたら良かったのに。すぐに駆けたでしょう、貴女の望みとあれば」
「・・・ッ!」
緋威翔さんの口から紡がれる、甘い言葉が私の胸を締め付ける。
・・・本当は、私も。
彼女と同じ立場になるはずだったのに・・・意気地無し。あの時だって、見守ってるだけで何もしなかった。だから私は負けたんだ。
バックの中に入っているフォンダンショコラ。私が彼の為にと作ったもの。でも、もう必要ない。
あの人に必要なのは、『あの子』が作ったフォンダンショコラ。私が作ったものじゃないんだから。
二人は少し経つと、教室に入っていった。私はその入り口の側で聞く耳を立てる。
・・・私ってば悪い子。だからこんな事になるんだ。
最初の方のやりとりは、聞こえなかった。何かを聞いているような感じだったけれど・・・。
少しの間、何か聞こえないかと聞いていると、緋威翔さんの声が聞こえた。
「バレンタインデー・・・日本では女性が男性にチョコレートを贈りますが、海外では男性が女性へ花を贈るって、璢夷さんから聞いたので・・・思わず育てていた花を花飾りにして持ってきちゃいました」
きっと今彼は月華ちゃんを見て微笑んでいるのだろう。私はどんな顔をしていいのかわからなくなって、思わず泣き出してしまった。
頬を伝う涙は、彼を想う気持ち?それとも・・・。
扉から中を覗いてみると、緋威翔さんは月華ちゃんを見守りながら、優しく頭を撫でていた。・・・彼女も今、泣いていたんだ。
私と正反対・・・。
「わ、私もっ緋威翔さんに渡したいものが・・・」
月華ちゃんが箱を取り出す。中身はきっと、フォンダンショコラだよね。
「僕に、ですか?」
彼は、嬉しそうに箱を受けとっていた。私が同じように渡したら、あんな風に受け取ってくれたのかな?
「今まで貰った中で、一番嬉しいチョコレートです。有り難うございます」
今まで貰った中で、一番嬉しいチョコレート。その言葉は彼女にとって、どんなに嬉しい言葉だっただろう。でもそれは反対に私を傷付ける言葉にしかならない。
「わっ、私は――」
「それ以上は、言わないでください。」
緋威翔さんは指で月華ちゃんの言葉を遮った。内緒、という時と同じように。
「それ以上の言葉を言われたら、僕は――」
切なそうに、憂いを含んだ微笑を洩らす緋威翔さんを見て、私は自分の事を忘れて心配になってしまった。その姿は、もう絵画のようで、何も言えない。
「――ッ」
「有り難う。月華」
彼が月華ちゃんを敬語を使わずに呼んだ。そしてその後彼が教室から出てきた。私はそれに気付かずにそのまま彼と鉢合わせしてしまう。
「あっ・・」
緋威翔さんはどうやら私に気付いていたらしく、私の肩をぽんと叩き、月華ちゃんに気付かれないようにそっと誘導した。
そこの教室から離れた一角で立ち止まり、どうして覗き見をしていたのかと問われる。
「・・・。」
答えられる訳がない。
でも今なら、アレを渡せるかもしれない。どうする?私・・・。
「あの・・・」
「どうしましたか?」
「これ、受け取ってください」
押し付けるようにしてフォンダンショコラを渡して私はその場を後にした。
多分、中身を見れば分かってくれるはず。だって彼だから。
これで良かったのかなぁ・・・。そう思いながらも、内心ちょっとすっきりしていた。
気持ちの整理がついたら、その都度伝えていけばいいや。彼を見守ることなら私にも出来るもん。
今は――、その時じゃない。