2話
夜、父さんが帰ってきたので母さんに呼ばれ二階に降りる。
「おかえり」
「おう、ただいま」
うちは比較的家族仲はいいと思う。
ちゃんと挨拶はするし、反抗期なんてものはなかったと思いたい。
「そういやさ、隣、あれなにしてるの?」
ふと思いついたことを父さんに聞いてみる。
「あれ?あれってなんだ?」
「父さん見てないの?家入ってくる時見えるでしょ?」
そう、玄関から入ってこようとすると必然的に見えるはずなのに・・・
考えながら、ふと時計を見てみる
針は7時半過ぎをさしていて、そこで気付いた
「あぁ、暖かくなってきたとはいえまだ4月だから暗くて見えなかったんだ」
「1人で何言ってんだ?」
どうやら思っていたことが口に出ていたらしい。
僕の悪い癖だ・・・。
「隣で家建ってたんだけど、昨日まではなかったよね?こんな時期に誰が引っ越してくるんだろうね」
父さんに聞いても、何もわからないとは思うけど一応聞いてみた。
入学シーズンはもう終わってるし、転入の時期ではないと思う。
「あぁ、そのことか。それな「え、父さん知ってるの?」
意外なことに父さんは知っていた。
まぁ、教師だしそこそこのキャリアだから知っていて当然・・・なのかな?
「それな、月曜から来る転校生の家族の家だ」
「転校生・・・ねぇ。ん?でもまだ家建設中だけど大丈夫なの?転校してきたくらいだから、この辺に知り合いなんていないんじゃなの?」
その質問に対して、父さんはにやっと笑いこう答えた。
「その転校生の親と俺は知り合いでな?家が建つまでそこの娘さん2人と家政婦さん1人の面倒をここで見ることになったから」
はい?今この人すごいことをさらっと言わなかった?
「えぇっと、それってその女の人3人と一緒に暮らすってこと・・・?」
「そうだな。そういうことになるな」
おいおい、それはまずいだろう。
「父さん、それはさすがにまずいんじゃない?」
「なんだなんだ?お前はあの子達に変なことでもするのかぁ?」
くっ、まずい。このままいけばいいようにからかわれて了承せざるを得なくなる。
はぁ、どうせかわかわれるくらいなら大人しく引き下がるか・・・。
まぁ父さん達もいるしいいだろう。
「あぁ、それとなぁ父さん急に東京にある姉妹校に転勤になったんだ」
「え、ごめん。よく聞こえなかった」
「だから、父さん東京に転勤するの。この家から一年ほど出て行くから」
くそ親父ぃぃぃ!!
・・・ま、まぁいい。母さんがいるから。
女性4人に囲まれて生活するのはあれだけど、まだ身内がいるほうがいいや。
「母さんもね、父さんについていくわよ?家政婦さんが来るから家事のことも心配ないしね♪」
「いやいやいやいや、それはますますやばいって!」
「なぁに?やっぱり変なことするの?」
「いや、そんな気は毛頭ないけど・・・はぁ」
これは仕方ない、僕が折れるしかないや。
「わかった、わかったよ。一緒に住めばいいんでしょ、住めば」
まぁいいや、どうせ一年の辛抱だ・・・長いなぁ。
この日が僕の波乱の日常の幕開けだった。




