60 ガンナー「さっさと合流するぞ」
吟遊詩人「じゃあ、今日はそろそろ休みましょうか」
魔法使い「そうだねー」
商人「あれやこれやと忙しなくしているうちに、すっかり夜も更けてしまい申した」
剣士「俺は初めに話してたとおり毛布で寝るから、お前らは寝袋でゆっくり休め」
勇者「本当にいいのか?」
剣士「俺のことは気にしないでいい。むしろ、余った毛布で寝袋よりよっぽど快適かもな」
魔法使い「なんか剣士が寝袋で寝るところって想像できないね」
剣士「窮屈なのが苦手だからな。寝袋で寝るくらいなら何もなしで床で雑魚寝するか座って寝るほうが熟睡できる」
商人「野生的……」
吟遊詩人「もう電気消すわね」
魔法使い「うん。おやすみー」
剣士「……」
剣士「(なんだ? さっきからずっと変な感じがする……)」
剣士「(いや……ガンナーが目に届く所にいないことがこれまであまりなかったから、少し動揺してるだけだろ。本来、飛行船から人が落下していくのを見て、ここまで落ち着いているのが不思議なくらいなんだ。きっと戸惑いが時間差が来ただけだ)」
剣士「(でもなんだ……腹のあたりがモヤモヤする)」
剣士「(あいつら、今頃ちゃんと休めてるんだろうか)」
勇者「(全ッ然、寝れない……)」
勇者「(色々あって疲れてるはずなのに、三人が心配で一向に眠くならない……だいぶ時間経ったし、皆もう寝たかな)」もぞ、
勇者「」
勇者「(剣士マジで座って寝てる)」
勇者「(え? あれ寝てる? 起きてるんじゃない? え、でも目ぇ閉じてるし寝てる?)」
勇者「(でも、起きてても不思議じゃないよな……こんなことになって、皆、三人が心配じゃないわけないし)」
剣士「……」ごそっ、
勇者「(あ、やべっ起きた! いや、起きてた?)」
剣士「ハァ……」
剣士「……今日は見なかったな、夢」ボソ、
勇者「……?」
勇者「(何か言った? 気のせいかな)」もぞ、
剣士「……勇者、起きてるのか?」
勇者「うっ」ビクッ
剣士「やっぱりな」
勇者「な、なんでわかったんだ?」
剣士「そりゃ……そんな、ずっともぞもぞ動いてりゃあな」
勇者「剣士、ずっと起きてたのか?」
剣士「いや、少し寝た。お前は?」
勇者「……目が冴えて、あんまり」
剣士「少しは寝ないと明日バテるぜ。睡眠薬……持ってるけど、使うか?」
勇者「あ……いや、そもそも剣士、なんでそんなの持ってるんだ?」
剣士「え? ああ、それは……」
勇者「もしかして、夜寝れてないのか?」
剣士「勘違いするな、別に常用してるわけじゃない。最近、ちょっと夢見が悪いって言ったろ。そのせいで少し寝つきも悪くなってきて、だから持ってて損はないと思ってな、少し前に買ったんだ。ないよりマシ程度には効く」
勇者「……大丈夫?」
剣士「ああ、別に心配ない。……俺はもう寝るから、お前もちゃんと休めよ。どうしても寝れそうになけりゃ、それ使っていいから」
勇者「うん……ありがとう。おやすみ」
~朝、船着き場~
勇者「やっとついた」
剣士「リエイドはあれか。また随分とでかい町だな」
魔法使い「っていうか壁だね」
商人「壁ですな」
吟遊詩人「ガンナーたち、もう着いてるかしら」
剣士「いや、夜が明けたばかりだし、流石にまだだろう。多分、夕方ごろには着くと思うが」
商人「飛行船で来たアッシらも、本来なら今日の昼時に到着の予定だったところを、操縦士殿の全速の運航のおかげで朝方に到着した次第。徒歩ならさらに時間がかかりましょう」
勇者「じゃあ捜しに……」
吟遊詩人「あの子達が今どのあたりにいるのかもわからないわ。入れ違いになってもいけないし、あまり動かないほうがいいんじゃないかしら」
勇者「う。そうか……三人を捜しに出たほうが迷子になって、逆に捜されることになるかもな」
魔法使い「ミイラ取りがミイラに、ってやつだね」
商人「では、それがしがリエイドの宿へご案内致しましょう。こちらにございまする」
剣士「ああ。頼んだ」
~リエイド、宿~
魔法使い「ねえ……勇者見た……? ここの料金……」
勇者「普段泊まってる宿の倍はあったよな……」
魔法使い「でも内装とかは他の宿とそこまで変わらないよね……」
勇者「おそろしい……」
商人「で、で、ですが備品は比較的上質な物ですし。リエイドではここが最安価の宿でありますゆえ」
勇者「うん……そうなんだよ。ほとんどのものはいつも利用してるような宿と変わらないのに、そういう細かいところでいつもと違って、なおかつ空気がなんか……」
魔法使い「この街の空気というか、雰囲気がなんか……」
勇者「酔う」
魔法使い「船酔いみたいな……なんか、ね」
商人「(それ胸焼け……というか吐き気では……)」
吟遊詩人「さっそくこの街に拒絶反応示してるわね」
剣士「気持ちはわからなくもないがな」
勇者「ガンナーたちまだかな……」
剣士「お前は少し落ち着けよ」
勇者「だ、だって」
魔法使い「一晩経ったのに変わらないね」
商人「さ、散歩などされてきてはいかがでしょう。少しは時間潰しになるのでは」
勇者「うん……」
吟遊詩人「あまり遠くへ行かないようにね」
勇者「散歩って言ってもこのあたりのこと全く知らないからなあ。迷わないように気を付けよう」
~一時間後~
剣士「……なあ」
魔法使い「何?」
剣士「なんか……嫌な予感しないか」
魔法使い「剣士も? やっぱそうだよね」
剣士「……勇者、あいつ」
吟遊詩人「い、いや、でも、まだ決まったわけじゃないわよ……」
商人「は、判断を早まるべきでは」
魔法使い「でも、ねえ?」
剣士「……あいつ、絶対道に迷ってるよな」
魔法使い「そんな予感しかしないよね」
バタバタバタ……
吟遊詩人「あら? 勇者が帰ってきたのかしら」
バンッ、
ガンナー「おい! 全員いるか!?」
商人「ヒエッ!?」
剣士「おわっ、ガンナー! もう着いてたのか……っていうか、どうした珍しく慌ただしい」
魔法使い「あれ、騎士と僧侶は?」
ガンナー「あとで説明する。勇者はどうした」
吟遊詩人「さっき街へ散歩に出て……」
ガンナー「無線機は」
剣士「あ! あいつ、また無線機置いて行って……だから連絡がなかったのか」
ガンナー「ハーめんどくせえなあ!」
魔法使い「ど、どうしたのガンナー」
ガンナー「話は後だ。ちょっと勇者捜してくるから、お前らここにいろよ」
魔法使い「え、え、ちょっ……行っちゃった」
剣士「なんだったんだ、いきなり」
吟遊詩人「……商人。もうガンナー行ったわよ」
毛布の塊「はっ!」バサッ
商人「い、いえ別に、びびってなど……今のは別に、身を隠していたのではなく」
魔法使い「思いっきりびびってるよ……そろそろ慣れなって」
吟遊詩人「というか、日に日にひどくなっていってない?」
商人「な、何を申すか。徐々に改善されております」
魔法使い「(どのへんが改善されたんだろう……)」
剣士「……とにかく、二人の帰りを待つか」
~外~
勇者「やばい……迷子になった」
勇者「あれこれ考え事してるうちになんか知らないところに来ちゃった……」
勇者「あ、そうだ。無線で剣士に連絡……」ごそごそ、
勇者「……」
勇者「うん……」
勇者「っていうか、本当にここ何処? 俺どうやってここまで来たの?」
勇者「なんか……大通りにいたときと空気感が違う気がする。あまり長居したくないな。誰かに道を尋ねて早く宿に戻ろう」
勇者「……何を扱ってる店なのか、看板がないのはなんでなんだろう」
勇者「もしかして定休日とか? 今やってないのかな」
ガチャ、
勇者「あ」
店の男「いらっしゃいませ。物好きなお客さん」
勇者「(なんだあのカーテン。っていうか、なんか檻みたいなのがあるんだけど……動物でも売ってるのか?)」
勇者「あの、お店お休みとかでは……?」
店の男「いえいえ、定休日は明後日ですよォ。いやあお客さん、運がいい。実は先日、丁度新しいのを仕入れたばかりでしてねえ」
勇者「え?」
勇者「(ここ何の店?)」
店の男「うちはこだわりの店でしてねえ、粗悪品はありません! どうです、見ていきませんか?」
勇者「あ、いや俺、ちょっと道を……」
店の男「ちょいと失礼。ささ、こちらへ。そのカーテンの向こうに商品が。今お見せしますんで」
シャッ、
勇者「!!」
少女1「……」
少女2「……」
少女3「……」
少女4「……」
店の男「どうですう? 見かけだけでも上物ばかりでしょう。調教済みなもんで、なんでも言うこと聞きますよ? 荷物持ち、家事の代行、愛玩用としてはもちろん、ウチは穢れがないのをウリにしてましてねえ、アッチの処理用としてもなかなかです」
勇者「な……」
勇者「あ、の……あの子たちって」
奴隷屋「おや、ご存知ないとはモグリですねえ。ええ、ええ、全部エルフ族の女でして、元々温厚な種族なので絶対に逆らいません」
勇者「(あれ、全部……エルフ……? ど、どうしてこんな店が……)」
?「へえー、こりゃ確かに上玉揃いだな」
奴隷屋「お、いらっしゃい! この良さがわかるとはさすが旦那、お目が高い! 今なら特別、お安くしときますよぉ?」
勇者「あ……」
ガンナー「じゃあ、一人もらおうか」
勇者「が、ガンナー!?」
ガンナー「てめえ馬鹿野郎が。何やってんだこんなところで」ヒソ、
勇者「ご、ごめん道に迷って」ヒソ、
奴隷屋「して、旦那。どの女になさいます?」
ガンナー「……そうだな。あの奥にいるやつだ」
エルフの少女「!」
奴隷屋「あっ……、だ、旦那、すいませんねえ。あれはまだ調教が済んでない未熟な奴隷でして、そのぉ……」
ガンナー「なんだ? 俺があいつにするって言ってるんだ。連れて来い」
店の男「……ああ! ははあ、なるほど、旦那もなかなかよいご趣味で! ご自分の手で調教したいということですな? なるほどなるほど、了解しました。あちらのエルフで……おい、何してる! さっさと来い! ご主人様を待たせるな!」
勇者「(ガンナー……どういうつもりなんだよ)」
奴隷屋「へっへっへ、すいませんねえお待たせして。それで、お代の方ですが……」
バサッ、
勇者「!」
奴隷屋「! だ、旦那こいつぁ」
ガンナー「なんだ。足りないか?」
奴隷屋「い、いえ滅相もない! ええと釣りのほうが……」
ガンナー「釣りはいらねえよ。とっときな」
勇者「お、おいガンナー」
ガンナー「行くぞ」




