5 勇者「内輪モメが多いパーティ」
勇者「Zzz」
ガンナー「Zzz」
剣士「おら、朝だぞー」布団引き剥がし
勇者「おおう……寒っ、肌寒っ」
ガンナー「んー……」
勇者「……おはようございます」ゴシゴシ
ガンナー「……ハァー」
剣士「ガンナー、起きてるか?」
ガンナー「んー……」
剣士「聞こえてるか?」
ガンナー「んー……」
勇者「ガンナー朝弱いのか……『んー』しか言わない」
剣士「……この辺はまったく変わってないな。いや、マシにはなったか」
勇者「前ってどんなだったんだ?」
剣士「……なんだろう、猛獣?」
勇者「えっ何、こいつってモンスターか何か?」
剣士「いや銃使いだ。……にしても、今日は一段とだれてるな」
勇者「いきなりの遠出だったし、疲れてたんだろ?」
剣士「……まあ、もう少ししたら起きるか」
勇者「なあ、ちょいちょい気になってたんだけどさ、ガンナーと剣士って兄弟だろ?」
剣士「ああ」
勇者「にしてはどうも、変わってないなとか、料理に対して腕があがったとか、久しぶりに会うみたいなセリフが目立つ気がするんだけど」
剣士「そりゃ、今はあいつとは別々に生活しているからな」
勇者「えっ、そうなのか?」
剣士「二人で実家からセシリカに出てきたはいいが、一緒に暮らしていたのははじめのうちだけで、俺はあの屋敷の近くにある小さい小屋に住んでる。狭いほうが落ち着くからな。時々様子を見に行ったりもするが、基本的に私生活はバラバラだ」
勇者「そうなのか……なんか、お前らの家ややこしいよ。あと剣士って結構庶民的なところあるよな……」
剣士「う、うるせえな。いいだろ別に」
ガンナー「腹が減った」
剣士「やっと起きたか」
勇者「お前、揺すっても声かけても全然起きないからちょっとびっくりしたよ」
ガンナー「ああ、そう」
勇者「うん」
ガンナー「……」
勇者「……」
ガンナー「腹減った」
勇者「もうすぐ飯だって」
ガンナー「へー」
勇者「……」
ガンナー「……」
剣士「……お前等普通の話だと全然会話続かないのな」
勇者「いやそんな事ないと思うけど……なあ?」
ガンナー「うん」
勇者「……」
ガンナー「……」
剣士「……見てて複雑な気分になるからやめてくれねぇか? もう一人含め」
ガンナー「剣士しかいない」
剣士「俺は飯を作る」
勇者「魔法使いが入るともれなく俺がいじめられる」
剣士「一対一でもそうなると思うが……」
勇者「……」
ガンナー「……」
剣士「……お前らの関係、壊滅的だな」
ガンナー「いや剣士が入れば何も起きないんだって」
剣士「さっきの『お前ら』の対象は勇者とガンナー二人に限定してだよ」
勇者「なんと」
ガンナー「あれまあ」
剣士「仲良いんじゃなかったのか」
ガンナー「……」
勇者「……」
剣士「なんでそこ黙るんだよ」
ガンナー「あ、魔法使いは?」
剣士「話変えてごまかすなよ」
ガンナー「違いますゥ、純粋に魔法使いが何処に行ったのか気になっただけですゥ」
勇者「ごまかしが下手……魔法使いは散歩に行ったよ」
ガンナー「『お腹空いたー』って言いながら帰ってくる魔法使いを安易に想像できた」
ガチャ
魔法使い「お腹空いたー」
剣士「お前は本当に期待を裏切らないな」
~・・・~
勇者「そろそろ出発しようか。吟遊詩人を待たせても悪いし」
魔法使い「吟遊詩人はいつごろクリエントに着くの?」
剣士「調べものが終わり次第向かうって言ってたからな、詳しい時間までは俺も知らねえ」
勇者「とにかく出発しよう」
魔法使い「そうだね」
勇者「そういえば魔法使いは何処に行ってたんだ?」
魔法使い「無線の使い心地を試すのとお散歩も兼ねて、吟遊詩人と話してたんだ」
勇者「へぇ。何話してたんだ?」
ガンナー「うわ、勇者デリカシーない」
剣士「女同士の会話に首突っ込むなよ……」
魔法使い「勇者見損なった」
勇者「……えっ何、俺なんか悪い事言った?」
ガンナー「だって……なぁ?」
魔法使い「女の子の会話だよ? ガールズトークだよ?」
勇者「いやいやいや、そんなプライベートな話してたのかよ!」
剣士「アウトー」
勇者「なにがぁ!?」
魔法使い「もうやだー。勇者やだー」
勇者「何、何! 俺そんないけない事したの? だってこの流れだと旅のことについて話してたとかさぁ、思うじゃん! なにこの理不尽ないじめ。今までで一番酷い!」
ガンナー「勇者に変態の気があったのは知ってたが……いやはや、まさかそこまでとは」
勇者「変態の気ってなんだよ、身に覚えがなさすぎる!」
魔法使い「勇者。ダメ、ゼッタイ」
勇者「麻薬扱い!? そ、そんな事いうなら イジメ。ダメ、ゼッタイ だって通すべきだ!」
剣士「……ッハハ」
勇者「剣士なにその乾いた笑い。いつからそっちについたの!」
剣士「いやいや俺はいつだって中立だ」
勇者「保ててねぇよ一対三とか不利すぎる!」
ガンナー「何言ってんだよ。吟遊詩人が戻って来たら一対四だぞ」
勇者「あ、吟遊詩人はそっち側になるの前提なんだ」
ガンナー「さらに僧侶と騎士も来るから一対六になる」
勇者「もうやだぁこのパーティメンバー何ぃ、ドSの巣窟じゃん。お前ら全員血液型S型だろ」
魔法使い「じゃあ勇者はM型なんだね」
勇者「なんで! 俺は今のままでいさせてくれない!? つーか、お前等さっきから俺を変態呼ばわりしてるけどなぁ、ドSだって立派な変態なんだからな!」
剣士「別に変態呼ばわりはしてないだろ」
ガンナー「つぅか、そんな大声で変態とか言うなよ……」
勇者「もォー……何このメンバー……」
ガンナー「まぁ元気だせって」
勇者「落ち込ませたのは他でもないお前等だけどな」
ガンナー「自信持てよ、勇者にだって良いところの一つや二つ……」
勇者「ガンナー……」
ガンナー「ごめん、やっぱないわ」まさに外道!!
勇者「何この人いちいち外道な発言するんだけど! おい保護者!」
剣士「」←保護者
剣士「……」←いつからこんな子になったんだ、という顔。
ガンナー「まぁ勇者が変態であることがハッキリしたところで」
勇者「待てそれは誤解だ」
ガンナー「で、結局吟遊詩人とは何の話してたんだ」
魔法使い「えっとね、旅のことについていろいろと」
勇者「解せぬ」
剣士「さっきまで話してたのにクリエントでの合流については話さなかったのか」
魔法使い「うん。旅のことについて話したって言ったけど、ほとんどサブマラの話しかしてなかったから」
勇者「え?」
魔法使い「吟遊詩人の調べものっていうのが、どうもサブマラのことと関係あるみたいでさ。詳しくはまだ教えてもらってないんだけど」
ガンナー「サブマラに関すること――っていうのは、『あの夜』のことか?」
魔法使い「うん。話せるところまででいいから教えてほしいって」
勇者「なんのために……」
剣士「ここで話してても仕方ねえし、さっさと合流して吟遊詩人本人から詳しい話を聞こうぜ」
勇者「そう、だな」
ガンナー「……」