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48 吟遊詩人「謎の飛行物体?」

勇者「そういえば次って誰と戦うことになるんだ」


ガンナー「知らね」


コツ、


剣士「……ん? 今何か変な音しなかったか?」


魔法使い「え、そう?」


コツン、


カツン、


僧侶「ああ、たしかに聞こえますね。何の音でしょう」


ガンナー「……外か?」


ガチャ、


紫色の変な物体「」フワフワ


勇者「うわーなんだ! なにこれ虫!?」ガタッ


魔法使い「えっ嘘やだ虫!?」ガタッ


僧侶「羽の生えた小さな光を放つふわふわした飛行物体……はて、何かの本で見たような」


勇者「何かって何、思い出して僧ペディア! 虫なのこれ!」


紫の飛行物体「虫とは失礼な! 馬鹿勇者のくせに!」


魔法使い「しゃ、喋ったァー!!」


ガンナー「何処かで聞いたような声」


吟遊詩人「っていうかあの、それ……妖精とか精霊の類――よね?」


勇者「せ、精霊ぃ!?」


剣士「精霊、紫、激しく聞き覚えのある声。なあこれ、もしかしなくても」


ぼふんっ


勇者「ぎゃあ何爆発!?」


アルボル「誇り高き森の精霊を虫呼ばわりするとか本当有り得ないんだけど!」


ガンナー「うわーデコに石がない、略してデコ石!」


アルボル「あのさ本当その呼び方やめて。フラマとビエントにも言われたからそれ」


勇者「え、え、ていうか、えっ、アルボル!? な、なんで石ないのに人間の姿になれるの?」


アルボル「位の高い精霊は人に化けることもできるんだよ知らないの?」ドヤ


魔法使い「精霊に階級とかあるの」


アルボル「羽の数が多いほど階級が高いんだ。大体のは一対か二対だけど僕は三対でしょ。羽根が六枚以上あるやつは人間の姿になれるんだ」フフン


魔法使い「そ、そうなんだ」


ガンナー「ドヤ顔うぜえ。つか何しに来たんだ」


アルボル「ビエントからの伝言だよ。……まったく、なんでこの僕が使い走りのマネゴトなんてしないといけないんだよ」


勇者「伝言?」


アルボル「そ。昨日言うつもりだったのに忘れてたから僕を使ったんだよ。アロネモの宿って聞いてたのに行ってもいなかったからすげえ探し回ったし」


勇者「ああ、あの宿屋にはちょっと、迷惑かけちゃったから、風との戦いの後にそのまま宿泊場所変えたんだよ」


剣士「で、その伝言っていうのは……」


アルボル「次にお前らが戦う刺客のこと。多分、光と闇の刺客――ルスとオスクリダの二人だ」


勇者「え、ふ、二人!?」


アルボル「ルスとオスは双子なんだ。僕は話したことないからよく知らないけど、あの二人がバラバラにお前らと戦うとか考えられないし、多分そう」


剣士「話したことないのか」


アルボル「なんか苦手なんだよねーアイツら。苦手っていうか嫌」


ガンナー「話したことないのにか」


魔法使い「双子――なんだ」


アルボル「そ、話したことない僕でもわかるほど超仲良い双子。光のルスと闇のオスクリダ。……そういやそっちも光と闇は双子じゃん。まあビエントに勝てたんならあのちっこいの二人も大丈夫じゃない? 言っちゃ悪いけどアグアより弱そうだし。まあとにかく全制覇頑張れってことで」


勇者「……なあアルボル」


アルボル「何?」


勇者「お前の仲間――あの、魔王側ってそのルスとオスクリダの二人と、ドロシーとフラマはわかった。でも、ティエラと魔王って――」


アルボル「前も言ったじゃん、僕は何も言わないって。もう魔王側じゃないしあいつらも仲間だと思ってたわけでもないけど、ああほら黙秘権ってやつ? 今回はただの伝言係だし、それに焦らなくても必ず会うことになるんだからあっちが姿を現すまで気長に待てば?」


勇者「それはそうだろうけど……」


アルボル「ああそれとこれもビエントから。ルスとオスは西大陸にいるだろうから、覚悟と準備ができたら西大陸へ行けってさ」


吟遊詩人「西大陸……」


魔法使い「元々は敵だったのになんか、二人とも急に協力的だね……」


アルボル「『元』だからね。僕もビエントもあんたらの味方になったつもりはないけど、もう敵対する理由はないし、だったら同じように、フラマたちに味方する必要だってないはずだろ」


剣士「僧侶、南大陸から西大陸へ行く定期船は」


僧侶「丁度明日出るそうです。それを逃せば二ヶ月待つか、また海賊さんにお願いすることになりますね」


剣士「明日か……」


魔法使い「そもそも海賊さんたちって今何処にいるの?」


ガンナー「あー、アイツさっき西大陸到着したって言ってたぞ。あと二日か三日早かったら乗せてってもらえたのにな」


勇者「ああ……じゃあ、もしかしたら向こうで会うかもしれないな」


僧侶「ばったり出くわす可能性もないとは言い切れませんね」


アルボル「じゃ、言うこと言ったし帰るわ」


勇者「え、帰るって何処に」


アルボル「森の精霊が森に帰らなくて何処に帰るんだよ」


剣士「最近まで魔王の手下だったのに大丈夫なのか」


アルボル「ああ、なんか無理矢理連れて行かれて捕まってたってことになってるから全然平気。そもそも刺客だった時もそんな頻繁に悪さしてたわけじゃないし。森のやつらには僕が刺客だったことはそんなに知れてないの。元々数合わせで入れられた感じだったし。なんていうの、相手がどの程度の力を持っているのかを試す下っ端みたいな役割」


魔法使い「でも、じゃあどうして悪いことしてたの? 人間が嫌いだったわけじゃないんでしょ? 後悔とかはなかったの」


アルボル「んー……なんか、なんだろうなあ。多分それってあの石が原因なんだよ」


勇者「石が……?」


アルボル「そう。お前らの石とは違って、多分、僕らの石には変な呪いみたいなのがかかってんの。石があった時となくなった今とで何か違う気がして、つい最近気付いたんだけど、石があったころは妙に虫の居所が悪かったのに今はそれがないんだ。石があると憎しみとか怒りの感情が必要以上に強くなるっていうか。それだけじゃないのかな、うまく言えないけど、沸点が低くなって怒りっぽくなってさ、強い怒りを抱いたときに、それを持続させる効果もあると思う」


勇者「怒りを持続させる効果……」


アルボル「他のやつらがどうだったのか知らないからあんまり参考にならないだろうけど、刺客になるちょっと前からそうなんだよ。魔王に目を付けられたらそうなるのかなあ、何に対してかわからないイライラを感じるようになったんだ。それである日、イライラして仕様がないから気分転換しようとして人間の姿で散歩してたら魔王が僕の前に現れて、急に額が痛くなったと思って押さえたらそこに石があったんだ。何で僕が目をつけられたのかは知らないけどさ。誰でもよかったのかなあ」


魔法使い「イライラするの? ずっと?」


アルボル「そう。それまではイライラしててもなんかの拍子で笑ったりびっくりしたりすると怒りなんてすぐ消えるし、ちょっと散歩してたらいつの間にかなんともなくなってるし、普通そんなもんでしょ? それに、そもそもイライラすること自体滅多になかったんだけど、あの頃はそうじゃなかったんだよね。ずっと気分悪いの。明確に『刺客』としてフラマたちといたときもそうだった。常に一定以上のイラつきがキープされてるっていうか。放っておくとどんどん不機嫌なのが蓄積されてく感じ。でも何かを壊したりしたらスッとして、少しの間楽になるんだ」


僧侶「何に対してかわからない苛立ち……風さんも同じようなことを言っていましたね」


剣士「もう全て済んだはずなのに、何に対してかわからない憎悪が残った。何故か無性に憎かった――か」


アルボル「……アイツそんなこと言ったの?」


勇者「ああ。それってアルボルと同じような状態に、風もなっていたってことじゃないか」


アルボル「だと思う――けど、僕の場合は憎いっていっても憎悪ってほどじゃなかったな。まあ、そのへんは個人差があるってことか。フラマやティエラたちみたいに大量殺戮とか町や村を破壊するとかド派手なことしなくても、そのへんでゴミ箱蹴っ飛ばしたりチンピラ蹴散らしたりしとけば精神の安定保ててたし。多分、抱いている憎しみに比例して行動が派手になるんじゃない? 僕はあいつらみたいに凄惨な過去があったわけでもなく、森で平和に暮らしてただけだし」


剣士「お前やること地味だな……」


ガンナー「むしろお前がチンピラじゃねえか」


アルボル「そうでもしないと理性保てないんだってば、これは本当。魔王の刺客が暴走したらどうなると思ってんの? 温厚で善良的な僕やビビリなアグアでもフラマたちと同じことやらかすからね。むしろ制御が効かない分アイツらより(たち)悪いんだぜ? ま、別にそれを免罪符にするつもりはないから、僕のことはいくらでも憎んでいいけど」


吟遊詩人「……」


勇者「そ、それが本当なら、魔王の刺客たちって、半ば操られてるようなものなんじゃ――」


アルボル「さあ、そのあたりの判断はお前らに任せるよ」


剣士「力を手に入れる代わりに憎しみを抱かせる……のか」


ガンナー「力と不死身の体――っていうのが適切だと思うぜ。石が無事である限り不老不死に近い体になる。そうだろ?」


アルボル「だろうね。僕の場合は精霊だから元々老いはないんだけど、不死ではないんだ。人間の姿で事故とか事件に巻き込まれて死ぬ奴もいれば、精霊としてまっとうに生きて消滅する奴もいる。でも僕は、どれだけ酷い怪我をしても痛いだけで死ななかった経験はある。ああ勿論、刺客だったときな」


魔法使い「刺客じゃなくなったらそれはなくなるの?」


アルボル「不死身のこと? そうだと思うよ。刺客たちのなかにはアグアみたいに魚だったやつもいれば、僕みたいに精霊だったやつもいる。ビエントみたいに元から人間だったやつだっている。それぞれが『刺客』になった時に与えられた体は、飽くまでも『魔王の刺客』の体であって、元の体ではないんだ。『刺客の体』には力がある。刺客でなくなった今、『刺客』だったときに使えた力が使えなくなったということは、僕らの体『刺客の体』でなくなったということ。元の体に戻ったということだ。重い傷を負えば死ぬだろうし、時間が経てば老いるだろう。ただ、勘違いしないでほしいのは、僕らは力がなくなったのではなくて、ただ元に戻っただけだということ」


アルボル「それじゃ、今度こそ僕は帰るから」ドロンパ


勇者「うわ虫!」


アルボル「殺すぞお前」


ガンナー「お前のその姿いいな移動が楽そうだ。僧侶、虫取り網持ってないか」


僧侶「いえ、それは流石に――ありました」スッ


アルボル「げッ、お、お前絶ッ対僕の森に来るなよ! 来たら追い返すからな!」ピュンッ


勇者「速ッ」


魔法使い「逃げ足速ッ」



挿絵(By みてみん)

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