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3 剣士「勇者の決意」

勇者「よし、全員集まったな」


魔法使い「準備もばっちりだよ」


吟遊詩人「改めて近くで見てみると、王宮って本当に大きいわね」


剣士「国王の待つ部屋まで案内するから。あとは適当に挨拶して黙って話聞いとけばいい」


勇者「う、うわああどうしよう俺緊張してきた……」


魔法使い「ふ、服装とかこれでよかったのかな……」


吟遊詩人「落ち着いて二人とも、大丈夫よ」


勇者「だって普通に暮らしてたら王宮の中なんて入らないよ!?」


ガンナー「声うるせえ」


勇者「ごめん」


剣士「いいからさっさと来いよ。王様を待たせるもんじゃない」


勇者「う、わ、わかってるよ」


魔法使い「緊張するぅ……」


~王宮~


剣士「失礼します」


王様「おお、ようやく戻られたか剣士くん」


魔法使い「(王様っていうからふくよかなのかと思ったら物凄いハンサムだ……)」


勇者「(おお……王様だ。この国のトップが俺たちの目の前にいる……声裏返ったらどうしよう)」


剣士「勇者と共に魔王討伐へ向かう者を連れて参りました」


勇者「お、お初にお目にかかります! ま、魔王討伐のめいを仰せつかっ、つかまつりました! 勇者です!」


魔法使い「お、おお、同じく旅に同行します! 魔法使いです!」


吟遊詩人「同じく、吟遊詩人と申します」


ガンナー「言わずと知れたガンナーでェす」耳ほじ


剣士「お前のそのダイアモンドメンタル、ときどきすげえ羨ましいわ」


王様「ふふ、そう固くなるでない。敬語など外してくれたまえ。いつも友人と会う時と同じ態度で楽にしてくれて構わんよ」


勇者「でも」


ガンナー「まあ最初から敬語使う気ないけど」


勇者「お、おいガンナー失礼だぞ……」


王様「相変わらず君はおもしろい子だな、ガンナーくん。噂は常々聞いておるよ」


魔法使い「噂?」


ガンナー「実家が有名なだけで俺は何もしてないだろうよ」


王様「いいや、君自身の功績や活躍もよく聞くよ。先に君が言った通り、セシリカでは君を知らない者などいないほど」


勇者「ガンナーってそんなにすごい奴だったのか?」


剣士「良くも悪くも有名人だ」


王様「おや、君の名も広く知られておるぞ? 剣士くん。なんせ、君はセシリカの兵士では最年少であったからな」


王様「おっと、話が逸れてしまっているな……私が君たちをここへ読んだのは他でもない。君達に授けるべき物を授けるためだ」


勇者「授けるべき物……?」


王様「ああ。……ところで、旅へ向かうのはこの五人だけなのかね」


勇者「あ、いえ、えっと……僧侶と騎士も誘ってみるつもりです」


王様「では、最終的には七人になるのだな」


勇者「本人たちはまだ何も知らないので、断られるかも……しれませんが」


王様「よい。私からの命令だと伝えてくれ」


勇者「は、はあ」


ガンナー「で、渡す物っていうのは?」


王様「これがなんだかわかるかね」スッ


勇者「え……箱、ですか?」


王様「そう。だが、無論ただの空っぽの箱などではない」パカ、


吟遊詩人「宝石……?」


魔法使い「綺麗……」


王様「赤、青、緑、黄、白、黒、紫。この七つの石を、諸君らに託す」


勇者「えっ、こんな高価そうな物を俺たちに?」


王様「ああ、むしろ、君たちに託すためだけに作られた石だ」


ガンナー「……何の目的があって?」


王様「この石で、君達に宿る力を最大まで引き出す事ができる」


魔法使い「私達の……チカラ?」


王様「君たちには魔王を倒せるだけの才能がある。だが、その力は日々の日常生活に埋もれてしまっている。この石があれば、その埋もれた力を解放することができるのだ」


勇者「で、でも、ガンナーも剣士も並の兵士じゃ比にならないほど強いし、魔法使いだってこのあたりでは一流と言われるほどの魔術師ですよ? それだけじゃ駄目なんですか」


王様「たしかにそうだろう。しかしね、少し武器の扱いが優れているというだけでは魔王を倒すことなどできないのだ。この石にはそれぞれの潜在能力を引き出す役目もあるが、それぞれに眠っている『属性の力』を覚醒させる役目もある」


勇者「ぞ、属性? 俺たちにそんな力があるんですか?」


王様「あるとも。私がこれを授け、君たちがこれを身に着けることによってその力を解放できる。それは、これから始まる旅に必ず役に立つ力だ」


ガンナー「へえ」


王様「まずは、吟遊詩人くん。君は紫の石を授けよう。君には草木を操ることのできる『木』の能力が眠っている。この力は時に仲間を助け、君自身を守ってくれるだろう。彼らの援護を頼んだぞ。案ずることはない、自然はきっと君に味方してくれるだろう」


吟遊詩人「はい」


王様「次に剣士君。君には黄の石を授けよう。属性は『地』だ。大地はこれから君の武器に、時として盾となるだろう。その力で弟であるガンナーくんや他の皆をしっかり守ってくれたまえ」


剣士「わかりました」


王様「ガンナー君。君には緑の石を授けよう。属性は風だ。風の加護を受け、君の弾丸は素早さと威力を増す事になる。何、君ほどの実力者ならばすぐにこの力をものにできる。君のその圧倒的な戦力は、きっと彼らの支えとなるだろう」


ガンナー「……」


王様「魔法使いくん。君には青の石を授けよう。君はたくさんの属性を操る事ができる優秀な魔法使いだ。その中でも強い力をもっているのは『水』の属性のようだ。これからもつらいことがたくさんあるだろう。しかし君なら乗り越えられると信じておるよ」


魔法使い「は、はい」


王様「最後に――勇者くん」


勇者「はい」


王様「君には赤の石を授ける。属性は炎。君がいつも影で努力しているのは他の兵士たちからよく聞いておるよ。君の頑張りに、きっと石は応えてくれるだろう。君はまだ弱いが、それは決して悪いことではない。存分に仲間を頼り、そして頼られなさい。くれぐれも、無理は禁物だ」


勇者「……はい!」


王様「今ここにはいない仲間――僧侶くんと騎士くんの二人と合流することができたら、もう一度ここに来なさい。彼らの石はそのとき授けよう」


~街の外~


勇者「クリエントにはどれくらいで着くかな?」


吟遊詩人「そうねえ……今お昼をすぎたころだから、ずっと歩き続ければ夜には着くと思うけど……初日だし、あまり急ぐのはどうかしら。急な長時間の運動はかえって体を壊すかもしれないわ。特に、魔法使いはまだ怪我が治りきってないんだし、無理は駄目よ」


魔法使い「私は大丈夫だよ。怪我も軽いものばかりだし」


ガンナー「たしか道なりに進んで行けばクリエントまでの間に宿があったはずだ。そこには遅くても夕方には着く。今日はそこで休むか。俺もいきなり長距離を歩きたくねえしよ」


剣士「引きこもってたせいで体力なくなっちまってるからな」


ガンナー「うるせえ」


勇者「じゃあ、あの、俺ちょっと寄りたいところがあるんだけど……」


剣士「寄りたいところ?」


勇者「あ、皆は先に行ってて。俺は後から追いかけるから」


吟遊詩人「何処に行くの? もしかして――」


勇者「……サブマラが今どうなってるのか、どうしても気になるんだ」


魔法使い「勇者……」


ガンナー「勝手にしろ。俺にとってはどうでもいい」


勇者「ありがとう」


魔法使い「勇者、あの……私も行くよ」


勇者「魔法使い? でも、お前は」


魔法使い「いいの。私も連れていって」


勇者「……わかった」


剣士「なら俺たちは先に行く。……あまり長居はするなよ」


魔法使い「うん」


~サブマラ~


魔法使い「……」


勇者「……ひどいな」


魔法使い「建物が、一軒も残ってない……」


勇者「魔法使い、あちこちに火傷があるって言ってたよな?」


魔法使い「う、うん。腕とか脚に、五箇所くらい」


勇者「じゃあ、村が一晩で全部燃えた――ってことか」


魔法使い「……うん」


勇者「あ、ご、ごめん」


魔法使い「……あの、勇者、うまく言えなくて、少し、長くなるかもしれないけど……聞いてくれる? 一昨日の夜のこと」


勇者「え――い、いや、無理しないでいいよ。もっと落ち着いてからでも」


魔法使い「ううん、あのね、昨日一人で泣いて、そのあとゆっくり休んだらちょっとだけ、本当にちょっとだけど、気分がスッキリして、気持ちも落ち着いたんだ。それに、勇者だってこの村の住人だから、ちゃんと……何があったのか、全部聞いてほしいの」


勇者「……」


魔法使い「――一昨日の朝、私はこの村に帰ってきたんだ」



挿絵(By みてみん)

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