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34 魔法使い「鍛冶屋のカイさん」

僧侶「いつもより早めに目が覚めました。どうやら今日も私が一番初めに起きたようで……ん?」


僧侶「……」


僧侶「こ、これは……っ! 剣士さん、剣士さん起きてください」ユサユサ


剣士「うおっ 僧侶……? どうした、こんな早くに……」


僧侶「大変です、剣士さん」


剣士「?」


僧侶「ガンナーが」



僧侶「ガンナーが私たちより先に起きているんです!」



剣士「はっ? な、なんだと!?」ガバッ


ガンナー「騒ぎすぎだろ」


剣士「うわ、まじだ!」


ガンナー「お前ら珍しくテンション高いな……」


剣士「奇跡!!」


僧侶「奇跡!!」


ガンナー「奇跡!!」


ガンナー「違う。なんかノリで便乗したけど違う」


剣士「お前が僧侶よりも早く起きているなんて……明日世界滅ぶんじゃないか」


ガンナー「そこまでか」


僧侶「はあ、残っていた昨日の疲れが吹っ飛びました」


剣士「だな」


ガンナー「それはよかったな」


剣士「それで、どうしたんだガンナー。こんな早起きして」


ガンナー「鍛冶屋の奴は昼間ほとんど家にいないから、アイツが起きる頃に尋ねないと確実に捕まえる事はできない」


剣士「捕まえるって動物か何かかよ。あんまり早くに押しかけても迷惑だろ」


ガンナー「細かいことはいいんだよ」



勇者「眠い」


ガンナー「お前の武器を直しに行くんだぞ」


勇者「わかってるよ」


僧侶「海の近くは風が冷たいですね」


剣士「水場だからな」


魔法使い「霧!」


勇者「そうだなあ。水平線が霞んで見えない」


吟遊詩人「鍛冶屋さんのところにはどれくらいで着くの?」


僧侶「私は彼のご実家にお邪魔した事がありませんので……」


ガンナー「五分ほど歩けばすぐ着く」


勇者「本当に近いな」



魔法使い「それっぽい建物発見」


剣士「ここか?」


ガンナー「そう。……あ、ちょっと待ってろ」


勇者「? うん」


ガチャ


バタン。


勇者「あれ、ちょっ、勝手に入っていいのか……?」



「ぎゃああああああああ!!」



勇者「!?」


魔法使い「えっ」


剣士「?」


僧侶「あー……」


騎士「……」


吟遊詩人「な、何かしら、今の声……」


ガチャ


?「うわわわわっ が、が、ガンナーさん!?」


ガンナー「よぉ、久しぶりだな鍛冶屋」


鍛冶屋「ひいいっごめんなさァい!!」


ガンナー「何で謝ってんだよ」


鍛冶屋「あ、あの、お、おお、お久しぶりですッ!」


ガンナー「おう」


鍛冶屋「わあああガンナーさんだぁ……あれ背ぇ伸びてない」


ガンナー「あ?」ギロ


鍛冶屋「なななんでもないですッ! ごめんなさい!!」


勇者「……あのォ」


鍛冶屋「え?」


魔法使い「顔真っ青」


ガンナー「カイ、あれ勇者な」ユビサシ


鍛冶屋「えっ……えええ!? 『勇者』って……あの勇者様!?」


魔法使い「『様』って(笑い)」


勇者「なんで笑うんだおい」


魔法使い「『勇者様』って(笑)」


勇者「おい」


ガンナー「勇者、これ鍛冶屋な」ポン


鍛冶屋「ヒッ」ビクッ


勇者「めっちゃビビってますけど」


剣士「尋常じゃない怯え方だな」


僧侶「いつもの事ですよ。お久しぶりです、鍛冶屋さん」


鍛冶屋「あ、僧侶君に騎士ちゃん久しぶりー」ニコー


騎士「……」


勇者「えええええ」


鍛冶屋「あの、ガンナーさん。今日はその……どういったご用件で?」


ガンナー「用がなきゃ来ちゃいけないのか?」


鍛冶屋「い、いいいいえ! そんなッ滅相もない!! 是非ッいつでもいらしてください!」


勇者「ガンナーと鍛冶屋さんの関係って一体……この人普通に見てガンナーより年上だよな?」


ガンナー「海賊の……一個下だったか? 二個下だったか」


鍛冶屋「同い年ですよう……」


勇者「なんか知り合いとか友達っていうより、なんていうか、もっと恐ろしい……上下関係的なものが、権力的な何かが働いているような」


ガンナー「そんな事ねえよ友達だよ。なあ鍛冶屋」ポン


鍛冶屋「ヒッ……こ、光栄です、はい……」カオヒキツリ


勇者「絶対違う」


剣士「友情なんて微塵も感じられない」


魔法使い「それ友達違う」


ガンナー「こいつおもしれえ」


吟遊詩人「しかもわざとなのね」


僧侶「鍛冶屋さん。私たちは別に、何も用がないのに立ち寄ったわけではないのです」


鍛冶屋「?」


僧侶「一つ、頼み事がありまして……」


~・・・~


鍛冶屋「ううん、これは……そもそも素材があんまり良い物じゃないッスね。結構古い物みたいですし、ぶっちゃけ旅には不向きです。勇者様、この剣を買ったとき、とにかく軽さと安さで選んだでしょう?」マジマジ


勇者「まあ……結構古いです。子供の小遣いで買える程度の安物だし、確かに軽いからって理由で選んで、手に馴染んだ物だからってずっと使い続けてました」


鍛冶屋「あー駄目ッスよそれじゃあ。今まで保ったのが奇跡みたいなモンですね……っていうか勇者様なんで敬語なんスか」


勇者「いや、一応鍛冶屋さんの方が年上ですし『様』とかつけなくていいですし」


鍛冶屋「いえいえそんな。タメ口でいいッスよ、全然。俺は慣れてるんで」


勇者「はあ、あの……ところでそれ、直ります?」


鍛冶屋「折れた部分を引っ付けることは簡単ですよ。ただ、修理っていっても寿命を先延ばしにするだけで性能があがるわけじゃないですし、あげるのも難しいッス。元々武器としての性能がよくない物なんで。これまでもそう思うことありませんでした? 研いだような痕はありますけど、切れ味が悪かったり、修行してもあまりその成果が見えなかったり」


勇者「心当たりがありすぎる」


鍛冶屋「まあでも、この性能の武器にしては長寿なほうですね、持ち主の扱い方がよかったんでしょうね。これまで保ったんですから大往生ッスよ」


ガンナー「で、どうすんの勇者」


勇者「や、この際新しいのに買い換えるしかないんじゃないか?」


ガンナー「だからここから武器屋は遠いっつの」


鍛冶屋「あの、俺が新しい剣を打ちますよ。ガンナーさんも元々そのつもりで来たんでしょう?」


ガンナー「話が早いな」


勇者「で、でもいいんですか?」


鍛冶屋「いいも何もそれが仕事ッスから。……本当は海賊さんとこの武器修理の仕事もあるんですけどね」


勇者「そっち優先してください!」


鍛冶屋「いえいえ、大丈夫ッスよ。あの人からの仕事ならちょっとくらい――」


ギィ……


「カァーイくぅーん。俺様の名前を呼んだかなァ?」


剣士「あ」


鍛冶屋「あ……」


海賊「よォ、鍛冶屋のカイくん? いやァ、数日ぶりだなァ?」


勇者「海賊さん!?」


鍛冶屋「ぎゃあああっ」


海賊「で? 俺からの仕事ならちょっとくらい――何なのかなァ?」


鍛冶屋「な、な、なんでもありません! はい! すぐやります!」


ガンナー「あれ、お前どっか行ったんじゃなかったの」


海賊「別の大陸に行こうと思ってたんだけどなァ。ちょっとその辺でズバズバ色々斬ってたら、武器壊れちまってよ。他の奴のもいくつか壊れたのあったからコイツに修理頼んだわけだ」


鍛冶屋「海賊さんたちは武器の扱いが……すごく……ワイルドなんですよう」


勇者「めちゃくちゃ言葉選んだ」


ガンナー「つまり武器の扱いが雑だと。乱暴だと。もっと丁寧に扱えと」


海賊「はァー? 剣なんて振ってなんぼ、斬ってなんぼだろ。魔物だの何だのを斬るためにある物をどう丁寧に扱うんだよ」


鍛冶屋「斬ろうとした魔物が硬かった時、技術(テクニック)とかじゃなくって力づくでぶった斬るでしょう」


勇者「イメージぴったり」


海賊「あ?」


勇者「いえ」


吟遊詩人「あの、頼んでからそんなに時間がたっているんですか?」


海賊「なんでそう思う?」


吟遊詩人「待ちきれなくって、わざわざここまで来たんじゃ……」


海賊「や、久しぶりにいじめたくなったから来た」


勇者「ろくでもない理由!」



挿絵(By みてみん)

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