31 僧侶「緊張感ないですね」
魔法使い「僕はもう疲れたよ……なんだかとっても眠いんだ……」
剣士「笑い疲れたのか」
吟遊詩人「愛犬と一緒に天に召されそうな雰囲気ね」
ガンナー「死因が『笑いすぎ』ってなんか嫌だな」
剣士「『なんか嫌』っていうか絶対嫌だな」
僧侶「とりあえず、勇者さんが目を覚ます前に落としておきましょうか」
剣士「そうだな」
ガンナー「勇者の反応が一番の楽しみだったというのに」
僧侶「鬼畜ですね」
ガンナー「違いますね」
~・・・~
勇者「ついに明日が決闘の日なわけですが」
ガンナー「そういやそうだった」
勇者「規制はまだ解けないんだよな……?」
ガンナー「何度聞いても同じだぞ」
魔法使い「ガンナーがいないんじゃちょっと厳しいかもね」
勇者「まだ剣士がいるからなんとかなるさ」
魔法使い「勇者は頼りないもんね」
勇者「…………まあな。って、そういえば吟遊詩人はどうしたんだ?」
僧侶「騎士もいませんね」
剣士「二人は今飯作ってるぞ」
魔法使い「ところで明日のメンバーは?」
ガンナー「吟遊詩人と勇者、剣士と僧侶まではなんとなく決まってる。最後の一人を騎士にするか魔法使いにするかがまだはっきりしてない」
魔法使い「騎士は今回出なかったら二連休だね」
勇者「連休の意味違うけどな」
魔法使い「じゃあ私は留守番してるよ」
剣士「わかった。ガンナー、騎士に伝えておいてくれ」
~・・・~
剣士「職業規制か……」
勇者「俺職業規制の事つい最近知ったよ」
剣士「……やばいな」
勇者「な、なんだその出来の悪い息子を見るような目は」
剣士「お前みたいな子を育てた覚えはない」
勇者「俺だって育てられた覚えないよ」
剣士「そういえば、ガンナーはこれで規制二度目だな」
ガンナー「あー」
勇者「えっそうなのか?」
ガンナー「そういう剣士も一度掛かった事あるよな」
剣士「あー」
勇者「剣士も? どうしてそんな事になったんだ。何か大変な出来事でもあったとか?」
剣士「それはな……」
ガンナー「……なんだっけか」
剣士「……なんだったかなあ」
勇者「お前ら見てると時々本気で『ああ兄弟なんだな』って感じるよ」
剣士「まあ兄弟だしな」
ガンナー「思い出せないって事はそんな大した事情でもなかったんだろうよ」
剣士「思い出せないんならしょうがない。多分、規制があるって知らなかった頃にふざけててかかったんだろ」
勇者「信じられないだろ? 刺客との決闘を控えた前日のやりとりなんだぜ、これが……」
ガンナー「手紙のあぶり出しで超テンションあがってた奴に言われたくないよな」
剣士「アグアの時か」
勇者「びっくりはしたけどテンションはあがってねぇよ」
ガンナー「正直前回のほうが緊張感あったよな」
勇者「まあそりゃお互い接触も少なかったし初戦だったからなあ」
ガチャ
魔法使い「あれ、三人だけ?」
剣士「他のやつは多分外にいるんじゃないのか」
魔法使い「そっかー」
吟遊詩人「何の話してたの?」
ガンナー「話っていうか、勇者が猥談を始めようとしてたから二人で聞き流すか止めるか悩んでたところ」
勇者「おい違うだろ」
吟遊詩人「……勇者も男の子なんだしそういう話がしたくなる時もあるわよ。聞き流してあげて」
勇者「吟遊詩人は誤解したまま俺に優しさをくれるからいつもいつも胸が痛いよ。嬉しさのあまり死んでしまいそうだよ」
魔法使い「わいだんってなーに?」
ガンナー「つまり勇者が何かいかがわしい話をしようとしたって事だ」
魔法使い「……いや、別に悪いことってわけじゃないからさ、同性同士の前でならそういうね? いいんだよ? でも勇者、間違っても女の子の前ではしないようにね?」
勇者「してないから!! してないし、しないから!!」
ガンナー「それは女の前ではしないって意味か。まじか。剣士この先俺たち勇者にすげえセクハラされる事になるぜ。いやパワハラか?」
勇者「それ違うだろ、そういうんじゃないだろ! っていうかしないから!」
ガンナー「同年代の男友達にしろよ。俺年下で剣士は年上だぞ。後輩いじめか勇者」
勇者「先輩いじめかガンナー」
ガンナー「だって勇者さぁー、何カップが好きかとか普通に聞いてくるしさぁーセクハラじゃんそんなの。相手が男だからってさー」
勇者「もうガンナーさぁー身に覚えのない嘘普通に吐いてくるしさぁーいじめじゃんこんなの。相手年上なの絶対忘れてるだろ……」
勇者「っていうか俺本当。本当しないしする気もないから。そういう話とか正直苦手な方だからやめて本当」
ガンナー「それは嘘だろ」
勇者「いや本当だから」
ガンナー「いや勇者だしそれはないだろ」
勇者「なんだその判断基準」
魔法使い「逆にガンナーは好きなの?」
ガンナー「嫌いではないけど好きってわけじゃない。周りがそういう話始めたらまあたしなむ程度には」
剣士「たしなむ程度ってなんだよ」
ガンナー「具体的な話ができるわけではないが聞き手でいる事はできる。ちなみに剣士はそういうのには一切ノってこない」
魔法使い「まあガンナーと剣士はなんか、いやらしさがないからね。別にね」
勇者「えっ何それ俺にはいやらしさがあるって事?」
魔法使い「や、そういうわけじゃないけど……」ボソボソ
勇者「声ちっさ!」
吟遊詩人「ゆ、勇者が普通なのよ。むしろ勇者は平均より低い所にいるけれど、二人がその下のマイナスの位置にいるから……」
勇者「フォローありがとう吟遊詩人」
吟遊詩人「……周りが特殊すぎるせいで勇者が目立ってるのね」
ガンナー「僧侶の前で女の胸のサイズの話とかしてみ。ビンタされるぜ」
剣士「えっ」
勇者「えっ」
魔法使い「なにそれこわい」
ガンナー「俺の友人が前に僧侶と一緒にいる時女とすれ違って『今の女の人胸でかくね?』って言ったら無表情の本気ビンタが飛んできたって言ってた」
勇者「僧侶の無表情の本気ビンタとかこええ」
ガンナー「その後超低くて冷たい声で『破廉恥です』って言われたらしい。それ以来友人は僧侶に頭が上がらないそうな」
吟遊詩人「素直に怖いわ」
魔法使い「僧侶って元々声低いのにもっと低くなるの?」
ガンナー「(まあその時すれ違った女ってのは吟遊詩人だったらしいけどな)」
勇者「っていうか本当に戦いの前日にこんな話してていいのか」
ガンナー「『こんな話』をやめたところで何かするわけでもないんだしいいんじゃねえの」
剣士「何もしないのは多分お前だけだぞ」
ガンナー「だって何かしても意味ないし」
剣士「まあそうだが」
魔法使い「ガンナーは明日戦わないんだったね」
ガンナー「おう、勇者を頼んだぞ。俺の代わりにアレしてやってくれ」
勇者「アレするってなんだよ」
ガンナー「俺の代わりに勇者を守ってやってくれ」
勇者「お前に守られた覚えはない」
ガンナー「お前を守った覚えもない」
勇者「おい」
魔法使い「勇者頼りないから誰かが守ってあげないとね」
勇者「それ女が男に向かって言うセリフじゃないだろ」
魔法使い「確かに女の子は誰でもこういう言葉を言われてみたいって思ってるだろうけど、きっと誰も言ってくれないからね」
吟遊詩人「でも、一度くらいは言われてみたいわよね」
魔法使い「ねー」
ガンナー「言ってやれよ勇者。『魔法使いは俺が守る』とか『命に代えてもお前を守る』とか恥ずかしいセリフ言ってやれよ」
勇者「い、言わないよ」
ガンナー「魔法使いがどうなってもいいのか!」
魔法使い「勇者タスケテー」
勇者「どこの悪役だお前は!」
剣士「何の茶番だこれは」