27 勇者「ガンナーって必殺技とかないのか?」
~イエルタ~
勇者「ここがイエルタかあ」
魔法使い「落ち着いた雰囲気の町だね」
剣士「あっちに見えるのがゼムの森か」
吟遊詩人「ええ。そうよ」
ガンナー「後で周辺の探索に行くか」
剣士「そうだな」
僧侶「皆さんお疲れでしょうし、ひとまず宿へ向かいましょう」
勇者「港町から結構歩いたもんな、そうしよう」
騎士「空腹」
ガンナー「俺も腹減った」
剣士「お前ら燃費悪すぎるだろ」
~宿~
勇者「ガンナーって必殺技とかないのか?」
ガンナー「必殺技? ……ああ、あるぞ」
勇者「へー、どんな?」
ガンナー「今見せるから動くなよ」
勇者「?」
ガンナー「」勇者の頭を手でガッ
勇者「!?」バタッ
勇者「何!? 何すんの!」
ガンナー「ヘッドショット」
勇者「それヘッドショット違う!!」
魔法使い「え、何今の」
ガンナー「見てたか」
魔法使い「ガンナーが勇者の頭を手でガッてするとこだけ」
剣士「今凄い音したけどどうしたんだ?」
ガンナー「いや、なんか勇者が一人で転んだ」
勇者「違うだろ」
剣士「勇者……元気があるのはいい事だが、怪我するなよ?」
勇者「信じないでよ! 何してたら独りでに転ぶの!?」
ガンナー「部屋の中走り回ってたらそのうち靴紐も解けてくるだろ」
勇者「ブーツじゃん」
魔法使い「靴紐踏んで転ぶって一番恥ずかしい転び方だね」
ガンナー「自分の足に足引っ掛けて転ぶのも恥ずかしいな」
魔法使い「……」
魔法使い「勇者、どっちもなった事あるね!」
勇者「今それ暴露しないでよ」
ガンナー「見える、ド派手に転んで泣き叫ぶ勇者の姿が見える」
勇者「見えなくていい」
魔法使い「なんか僧侶ってあんまり転んで怪我とかならなさそうだね」
ガンナー「いやそんな事ないぞ、昔はばったばったこけてた」
勇者「マジで?」
ガンナー「まあ足ひっかけたらほぼ確実に転んでたわ」
勇者「ひでぇ……」
ガンナー「今は足ひっかけるだけじゃ転ばないけど……足引っ掛けてよろめいて、体勢立て直したと思ったら床に置いてある物に躓いて転んでる」
ガンナー「あ、そういえば昔走ってる僧侶の足を引っ掛けたら超ド派手にすっ転んだ事あるぞ。ずべしゃーって」
勇者「僧侶……」
魔法使い「僧侶って見てて面白いよね」
勇者「ガンナーは昔どうだったんだ? 怪我しまくったりとかは……」
剣士「いや、こいつ転んだ時は華麗に受身を取ってダメージを回避してた」
勇者「何者だよ」
ガンナー「そういう剣士は子供の時家の中で俺の足を引っ掛けて転ばせようとして、結局自分が転んでドアノブに顔面ぶつけて鼻血出した事あるよな」
剣士「そんな事もあったな……」
勇者「痛そう――っていうか剣士何してるんだよ……」
剣士「いや、あの頃は毎日のように嫌がらせにあっていたからその仕返しとして転ばせてやろうとしたんだが――」
魔法使い「見事に返り討ちにあったと」
ガンナー「あの時の事は一生忘れないわ」
剣士「忘れていいぞ。っていうか思い出させるなよ、あれめちゃくちゃ痛かったんだぜ?」
勇者「っていうか嫌がらせ……?」
ガンナー「俺幼い頃は剣士の事嫌いだったし」
勇者「えっお前こんな良い兄ちゃん持っといてそれを嫌うとか……俺も弟とかほしかったなぁ」
魔法使い「吟遊詩人みたいなお姉ちゃんがほしかった」
ガンナー「そうか、俺は僧侶みたいな弟が欲しかったぞ」
剣士「悪いな兄貴で」
~・・・~
ガチャ
剣士「……ん? 勇者はどうした?」
魔法使い「勇者ならすることないからって外で素振りしてるよ」
吟遊詩人「何か用でもあったの?」
剣士「いや、特にない」
ガンナー「さっき勇者が自分の頭にこん棒ぶつけて騒いでたけど」
魔法使い「……」
剣士「……」
吟遊詩人「えーっと……」
魔法使い「見える、手からすっぽ抜けたこん棒が頭に当たって悶える勇者が見える……」
剣士「安易に想像できた」
ガンナー「あと僧侶が階段から転げ落ちてた」
吟遊詩人「えっ」
魔法使い「えっ」
剣士「……何があったんだ?」
ガンナー「床に落とした本を屈んで拾って、その時服の裾踏んでたのに気付かず立ち上がろうとしてガッ」
魔法使い「痛そう」
ガチャ
僧侶「いたた――おや、皆さんお集まりで」
魔法使い「あ、僧侶大丈夫ー?」
剣士「階段から落ちたんだってな」
僧侶「ああ見られていましたか……お恥ずかしい限りです」
剣士「怪我はなかったか?」
僧侶「はい、平気です」
ガンナー「お前は昔から変なときにぼんやりするからな。気をつけろよ」
僧侶「はい」
ガンナー「これが勇者だったら爆笑されてるんだろうな」
ガチャ
勇者「いってて……あれ、皆集まってどうしたんだ?」
魔法使い「あ、聞いたよ勇者。素振り中に自分の頭にこん棒ぶつけたんだって?」
勇者「えっなんで知ってんの!?」
魔法使い「あはは、ドジだねー」ハハハ
ガンナー「お前には注意力が足りない」
剣士「もっと気を引き締めろよ」
勇者「ええええ」
勇者「僧侶! 僧侶助けて!」
僧侶「」いまいち話についていけてない
僧侶「申し訳ありません」
勇者「うわあああ」
ガンナー「見捨てられた。勇者、今僧侶に見捨てられた」
僧侶「み、見捨ててなんていませんよ」
勇者「僧侶に――見捨てられた……?」ガーン
僧侶「そんな事ないですよ勇者さん、大丈夫です」
魔法使い「物凄いダメージ受けてる」
ガンナー「勇者のMPがもう底を尽きかけている」
剣士「そんな大ダメージ食らったのか今の」
勇者「くそおおおお!」ダッ
魔法使い「あっ勇者どこ行くの」
剣士「夕飯までには戻ってこいよー」
吟遊詩人「元気ね」
僧侶「勇者さんのこと見捨ててませんからー!」
ドダダダダ 「ぎゃああー!」「おいおい兄ちゃん大丈夫か?」「階段の傍は滑りやすいぞー」
剣士「あ、今あいつ階段から落ちたな」
魔法使い「うん、今の音はそうだね」
吟遊詩人「見知らぬ人々に心配されているわね」
ガンナー「僧侶の二の舞だな、あのデジャヴ男」