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25 魔法使い「ようやく南大陸だね」

~南大陸・港町~


魔法使い「ついたぁー!」ノビー


アルボル「げっ」


勇者「!?」


ガンナー「おお、デコストーン」


アルボル「アルボルだ。デコストーンって何」


ガンナー「じゃあデコ石?」


アルボル「違う」


魔法使い「おでこに石埋まってる……」


剣士「魔王の刺客がこんな所でのんびり買い食い……」


アルボル「別にいいだろ? 僕の勝手だし」モグモグ


ガンナー「風は一緒じゃないのか」


アルボル「あー、アイツならその辺ふらふら歩いてるよ」


勇者「なにこの二人の会話。友達?」


アルボル「戦いには万全の状態で挑んでくれないとなんか僕が物足りないから、しっかり休んでおいてね」


勇者「あ、はい」


アルボル「じゃあ」バイバイ


~宿~


ガンナー「そういえば俺この前職業の枠超えたよな」


勇者「え? あ、海での……」


ガンナー「あれのせいで行動に規制かけられてるから、もうしばらく戦えないぞ俺」


勇者「えっ」


ガンナー「枠超えて五分以上の時間が経過したら職業規制がかかって動きが制限されるんだ、知らなかったのか?」


勇者「剣以外の武器はあんまり触った事ないからそんな事知らなかった……」


ガンナー「ちなみに職業規制が解けるのは七日後くらいだな、多分」


勇者「……どうするんだよ」


ガンナー「俺にばかり頼るなって事だ」


勇者「ううん……これ以上言っても仕方ないよなぁ……」


剣士「ああ、そういえばガンナー」


ガンナー「あん?」


剣士「海賊に会う前の日、お前結局何処行ってたんだ?」


魔法使い「そういえばアバウトな答えしか訊いてなかったね」


ガンナー「何処、って言われてもなあ――外としか云い様がない」


剣士「じゃあ何してたんだ?」


ガンナー「風と話してた」


勇者「えっ」


魔法使い「えっ」


ガンナー「散歩してたら偶然。んで、なんか……聞いてきた」


剣士「何を?」


ガンナー「残りの刺客の名前とか」


勇者「へえ……え? まだ教えてくれたのか?」


ガンナー「名前だけなら知られても問題ないと思うからって」


勇者「あの人ある意味すげえ」


魔法使い「それで、残りの刺客っていうのは?」


ガンナー「もうほとんど全員教えたけど、あとは『ルス』とか『オスクリダ』とかいうのがいるらしい」


勇者「へー」


剣士「……ん? おい」


魔法使い「どうしたの剣士」


剣士「それだと数が合わないぞ」


魔法使い「フラマ、風、アグア、アルボル、ドロシー、ルス、オスクリダ、ティエラ――あれっ、八人?」


剣士「いや、アルボルが『ビエント』って名前も出していたから九人だ」


騎士「多い」


ガンナー「そこに魔王加えたら十人になる」


勇者「魔王を『人』で数えていいのか微妙だけど――え、十人!? 刺客と魔王と、あと二人……?」


魔法使い「あ、むしろ今名前を挙げた九人の中のどれかが魔王の名前とか?」


吟遊詩人「まだ会っていないのは、ルス、オスクリダ、ティエラ、ビエントの四人。その可能性もないわけじゃないわね」


剣士「……そう、だな」


勇者「魔王と側近とか?」


ガンナー「魔王側ややこしいな」


僧侶「ややこしいです」


騎士「複雑」


剣士「まったくだ。今度風に会ったらもう少し詳しいこと聞いてきてくれ」


ガンナー「……まあとりあえず全員倒ぜば済む話だよな」


勇者「その考えが出来るのはガンナーだからこそだな」


魔法使い「ガンナー脳……」


剣士「ガンナー脳ってなんだよ」


ガンナー「たとえ属性的に相性が悪くても、レベル差でなんとかなるんだよ」


勇者「ゴリ押しだな。お前なら本当になんとかなりそうで怖いよ」


ガンナー「褒めても何もでないぞ」


勇者「褒めてないよ」


ガンナー「まあ刺客の話はどうでもいいとして」


勇者「どうでもいいのか」


ガンナー「そんな事より腹がへった」


剣士「言われてみればもう昼時だな――何か作るか」


魔法使い「そうだね、私もお腹すいてきちゃった」


騎士「ご飯」


僧侶「お手伝いします」


剣士「おう、頼む」


~・・・~


勇者「剣士ってなんで料理うまいんだ?」


剣士「なんで、って言われても」


勇者「何? ガンナーみたいに生まれ持った才能とか?」


剣士「あいつのアレは才能じゃなくてチートだ。元々は俺も料理下手だったんだぞ」


勇者「本当?」


剣士「俺の料理を食う相手なんてアイツくらいだし、別に俺個人としては料理なんてうまくても下手でもどっちでもよかったんだけどな」


勇者「そっか、二人暮しだったんだっけか」


剣士「まあ、それまでは普通に家族全員が一緒の家で住んでたんだ。それで、俺が家を出る時ガンナーもついてきた」


剣士「あの家を出て初めて知ったけど、ガンナーって結構味にうるさいんだぜ」


勇者「へえ……大変だな」


剣士「とりあえずアイツが文句言わない程度にまではうまくなろうと思ったんだが中々厳しい。何年か料理の勉強もしたさ、『剣士』なのにな」


勇者「たった三年で習得できるっていうのも凄い気がするけど」


剣士「それからはもう慣れというか……今ではほとんど感覚で作ってるから材料の詳しい分量を訊かれた時困る」


勇者「慣れ……? 感覚……?」


僧侶「それこそ、先ほど勇者さんが申された『生まれ持った才能』と言う奴ではありませんか?」


勇者「そ、そうかぁ……うーん」


剣士「どうした」


勇者「剣士とガンナーって似てるのか似てないのかわからないな」


剣士「似ててもあんまりうれしくないぞ」


僧侶「ですが、これくらいが丁度いいのではありませんか? これ以上剣士さんがガンナーに似てしまったら――恐ろしいことです」


勇者「……想像したくないな」


剣士「想像しなくていいぞ。っていうか逆だろって」


勇者「もうガンナーが剣士に似ても剣士がガンナーに似ても、どちらにせよ恐ろしい」


剣士「俺に似ているガンナー? ……それは――嫌、だな」


僧侶「恐ろしいです」


剣士「恐ろしいな」


ガンナー「なんで俺そんな怖がられてんの?」


~・・・~


剣士「……」


――……ヒュンッ


剣士「!!」バッ


剣士「なんだ――矢文?」カサ……



剣士「勇者」


勇者「おお剣士――って何その矢、刺すの?」ジリ……


剣士「刺さないし、その発想は何処から来たんだ」


勇者「いや……うん、それ何?」


剣士「矢文だ。さっき飛んできた」


勇者「怪我してない?」


剣士「ああ、避けた」


勇者「そっか。手紙、誰から?」


剣士「明らかに頭狙ってたし、アルボルからだと思っていいんじゃないか?」


勇者「中は見てないの?」


剣士「いや、端っこに小さく『吟遊詩人へ』って書いてあるし……」


勇者「あ、本当だ」




手紙「アルボルだけどフラマが書けってうるさいから手紙書くことにしたよ。

のんびりしたいのになあ、こっちは。もう少し休ませてくれてもいいじゃん。

バカみたいにすぐキレるんだよねアイツ。

カルシウム不足なんじゃないの? 超短気。

しかも言うこときかないとすぐ暴力にうったえてくるし。

ねちねち文句言っててもしょうがないけどね。

四日後の午後一時にゼムの森で待ってるからちゃんと来いよ」


勇者「……前回のアグアちゃんが送ってきたあの無駄のない手紙とはえらい違いだな」


剣士「まあ書き手が違うからな」


魔法使い「九割方愚痴だし、もはや最後の一行がオマケみたいだよ」


吟遊詩人「それで時間はまた一時なのね」


ガンナー「それよりこの手紙にデコ石からフラマへの並々ならぬ怒りを感じる」


魔法使い「え?」


剣士「(『デコ石』はもう呼び方それで固定なのか)」


ガンナー「行の頭を縦に読んでみ」


勇者「……あ」


ガンナー「『あのバカしねよ』」


魔法使い「本文もほとんど悪口なのに更に酷い暴言かくしてる……自然とこんな文章作るアルボルくん凄いね」


剣士「この短時間でそれに気付けるガンナーもすげえよ」


勇者「二人の間に何があったんだろうな」


僧侶「何か揉め事があったのでしょう。もしくははじめからウマが合わない相手だったのでは」


吟遊詩人「この手紙のためにわざわざ四日後にしたのかしら……」


勇者「この『ゼムの森』って? 場所はどのあたりなんだ?」


吟遊詩人「ここから少し西に行ったところにある森よ。『イエルタ』って町の近くね」


勇者「じゃあそのイエルタに移動しようか」


魔法使い「でも森って言っても広いんじゃない? 具体的に何処に来いとか、どこかに書いてない?」


勇者「いや、とくには……」


剣士「――ん? 勇者、ちょっとそれ貸してみろ」


勇者「あ、うん」


魔法使い「どうかした?」


剣士「いや、ここに何か書いて消した跡が――えんぴつ」


僧侶「どうぞ」スッ


剣士「芯を横向きにして……」サラサラ


勇者「あ」


僧侶「地図を描いた後消したのでしょうね。上から薄く塗れば何が描いてあったのか分かります」


勇者「……この大きい不恰好な外側の丸は森――か?」


剣士「だろうな。ここに森って書いてる」


ガンナー「絵下手だなコイツ」


勇者「森の東側に矢印書いて『このへん』って――アバウトだな。今回は剣士が気付いたけど、これ最悪の場合気付かないぞ」


剣士「文章の縦読みといい、隠し地図といい、どんだけ暇してるんだよ……」


ガンナー「遊び心だろ」


魔法使い「アグアちゃんの時はあぶり出しだったね」


勇者「よくこんな細工思いつくよな」


吟遊詩人「次はどんな手紙かしらね」


勇者「アルボルの次戦うのって風だろ? こういうのしてくるかなあ。そういうのするタイプには見えないんだけど」


魔法使い「あのフラマとドロシーって子もやらなさそうだよね」


剣士「また一行だけの無駄のない手紙がきそうだ」


ガンナー「むしろフラマが地図の隠し方とか提案してたりして」



挿絵(By みてみん)

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