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23 僧侶「お約束というやつですね」

勇者「海賊船の中超広い……ガンナーの家みたいに広い……」


魔法使い「迷いそうだから出歩かない事にするよ」あはは


勇者「それが一番だな」


ガチャ


剣士「……」フラフラ


勇者「お、剣士……剣士、顔色悪いぞ? 船酔いか?」


剣士「いや、今ちょっと話しかけないでくれ……」


勇者「? おう……」


ガンナー「剣士酒くせえ」


剣士「無理矢理飲まされた……頭痛ぇ」ズキズキ


勇者「だ、大丈夫か?」


剣士「吐く段階に至る前に他の船員が助けてくれたからまだ平気だ」


魔法使い「ベッド使う?」


ガンナー「ハンモックにするか?」


剣士「……ハンモックだと絶対にガンナーが揺らしに来るからベッドで横になってる」


ガンナー「チッ」


勇者「舌打ちすんなよ」


魔法使い「年長者も大変だね」


グラ……


ガンナー「お?」


勇者「……ん? 今なんか揺れ……」


ドオォォォン!!


グラグラグラ


勇者「おわっ!?」ドタッ


剣士「!」


ガンナー「何かにぶつかったのか?」


魔法使い「揺れてる揺れてるー!」


ドオォォォォン!!


グラグラ……


……


勇者「お、おさまった……?」


魔法使い「行ってみよう」


ドタドタ


~甲板~


ざわざわ……


勇者「海賊さん! 何があったんです?」


海賊「……何かが船にぶつかったみてぇだな」


ドオォォォォン!!


勇者「!!」ヨロ


船員C「勇者! 掴まれ!」ガシッ


ガンナー「……岩、とかじゃなさそうだな。これは――」


水面が突然持ち上がったかと思うと水飛沫が舞った。


ザバアアアン!


魔法使い「なっ何?」


ドスン!


巨大イカ「」デデーン


吟遊詩人「あれは……」


ガンナー「でけー、夕飯決定だな」


海賊「……食う気になんねぇっつの」


勇者「剣士、フラフラしてるけど大丈夫か?」


剣士「……立ってる感覚がしないな」


船員E「ここはウチのお頭に任せて、アンタは戻ってな」


船員D「いやお前のせいだろ……」


僧侶「掴まってください、剣士さん」


剣士「悪いな」


船員C「手伝いやすぜ」



ブンッ


巨大イカのモンスターが暴れだし、その巨大な腕を振るった。


海賊「おっと」ヒョイッ


ガンナー「結構ギリギリじゃねえのか? 赤魚」


海賊「何言ってんだ、余裕だし。つか赤魚じゃねぇ」


ガンナー「じゃあ赤身」


海賊「変わってねぇだろチビ」


ガンナー「だって赤魚じゃん」


海賊「はァ?」


ガンナー「あァ?」


勇者「海賊さん、大丈夫ですか!」


魔法使い「手伝うよー」


海賊「すっこんでろガキども」ギロ


勇者「えっ」


海賊「なあ、ガンナーくんよ? どうだ、ここでひとつ勝負しねぇか? ルールは簡単だ。あのデカブツを先に倒した方が勝ち。もちろん怪我したらその分減点だ」


ガンナー「面白い。相手してやらない事もない」


海賊「……貸してやる。お互い武器はそれだけだ」ポイッ


ガンナー「」パシッ


ガンナー「俺が勝ったら報酬は無しな」


海賊「なら俺が勝ったらお前靴舐めろよ」


勇者「ちょ、ガンナーは銃使いですよ!? 銃使いに剣なんて筋違いもいいところ――」


ガンナー「上等じゃねぇか。海の賊ごときが俺に勝てると思うなよ?」


勇者「えっ」


海賊「……」


ガンナー「……」


それからは時間がたつのが異様に早く感じた。


モンスターは雄叫びをあげながらその長い腕を二本、勢いよく振り下ろしたが、二人はその攻撃を素早く避けると剣を抜き、巨大イカの腕をほぼ同時に切断した。


巨大イカが絶叫をあげ、残り八本の腕をめちゃくちゃに振り回した。二人はイカの動きを読んでいるかのようにそれらを避ける。巨大な敵の攻撃は一度も二人に当たらなかった。


また二本、イカの腕が切断され、立て続けにもう二本の腕が二人によって切り取られた。徐々にダルマになっていく巨大イカを、避難していた船員たちはただ茫然と見つめている。


海賊は別の腕の上を駆け上がり、ガンナーはそのまま正面から巨大イカに向かって走り、それぞれその海のモンスターを切り刻んだ。


巨大イカはもがき、叫びながら残った腕を振り回して暴れたが、二人の猛攻がそれで怯むはずもなかった。


二人が同時に斬撃を繰り出す。


断末魔が海に響いた。


あまりにもあっさり終わってしまったように思えたのはおそらく――いや、確実に、この二人が強すぎたからだ。


ガンナーは動かなくなり、霧のように消えた巨大イカを前に、一度剣についた血を振り落とすとその刃を鞘に納めた。


ガンナーに背を向けて同じく剣を納める海賊。


勇者たちはただ呆然とその様子を見ていることしかできなかった。


二人が同時に振り返り、お互いに自分を指差して同時に言う。


ガンナー「俺の勝ちだ」

海賊「俺様の勝ちだ」


ガンナー「はあ? ざけんな、最後はどう見たって俺の一撃で倒したじゃねぇか」


海賊「馬鹿言うなよチビガキ。俺様がいなかったら倒せてねぇっつうの」


ガンナー「自惚れんな」


海賊「そっくりそのまま返すぜ」


僧侶「皆さん無事で何よりです」


勇者「そ、僧侶いつの間に」


船員C「ああ、つまりこれは――引き分けッスね」ハハ


ガンナー「癪だな」


海賊「チッ……なんか納得いかねぇ」


勇者「負けん気強いなぁこの二人」


僧侶「お約束というやつですね」



挿絵(By みてみん)

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