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21 剣士「なにしてるんだ」

~宿~


魔法使い「勇者勇者」


勇者「何?」


魔法使い「アルボルって人は南大陸で待ってるって言ったんでしょ?」


勇者「うん」


魔法使い「私達も南大陸に行くんだよね?」


勇者「じゃないと戦えないしな」


魔法使い「どうやって海を渡るの?」


勇者「そりゃあ船に乗って……船……」


勇者「ふ、船……?」


勇者「……」


勇者「剣士ー!」


剣士「なんだ?」


勇者「船! 船どうすんの?」


剣士「え? 船?」


勇者「俺達は南の大陸にも北にも行くだろ? 北に行くんだったら西にも行くかもしれないだろ?」


剣士「ああ……そういえば考えてなかったな」


吟遊詩人「基本的に他の大陸に渡る船は物資の輸送船と、二ヶ月に一度の定期船くらいね」


勇者「近いうちにその定期船は……」


吟遊詩人「ついこの前出たばかりよ。定期船で渡るにはもう二ヶ月待たないと」


勇者「え――それってどうするんだ? その、物資の輸送用の船って頼んで乗せてもらえるものなのかよ」


吟遊詩人「基本的には……無理ね。事情を説明すれば乗せてもらえるかもしれないけど……可能性は低いわ」


勇者「行き詰った。どうしよう」


僧侶「……おや、何やらお困りのようですね」


騎士「……」


勇者「ああ、僧侶に騎士……実はさ」カクカクシカジカ


僧侶「船――ですか」


騎士「船」


勇者「どうすればいいかな僧ペディア」


僧侶「僧ペディアって何ですか」


勇者「困った時の僧ペディア」


僧侶「はあ……船でしたら、心当たりがあります」


勇者「え?」


僧侶「輸送船には乗る事ができない。定期船はあと二ヶ月待たなければいけない。でもそんなに長い間待っている事はできない――そういう事ですね?」


勇者「つまりそういう事だな」


僧侶「簡単です。輸送船にも定期船にも頼らなければいい」


勇者「?」


勇者「あの、その二つ以外にも船はある――って事か? 漁師の船とか?」


僧侶「いえいえ、彼等は漁師ではありません」


僧侶「船なら一度『彼』に頼んでみてはいかがでしょう?」


勇者「彼?」


騎士「海賊」


勇者「か、海賊ぅ!?」


魔法使い「それなら輸送船に頼み込んだ方が乗れる見込みありそう」


僧侶「私の知り合いに『海賊』の方が一人いらっしゃいまして」


勇者「海賊の知り合い……なんか怖そう」


僧侶「た、確かに『多少』気が強くて頑固で短気で傲慢で意地っ張りな方ですが……根はいい人のはずですから……」


勇者「良い人の『はず』ねぇ……」


僧侶「はい……ただ、役職の関係で私と彼の仲はあまり良好とは言いがたいです」


勇者「それ大丈夫なのか?」


僧侶「ガンナーの知り合い……でもありますが、結局は勇者さんが気に入られるかどうか――だと思います」


勇者「え、ええー……」


僧侶「海賊さんは東大陸の港町に来ているらしいので、彼らがそこを出てしまう前に行ってみるべきかと」


勇者「うわあ、まじか」


剣士「海賊、か」


勇者「剣士は知り合いじゃないのか?」


剣士「ガンナーの知り合いイコール俺の知り合いってわけじゃないからな?」


勇者「わ、分かってるよ」


吟遊詩人「――で、そのガンナーはまだ帰ってないみたいだけど」


ガンナー「呼ばれた気がして」ヒョコッ


勇者「うおっガンナー! 何処行ってたんだよ」


ガンナー「外」


勇者「それは知ってる」


ガンナー「まあふらふらと」


勇者「アバウトだな……」


剣士「……」


僧侶「ガンナー、海賊さんはまだ東大陸に?」


ガンナー「いるんじゃねぇの?」


勇者「うわ適当」


ガンナー「だって俺別にアイツの一年間のスケジュール把握してるわけじゃないし」


勇者「いや、それは誰だってそうだろうけど」


ガンナー「ただちょっと前に『東大陸に来たしテメェのあんまり成長してない身長見てやるから近いうちに来いよチビガキ』って連絡来た。多分アイツ俺をからかうまでこの大陸離れないぞ」


勇者「からかう? ガンナーを……?」


ガンナー「まあそれの返事として『お前の老けたアホ面見るために近いうちに会いに行ってやるから感謝しろよ赤尽くし』って言っといたけどな」


勇者「(赤尽くし……?)」


勇者「っていうかチビガキって」


僧侶「海賊さん以外が言うと消されますから注意してくださいね」


勇者「なんでその人平気なの」


僧侶「仲がいいんですよ」


ガンナー「夏に海で泳いでる海賊に向かって『レッドフィッシュ』って言ったらぶん殴られたわ。とりあえず倍にして殴り返しといたけど」


勇者「レッドフィッシュ……っていうかガンナーを殴るって」


僧侶「赤い目、赤茶色の髪に、赤い服、赤い旗。赤が好きなのです」


ガンナー「むしろ海賊それ即ち赤みたいな」


勇者「存在が赤色になっちゃったよ」


ガンナー「まあアポ無しで行くのもアレだし一応連絡いれとくわ」ピッ


勇者「お、おう。なんで通信機持ってんの」



ガンナー「おい海賊。たまにはそのアホ面見に行ってやるから目ぇ閉じて片足立ちして待っとけよ」


勇者「……」


ガンナー「違う、明日。そうだよ明日までその体勢でいろよ赤魚」


勇者「……」


ガンナー「『待ってるから是非来てくれ』ってさ」


勇者「絶対言ってないだろ」


ガンナー「……そんなことねえよ」


勇者「なんだよその間は」


ガンナー「いいだろ別に」


勇者「えー……ええっと、まあその、そんなわけで、海賊って人に会いに行くことになりました」


魔法使い「おぉー」パチパチ


~・・・~


僧侶「いけませんよ」


勇者「駄目か?」


騎士「駄目」


魔法使い「それは駄目でしょー」


吟遊詩人「駄目なんじゃない?」


剣士「何の話してんだお前等」


魔法使い「いや、ね? トランプのジョーカーをね……」


剣士「トランプって……」


吟遊詩人「……あら? ガンナーは一緒じゃないの?」


剣士「ああ、さっきまで一緒だったんだが」


魔法使い「屋根の上にでもいるんじゃない」


剣士「うちの弟は野良猫か」


魔法使い「でも近いでしょ? 猫に」


剣士「否定はしないが」


勇者「そんな事よりババ抜きしようぜ」



挿絵(By みてみん)

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