22 ガンナー「海の賊」
~翌日、港町~
勇者「そして海賊さんとやらと会う時が来てしまった……」
剣士「そんなに嫌か?」
魔法使い「話聞く限り怖い人っぽいしね」
吟遊詩人「そうね」
僧侶「お世辞にも『穏やかな人』とは言えませんね」
勇者「ほらぁ」
ガンナー「そういえば俺初対面で刺されかけたっけなぁ」
勇者「怖い! 会う前からすげー怖い! やべー、超ドキドキしてきた!」
「おいそこのガキ、うっせーぞ!」
勇者「ひいっ、うわああっご、ごめんなさい!」
ガンナー「あん?」ジッ
僧侶「おや」
赤目の男「おうおう、なんだよテメエその猫と蛇を合わせたみてえなキッツイ目つきは」
ガンナー「そっちこそなんだよ、その気が狂ってるとしか思えねえほど奇抜なファッションは」
赤目の男「あーあー、背もちっせえし男としての威厳がねえなあ」
ガンナー「ガキ相手につっかかって男として恥ずかしくねえのかなあ」
魔法使い「あ、赤茶色の髪、赤い目、赤い服――」
吟遊詩人「僧侶、もしかしてこの人が?」
僧侶「お二人とも落ち着いてください。貴方がたの『挨拶』は周囲から見ればただの喧嘩ですよ。それもこんな往来で」
赤目の男「っかァー! これだから嫌だねェ、聖職者は」
僧侶「……酔っておられますか? 海賊さん」
海賊「こんな真昼間から飲むかよ。シラフだ、シラフ」
ガンナー「ガラの悪さは健在だなチンピラ」
海賊「お坊ちゃまこそ相ッ変わらず背がちっちゃくて可愛らしいですねェー?」
ガンナー「殺すぞ」
海賊「黙れチビ」
勇者「なんでこの人たちこんな仲悪いんだよ。誰だよ二人は仲良いとか言ったの」
~酒場~
海賊「……んで? 何、そこのひょろっこいのが例の『勇者』って奴か?」
勇者「あ、ハイ、まぁ……」
海賊「ほー」
ガンナー「海賊お前老けたか?」
海賊「ガンナーお前縮んだ?」
ガンナー「……」
海賊「……」
騎士「険悪」
海賊「で……その勇者は強いのか?」
ガンナー「全然」ズバッ
勇者「ハッキリ言うなぁ……」
ガンナー「勇者より剣士のがずっと強いわ」
海賊「へぇ」
ガンナー「でも剣士より俺の方が強いわ」
海賊「なるほどねえ」
ドンッ
勇者「」ビクッ
海賊「おう勇者ビビってんじゃねぇかよ……」
ガンナー「机に足乗せんなよ」
海賊「本題に入れよ。ここに来た理由言ってみろ。はい勇者くん」ビシッ
勇者「えっ俺!? え、えっと……その」アタフタ
ガンナー「南大陸まで乗せてって」さらっと
海賊「めんどくせ」
ガンナー「世界滅ぶぞ」
海賊「それは困る。あーでもめんどくせえ」
ガンナー「……」
ガンナー「報酬は弾む」
海賊「乗ってけ」
~港~
船員A「あっ船長! どこ行ってたんスか!」
海賊「悪ィ悪ィ、ちょっと知り合いが来ててな」
船員B「もしかしてそのちっこいのがよく話してた知り合いのガキですか?」
海賊「確かにチビだがあんまりナメてかかるなよ」
ガンナー「海賊、撃たれたいかお前」
海賊「知名度が上がっていいじゃねぇか」
ガンナー「嫌な方向に上がってるわ」
海賊「――で、こいつらを南大陸まで乗せてく事になったから」
船員達「ええっ!?」
船員B「女子供ですぜ? いいんですかい?」
海賊「良いも何も、こいつらは『勇者様ご一行』だぜ?」
船員D「勇者? どれが」
勇者「ごめんなさい、俺です」
船員C「これがぁ? うっそだぁー」ナイナイ
魔法使い「何このノリ」
海賊「たしかに女はいるがお前ら、たとえ不可抗力でも手ェ出したりしたら自分の首が飛ぶと考えておけよ」
船員C「いえっさー。……しかし」ジー
吟遊詩人「?」ボイン
騎士「……」ペターン
船員C「Oh……ナイスおっ――あ、なんでもねぇッス。何もしやせんからそんな睨まんでくださいよ」タラタラ
海賊「……」
僧侶「……」
ガンナー「……」
船員C「は、はは――あっお、俺他の船員どもにも知らせてきやす! んじゃ!」スタコラサッサ
海賊「……鍵付いてる部屋、二部屋くらいあったよな?」
船員A「ボディーガードがいるんじゃ誰も何もしねぇでしょ」
船員D「そんな事より大富豪しようぜ」
~部屋~
勇者「なんか物凄いスピードで物事が進んだな」
ガンナー「俺寝るわ」
勇者「あ、無視ですか」
魔法使い「面白い人たちだねー」
吟遊詩人「優しそうでよかったわ。もっと怖いのかと思ってた」
ガンナー「勇者、勇者見ろこれ、ハンモック」
勇者「おお……」
ガンナー「Zzz」
勇者「そんで早いな」
騎士「……」サワサワ
僧侶「? どうかしたんですか?」
騎士「……ない?」
僧侶「え?」
騎士「ない?」ツルペターン
僧侶「……」
魔法使い「ない事はないよ、少ないってだけでゼロじゃないよ大丈夫だよ、これからだよ」アセアセ
勇者「っていうかそれを僧侶に訊くのはどうなんだ」
僧侶「物凄く返答に困ります」
船員C「俺はどっちでもイケるぜ!」ヒョコッ
勇者「うわああ!?」ビクゥッ
魔法使い「勇者、ガンナー起きちゃうよ」
船員C「まあ正直二人分の生足拝めるってだけで充分お腹いっぱいッスけど」ハハッ
勇者「ア、ハイ」
船員D「大富豪やろうぜ勇者」
吟遊詩人「それさっきも言ってたわよね……?」
勇者「いや、なんかもうリアル大富豪が知り合いにいるんで遠慮しときます……」チラッ
ガンナー「Zzz」
船員D「大富豪……」シュン
勇者「うっ、すごい罪悪感……や、やりましょう! 大富豪、皆でやろう!」
魔法使い「うんいいよー」
僧侶「私はルールを存じませんので、観戦させて頂きます」
~その頃厨房周辺~
剣士「や、あの、まだ未成年なんで酒はちょっと……」ムリムリ
船員E「固い事言うなって、十九も二十も一緒一緒! あたしゃ十八から呑んでたぞ坊主!」わはは!
剣士「えええ……」
船員B「未成年に無理矢理酒飲ますなよ……」
船員A「Eさん酒くせぇッスよ」
~・・・~
勇者「やべえ、Dさん強ぇ……」
船員C「ぎゃあっこれまたド貧民なんじゃ――!」
勇者「逆にCさん弱ぇ……」
ガンナー「お前等がうるせえから起きたわ」ムク
勇者「あ、ガンナー」
船員C「おそようッスガンナーさん! 一緒に大富豪やりましょうぜ!」ガタッ
魔法使い「あっ自分が負けそうだからって逃げた!」
船員C「ち、違いますぅー! 純粋にガンナーさんも混ぜて遊びたかっただけですぅー!」
ガンナー「遊んでやってもいいが、後悔するなよ?」
船員C「え?」
~数十分後~
船員C「ガンナーさんマジパネェッス」
勇者「ゲームでも大富豪、リアルでも大富豪――もう何この人」
船員D「ここまで俺に張り合えたやつは始めてだ……」握手
ガンナー「俺もお前程の実力者見た事ねぇわ」握手
魔法使い「友情芽生えちゃったよ」
勇者「トランプ同盟……?」
海賊「随分楽しそうだな? お前等」
船員C・D「あ」




