20 吟遊詩人「私のこと?」
~宿~
勇者「吟遊詩人ってどこに住んでるんだ?」
魔法使い「それ私も気になってた」
僧侶「存じませんね」
剣士「俺も聞いたことない」
勇者「家族構成も出身地も知らないよ」
剣士「好きな物とかもあんまり言わないしな」
魔法使い「私吟遊詩人の歳つい最近知ったよ」
勇者「ちょっと興味あるよな」
騎士「ある」
吟遊詩人「なんで皆私の個人情報に興味津々なの」
魔法使い「謎が多いんだよ、吟遊詩人って自分のこと話さないから」
吟遊詩人「そうかしら……あまり意識したことないわね」
勇者「じゃあ吟遊詩人に質問タイムな」
吟遊詩人「えっ」
ガンナー「何? 吟遊詩人を徹底解体すんの?」
剣士「それお前が言うとなんか……」
僧侶「徹底解体(物理)」
勇者「そのうち俺も解体されそうで怖いわー」
ガンナー「何? 今すぐ解体して欲しいって? しょうがないなあ」
勇者「ごめんなさい」
僧侶「(ガンナーならやりかねない)」
吟遊詩人「質問される事自体は別に構わないんだけど――あまり答えにくいのはやめてね?」
ガンナー「恋人いんの?」
魔法使い「答えにくいのは駄目って言った矢先にその質問」
勇者「弟妹がいるって何処かで聞いたけど本当? 何処出身?」
吟遊詩人「西の大陸よ。弟と妹両方いるわ」
魔法使い「吟遊詩人の妹かあ」
勇者「しっかり者か天然系かの二択って感じだな」
吟遊詩人「弟は十六歳で、妹は十歳なの」
剣士「ガンナーと同じ歳か」
勇者「僧侶みたいなのを想像した」
僧侶「何故です」
吟遊詩人「こっち――東の大陸に移ってからはセシリカの森の近くに住んでたのよ」
魔法使い「ペットとか飼ってた?」
吟遊詩人「小鳥を放し飼いしてたわ」
勇者「なんとなく吟遊詩人に似合うな。けど鳥を放し飼いって大変じゃないか?」
吟遊詩人「外でね」
剣士「さらに高度だな」
ガンナー「鳥か」
剣士「こっちに連れてきてたらガンナーに撃ち落されてたかもな」
ガンナー「はあ?」
剣士「お前鳥嫌いだろ」
ガンナー「あー……」
――――……。
ガンナー「!」
ガンナー「……?」
~外~
勇者「近場の探索はいいんだけど、なんでこのメンバーなんだ」
剣士「お前とガンナーの二人だけだと色々不安だからな」
ガンナー「女とのほうがよかったか?」
勇者「いや、そうは言ってないだろ……」
ガンナー「お前だけだともしものときに何もできないし、俺達がいてうれしかろう」
勇者「言い返せないのがいちいち悔しいな」
ガサガサ、
剣士「……何の音だ?」
勇者「そのあたりの草陰からだ。動物でもいるのかな」
バッ
勇者「うおっ!? ビビった!!」
紫髪の少年「た、助けてください!」ガシッ
ガンナー「あ?」
勇者「えっ?」
剣士「ん?」
風「……」
勇者「げっ」
ガンナー「……」
勇者「ガンナー、その男の子……」
剣士「なんだ、なんかされたのか?」
ガンナー「おい餓鬼」
ガンナーは自分にしがみついたまま離れない少年の頭を銃口で押した。
勇者「お、おいガンナー」
ガンナー「……お前、縋る相手間違ってるぞ」
紫髪の少年「……」
勇者「ガンナー……?」
ガンナー「おい」グイグイ
紫髪の少年「……超あっさりバレたし」パッ
勇者「えっ」
風「……ソイツがガンナーだぞ」
紫髪の少年「見りゃ分かるさ。銃背負ってるし」
剣士「お前は誰だ」
アルボル「僕はアルボル、木の刺客さ」
剣士「(木――こっちは吟遊詩人だな)」
ガンナー「お前額に石埋まってるけど痛くねーの? ちょっとデコピンさせて」
勇者「転んでぶつけたりしたら絶対痛いよな……」
ガンナー「痛いっつか割れるだろ」
剣士「お前等なあ……」
アルボル「今日はちょっと顔見に来ただけ。『ビエント』たちが色々話してるの聞いたし、好奇心みたいな? まあ、あわよくば殺せたら、とは思ってたけど」
ガンナー「……」
アルボル「……まあそういうわけで、あんた等がその気になっても僕らは戦いに来たんじゃないから。ただ皆が妙に警戒してるガンナーって奴が気がかりだっただけ。フツー警戒すべきなのって勇者でしょ、なんで銃使いなワケ? ってさ」
剣士「ガンナーがパーティ内で一番強いだからだ」
勇者「剣士それ言ってて悲しくならねーの?」
ガンナー「正直なところ勇者は俺達三人の中じゃ最弱だぞ」
アルボル「……なんかゴメンよ」
勇者「敵に同情された」
ガンナー「……元気出せよ勇者」
勇者「おいやめろ」
アルボル「まあ……次戦うのは僕だけど、アンタら疲れてるだろうしまだしばらくは手ぇ出さないでいてやるよ」
勇者「何その優しさ」
アルボル「――南大陸で待ってる」
ガンナー「……おいお前、あいつのこと追わなくていいのか」
風「南大陸にいくつもりは――ああ、だがアイツが南に行くなら俺も南にいないと二度手間だな、お前達が」
勇者「何その微妙な優しさ」
剣士「こいつら敵対してるんだよな……?」
勇者「えっ、という事はアルボルの次は風と戦うってことか」
風「お前たちが生きていたらな」
勇者「強そう」
ガンナー「いや当然勇者よりは強いだろうよ」
勇者「な、なめるな」
風「自分で言うのもあれだが確実にお前よりは強い自信あるぞ」
勇者「自分で言っていいことじゃない」
ガンナー「だってなんかもう見た目からしてレベル違うのわかるし」
風「……」無口。前髪で顔隠れてる。手袋装着。
勇者「……」ターバン。マント。田舎者。
剣士「勇者弱そう」
勇者「俺泣きそう」
ガンナー「真面目な話すると勇者このままだとヤバイ」
剣士「それは俺も思う」
勇者「え、ちょ、剣士まで……」
風「敵ながら哀れ」
勇者「哀れとか言うな」
風「まったくもって哀れ。同情する」
勇者「う、うるさいなあ! もう!」
ガンナー「もっと言っていいよ。こいつそういうの一番効くから」
勇者「お前味方だよな!?」