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10 勇者「生存報告すらできない」

勇者「無線がない……弱ったな、魔法使いたちと連絡がとれない」


僧侶「お怪我の具合はいかがですか?」


勇者「うん、傷はもう大丈夫だ。それより……その、俺――どうなったんだ?」


僧侶「その質問の真意が理解できません」


勇者「俺、洞窟に閉じ込められて……それで刺されて、それから後の事だ」


僧侶「私が貴方を救出し、傷を癒したからこそ貴方はここにいるのです」


勇者「それは分かるけど。僧侶はどうやって洞窟に入ったんだ」


僧侶「私が勇者さんよりも後にレンテの洞窟に入ったという確証はありませんし、出入口が壁で塞がれる前に中に入った可能性もあるでしょう」


勇者「そ、それもそうか。でも、どうしてその……レンテ――っていうのか――に入ったんだ?」


僧侶「いえ、近くを通りかかった際に勇者さんの姿が見えましたので、なにかあったのかと思いまして。声を掛けましょうか少々悩みましたが……その結果が今のこの状況です。レンテには何度か薬草採取のために訪れたことがあるので、抜け道などの位置も把握しておりました」


勇者「ああ、そうか、なるほど。助けてくれてありがとな。えっと……ここは?」


僧侶「少し前から私と騎士が一時的に生活しています、宿のようなものです。クリエントからそう距離はありません」


勇者「じゃあ、結局クリエントにいても僧侶たちは見つからなかったのか……それで、その、俺……皆にこのことを伝えたいんだけど、電話とかは……ないか。えっと、俺はもう平気だから、とりあえず一緒にクリエントへ――」


僧侶「なりません。傷が癒えたと言えどそれは表面上のこと。身体に負担がかかりますので、明日の朝までは安静になさってください」


勇者「そんな、大丈夫だって」


僧侶「私が発見した時点で貴方はかなり衰弱した状態だったのです。治癒があと少しでも遅ければ助からなかったと言っても過言ではないほどの重傷。そんな身体で外へ向かわれる事は神がお許しになっても私が許しませんよ」


僧侶「それに蘇生魔法は大きな魔力を要する魔術ですから正直めんどくさいので死なれたら困ります」


勇者「そ、そんなに酷かったのか? 俺の怪我……っていうか最後本音でてるぞ」


僧侶「嘘偽りの無き僧でありたいと志しておりますので」


勇者「う、ううん……じゃあ――もう外も暗いみたいだし、明日まで休ませて貰おうかな」


勇者「……なあ」


僧侶「なんでしょう」


勇者「あのさ、ずっと気になってたんだけど、騎士はどうしたんだ?」


僧侶「……少々、モメ事が御座いまして」


勇者「喧嘩か?」


僧侶「はい。私もまだ未熟な子供です故、つい感情的になってしまい――お恥ずかしい限りです」


勇者「(そうだ、こいつガンナーと同い年だった。俺より一個下なんじゃん……)」


勇者「キョウダイ喧嘩なんてそんなもんなんじゃないのか? 俺兄弟いないけど、剣士とガンナーも結構どうでもいい事で言い争ってることあったし」


僧侶「そうですね。よく存じております」


勇者「ああ、幼馴染だもんな、お前たち」


僧侶「ええ」


~???~


ガンナー「……」


ガンナー「いてえ」


?「お? 兄ちゃん起きたかァー?」


ガンナー「……武闘家」


武闘家「ガンナーの兄ちゃん生きてた! 死んでなかったァー!」


ガンナー「勝手に殺さないでくれないか」


武闘家「わはは! ガンナーの兄ちゃん元気だった! 武闘家は嬉しいぞー!」


ガンナー「うわあいつもの事ながらこの幼女テンションたけぇ」


武闘家「武闘家はいつでも元気だぞ?」


ガンナー「そういやアラバの森にはお前がいたんだったな……それで、俺をここまで運んだのはお前か?」


武闘家「それは武闘家じゃないぞー! でもここは武闘家の家だ!」


ガンナー「それは知ってる」


武闘家「騎士の姉ちゃんがな、兄ちゃんを担いできたのだ! な?」


ガンナー「……」


騎士「……そう」


ガンナー「……騎士」


騎士「森を歩いていたら、貴方を見つけた。驚いた。突然崖の上から降ってきたから」


ガンナー「とりあえず、礼は言っとく。ありがとうな」


騎士「いい」


武闘家「地面にぶつかる前に風でぶわ! ってなって助かったんだってなー!」


ガンナー「ああ、まあ、間違ってはいない。背中痛い」


武闘家「落ちたからな! うはは!」


ガンナー「クリエントに戻らないとな」


武闘家「もうお外真っ暗だ! 真っ暗! 夜は危ないし暗いしこわいぞォー? おばけがでるぞ!」


ガンナー「早寝しない悪い子のところに『おばけ』がやってくる絵本があってだな」


武闘家「わ……わァーわァー! その話は聞きたくないからな!! それにおばけなんていないって武闘家のお姉ちゃんは言ってたぞ!」


ガンナー「お前五秒前の自分殴って来いよ。っていうかお前一人っ子じゃなかったのか。あ、でもいつだったかそんなこと言ってたような」


武闘家「お姉ちゃんは商売人でいろんなところを旅してるんだぞー! ときどきお土産持って帰ってくるけど今はいなくてな、だから武闘家はお留守番してるのだ!」エヘン


ガンナー「あっそう。まあ体痛いし今夜は泊まって行っていいか?」


武闘家「わあい! ガンナーの兄ちゃんと騎士の姉ちゃんお泊まり! お泊まりだあ!」


ガンナー「こいつうるさいんだけど」


騎士「今にはじまったことじゃない」


ガンナー「それもそうだ。寝る」


武闘家「お風呂は?」


ガンナー「入る」


武闘家「一緒に」

ガンナー「は入らない」


武闘家「ブー」


ガンナー「豚かお前は」


武闘家「ブーブー!」


ガンナー「……」デコピン


武闘家「痛い!」


騎士「……」


ガンナー「そういや騎士、僧侶は一緒じゃないのか?」


騎士「ない」


ガンナー「さては喧嘩でもしたか?」


騎士「……した」


ガンナー「そりゃまた、珍しいことで。で、原因は?」


騎士「……なんでもない、些細なこと」


ガンナー「まあ喧嘩なんてそんなもんだよな」


騎士「そう。そんなもの」


武闘家「武闘家も姉ちゃんと喧嘩したことあるぞー!」


ガンナー「お前と喧嘩するとぶん投げられそうだ。無駄に怪力だし」


武闘家「わっはっは! 武闘家は強いのだー!」


ガンナー「……ああ、それで騎士、お前らお互いの居場所は?」


騎士「私は知ってる」


ガンナー「僧侶はお前がここにいること知らないってか。で、まだ怒ってんの?」


騎士「別に。全然」


ガンナー「なら帰れよ」


騎士「わかってる」


ガンナー「助けてくれた礼と言っちゃなんだが、送るぜ。ちょうどお前らに話があるんだ」


騎士「私も、崖の上で何があったのか詳しいことを聞きたい」


ガンナー「……ま、帰るのも話をするのも明日になってからだ」



挿絵(By みてみん)

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