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9 魔法使い「とんでもないことになってる」

吟遊詩人「剣士!」


剣士「ぎ、吟遊詩人?」


吟遊詩人「探したのよ! 無線にかけても出ないし、心配したんだから!」


剣士「それどころじゃない! ガンナーが!」ダッ


吟遊詩人「え? あっ、ちょ――ちょっと何処行くの! 待って!」



吟遊詩人「剣士! 待ってったら!」ガシッ


剣士「!」


吟遊詩人「どうしたのよ、突然。そんなに慌てて、貴方らしくないじゃない」


剣士「ガンナーが――落ちたんだ。俺を庇って」


吟遊詩人「! ……どういうこと?」


剣士「俺自身もよくわかってない。丘の上でガンナーと話していたら、急に強い風がぶつかってきて――」


吟遊詩人「風が――ぶつかってきた?」


剣士「……片方が助かるには片方が落ちるしかないと思った。俺が落ちるはずだったんだ、でもあいつ」


吟遊詩人「そ――それはどのあたり? 急いでガンナーを捜しましょう!」


~アラバの森~


吟遊詩人「たしかにこのあたり……なのよね?」


剣士「ああ、そのはずだ」


吟遊詩人「でも、あたり一帯を捜してみたけど、ガンナーはどこにも……」


吟遊詩人「(何かしら。このあたりの地面だけ、少しへこんでいるような……落ち葉もここにだけ積もってないし……)」


剣士「たしか俺たちが立っていたのはあのあたりで――」


剣士「……あ」


吟遊詩人「どうかした?」


剣士「あの木に引っ掛かってるの――俺の無線機だ」


吟遊詩人「きっとその『風がぶつかった』ときに落ちたのね。じゃあ――でも、それだったらどうしてガンナーがいないの?」


剣士「俺が知るかよ。とにかく、無線を取ってくるから、少し待っててくれ」


吟遊詩人「気を付けてね。私は待ってる間に魔法使いに連絡しておくわ」


剣士「ああ」



魔法使い『吟遊詩人?』


吟遊詩人「魔法使い、剣士と合流できたわ。そっちはどう?」


魔法使い『それが、洞窟の入り口が塞がれてて、中に入れないんだ。私一人じゃどうにもできなくて……』


吟遊詩人「え? 塞がれてる? ……わかった、すぐそっちに向かうわ」



剣士「どうかしたのか?」


吟遊詩人「剣士、魔法使いのところに行きましょう」


剣士「だ、だが、ガンナーは」


吟遊詩人「彼が心配なのは私も一緒よ。でも、勇者の身も危ないの!」


剣士「……どういうことだ?」


~洞窟、レンテ~


魔法使い「あ、吟遊詩人! 剣士!」


剣士「事情は吟遊詩人から聞いた。魔法使い、入り口が塞がれてるってのはどういうことだ?」


魔法使い「これ、見て。変な壁が道を塞いでるの」


吟遊詩人「ここだけまわりと色が違うし、岩の表面も凹凸おうとつがなくて平らね。あまりにも不自然だわ。でも……簡単には壊せそうにないわよ」


剣士「……ちょっと、俺に任せてくれねえか」


魔法使い「え? う、うん」


剣士「たった今思い出したんだが、国王は俺に『地』の能力があるって言ってたよな」


吟遊詩人「ええ」


剣士「……俺の憶測通りなら」スッ


ピシッ、


ガラガラガラ……


吟遊詩人「!」


剣士「――これくらいなら、壊せるはずなんだ」


魔法使い「剣士すごい! どうやったの?」


剣士「い、いや、実を言うと俺もよくわかってない。今はじめて使ったし……見たところ、どうも岩なんかを操れるらしい」


魔法使い「つまり、今みたいに岩を壊したり、逆にその場に出したりできるの?」


剣士「そういうこと――だと思うぜ」


吟遊詩人「ふ、二人とも……あれ……」


魔法使い「!」


剣士「これは――」


魔法使い「ね、ねえそれ……まさか」


剣士「……血だ」


吟遊詩人「け、剣士、これって勇者の無線機じゃ……そこに落ちてたんだけど」


魔法使い「そんな――じゃあ、勇者は? ねえ、勇者は……どうなったの?」


剣士「……とりあえず中を捜そう。血痕があるってことは、敵か勇者のどちらかが怪我を負ったってことだ。他に抜け道でもない限り、勇者がここにいることは確実だろ」


魔法使い「う、うん、わかった! ……あ、ねえ、剣士。さっきから気になってたんだけどさ」


剣士「……なんだ」


魔法使い「――ガンナーは、一緒じゃないの?」


~数時間後、クリエント~


吟遊詩人「つまり、レンテに向かった勇者と、アラバの森でガンナーが消えた――という事ね?」


魔法使い「うん……三人で隅々まで捜しても勇者は見つからなかった――血痕は、あったけど……」


剣士「勇者がレンテに行かなかった――というのもあり得ない。血痕の傍に勇者の無線機が落ちていたし、暗くてよく見えなかったが、ざっと見ても他に出入口はなかった。そしてあの魔力のこもった壁もある」


吟遊詩人「連れ去られたって可能性もあるわね。壁は私達を足止めするため――かしら?」


剣士「おそらくはな。勇者を閉じ込める役割も兼ねていたんだろう。連れ去られたか、俺たちが何処か見落としていたか――」


魔法使い「ガンナーは?」


剣士「吟遊詩人で森を捜してみたが見つからなかった」


魔法使い「落ちてすぐに行っても丘を下るには時間がかかるし、その間に連れて行くこともできるね」


吟遊詩人「連れ去られたならね。もしかすると、彼自身が怪我をした状態で何処かに移動したのかもしれないわ」


剣士「本来落ちたはずの場所にいなかった――ってことは、そうも考えられるな。その場合あまり遠くにはいけないはずだ」


吟遊詩人「外が明るくなったらまた捜しに行きましょう。夜の森は危険よ。その危険な森にガンナーを一人で残してる可能性もあるわけだけど……」


剣士「(今になって考えてみれば、二人とも助かる方法はあったのに……どうして気付かなかったんだ。俺の『地』の能力を使えば、足場をつくることもできたはずだ! なのに何故あのとき――)」


吟遊詩人「剣士、大丈夫? 顔色が悪いわ」


剣士「あ、ああ……大丈夫だ」


魔法使い「どうしよう。連れ去られたとか見落としてたとか、仮説はいくらでも立てられるけど、手がかりは何一つないよね。森や洞窟じゃ目撃者もいないし」


剣士「……このままだと正直、戦力的にも厳しいな」


吟遊詩人「そう、ね」


魔法使い「と……とりあえず! もう暗いしご飯にしよう。この話はその後で。お腹が減ったらまともな話し合いも戦いもできないよ!」


吟遊詩人「そ、そうね。剣士は休んでて頂戴? 夕飯は私が作るわ。魔法使い、手伝ってくれる?」


魔法使い「うん」



魔法使い「……剣士、すごい落ち込んでるね」


吟遊詩人「そりゃそうよ、弟が崖から落ちて、いなくなっちゃったんだもの」


魔法使い「うん……二人とも、無事だといいな」


吟遊詩人「今はそう祈るしかないわね。また明日、捜しに行きましょう」


魔法使い「そうだね」


~???~


勇者「――……」


勇者「う……ん?」


勇者「(ここは……俺は一体……)」


勇者「(そうだ、洞窟で……女の子を捜しに行って――ドロシーって子に)」


勇者「(ああ、たしか腹刺されたんだった。でも……)」


勇者「(治ってる……?)」モゾ、


勇者「(……ベッド? この部屋、暗いな。何処だろうここ)」キョロキョロ


コツ、コツ……


勇者「! 誰だ!」


?「……」


勇者「あっ……お、お前」


?「御加減はいかがですか」


勇者「そ――」


勇者「僧、侶……?」


僧侶「……」


僧侶「お久しぶりです、勇者さん」



挿絵(By みてみん)

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