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異世界恋愛短編集

私を捨てるなら、国ごと滅びる

作者: 百鬼清風

 真珠色の天幕が揺れ、初夏の風が花弁を運んだ。

 王宮庭園の芝は絨毯のように刈りそろえられ、銀の燭台が光を散らす。

 舞踏会――いや、正式には「第一王子アレッサンドロ殿下とロッシ家令嬢イザベラの婚約披露式」。


 はず、だった。


 イザベラは白薔薇を胸元に挿し、笑顔を貼りつけていた。

 ――今日で、すべてが予定通りに進むなら。

 そう思っていた自分を、あとで殴りたい。


「イザベラ・ロッシ伯爵令嬢」


 壇上に立った王太子アレッサンドロが、よく通る声で名を呼んだ。

 会場が静まり、全視線が彼に向かう。

 そして、王子は微笑んだまま、告げた。


「――本日をもって、我は貴殿との婚約を解消する」


 弦楽が止まった。

 笑い声が凍りついた。

 銀盆を運んでいた従者の指が震え、グラスが小さく音を立てる。


 イザベラは一瞬だけ、呼吸を忘れた。


「理由は単純だ。国政上の都合により、別の相手との結びつきが望ましいと判断した」


 涼しい顔。

 悪びれもしない。

 彼の背後では、若く華やいだ令嬢たちが小さく囁き合っている。


 ――ああ、そう。

 “国政上の都合”ね。


 イザベラは小さく目を伏せ、涙を一粒だけ落とした。

 周囲がざわめく。

 父が慌てて前に出ようとする。

 決して、止めさせてはならない。

 すべては「言わせる」ために、ここまで仕込んできた。


「突然で申し訳ないが、君の家には相応の補償を――」


「結構でございます、殿下」


 イザベラは微笑んだ。

 その笑みが、薄氷のように静かであることに、気付いた者はどれほどいたか。


「ロッシ家は、王家に尽くす家です。ご判断には従います。ただ一つ――」


 彼女は、スカートの内ポケットに指を滑らせた。

 そこに入っているのは、厚手の羊皮紙。


 ――婚前契約書。

 銀の魔力封印つき。

 “私を捨てるなら国ごと滅びる”と記された文言を含む、正式文書。


 もちろん、まだ出さない。

 ここで見せても効果は薄い。

 もっと大勢の前で、もっと大きな痛みを与える場所で――。


「ひとまず、本日はおめでとうございます。殿下」


 そう言って、礼をした。

 周囲は「なんて健気」「惨めすぎる」と好き勝手に囁く。


 イザベラは、泣きながら、笑っていた。


 


***


 


 その夜。

 ロッシ家の書斎。

 灯火は一つ、静かに揺れていた。


「……本当にやるのか、イザベラ」


 問いかけたのは幼馴染であり、法務学院を出たばかりの青年ルーチェ。

 イザベラは契約書を机に広げ、指先で封印紋を撫でた。


「当然よ。あの方、完全に忘れているわ。『婚前契約は形式だけ』だとでも思っているのでしょうね」


「まあ普通はそう思う。……ただし、君が相手でなければ、だけど」


 ルーチェは苦笑した。


 イザベラは、無言で契約七条目を示した。


第七条:婚約を一方的に破棄した場合、違約者の爵位・財産・統治権は一定期間凍結され、国庫への違約金並びに監査魔法の強制発動を認める。


「国の監査機関が動けば、殿下の……いや、王家の裏帳簿まで出るぞ?」


「それでいいわ」


 イザベラは、微笑みを崩さず言った。


「私を捨てるなら――国ごと滅びる。それが、契約だから」


 


***


 


 翌日、王宮文書局。


 役人が眉をひそめる。


「匿名で“婚前契約の監査申請”? 誰がこんな……」


「内容を確認なさった方がよろしいですよ」


 イザベラはにこやかに紅茶を飲む。

 正体を明かさないまま、提出だけして去る。

 噂は水のように流れる。

 “王子が契約違反したらしい”

 “ロッシ家が動いている”

 “監査魔法発動寸前”――


 イザベラは一歩も動かず、ただ「契約の歯車」を回し始めた。


(まだ序章。焦らないで、少しずつ。噂も、証拠も、全部積み上げてから――)


 紅茶を傾ける。


(殿下。あなたは今日、自分で“破滅のスイッチ”を押したのよ)


 


***


 


 数日後、王宮評議室。


「殿下、文書局より通達が。婚前契約の違反疑義について、一次監査が――」


「は? くだらん。婚前契約など形式上のものだ」


「……ですが、第七条が」


「第七条?」


 アレッサンドロは眉をひそめた。


「そんな条文――」


「ございます、殿下。魔力封印つきの正式契約として」


 一瞬、王子の表情が揺れた。


 そして、確信した。

 ――イザベラ・ロッシ。

 あの女、やりやがったな。



 ロッシ家の応接間。朝の光が磨かれた床に筋を描く。


「イザベラ。……まだ取り返しはつく。王家を敵に回すのは、家にとって――」


 言いかけた父の声を、イザベラはやわらかく遮った。


「お父さま。敵に回したのは向こうですわ。私たちは契約を“守っていただく”だけ」


 彼女は銀の糸で綴じられた羊皮紙を机の中央に置いた。

 封印紋が淡く脈打ち、室温が半度だけ下がる。


「確認しましょう。まず――前文」


 イザベラは読み上げる。


《本契約は、当事者双方が自律的意思により締結する。いずれか一方が一方的に婚約を破棄したとき、被害者保全のため監査魔法を自動発動し、公的権能・財貨の仮差押えを認める》


「“自動発動”。ここが肝よ」


 幼馴染のルーチェが相槌を打つ。


「つまり、殿下が披露式の場で『婚約解消』を宣告した時点で、タイマーが回り始めた」


「そう。一次監査が“形式整備”に入るまで三日。通達が発布されれば、王家の『形式だから』は通用しない」


 父は額に手を当てた。


「……イザベラ。おまえ、いつからこんな恐ろしいものを」


「婚前契約の草稿が宮廷法務から届いた日の夜ですよ。条文の“穴”を見つけた瞬間、眠れなくなりました」


 イザベラは微笑む。


「殿下が軽蔑してくれたおかげで、仕事がしやすい」


「おい、怖いことをさらっと言うな」


 ルーチェが苦笑する。

 イザベラは続けた。


「次。第七条の定義」


《第七条:一方的破棄が公衆の面前で宣言された場合、違約者の爵位・財産・統治権能の一部を七日間凍結し、監査魔法コーラ・レギスの照会対象とする。違約金の下限は二千万ルクス。被害当事者は補償として、名誉回復と公開謝罪の請求権を持つ》


「“公衆の面前で宣言”。ぴったりね」


「わざわざ庭園でやってくれたからな。証人、百人単位で揃ってる」


 父が小さく息を吐く。


「……勝てるのか」


「勝ち負けではなく“履行”ですわ、お父さま」


 イザベラはペン先で契約の端を軽く叩いた。


「しかも、これは私怨ではない。公の信義の回復。ロッシ家の名誉、そして“婚約”という制度自体の信頼を守ること」


「……そこまで考えているなら、親として言うことはない」


 父は肩を落とし、ゆっくり頷いた。


 


***


 


 王宮文書局では、噂が実務に変わっていた。


「一次監査、起案完了。評議会へ付議。被疑義名:第一王子アレッサンドロ殿下」


「対象契約、封印確認……魔力署名一致。“コーラ・レギス”条件成立」


 若い書記が震える声で報告する。

 監督官が短く頷いた。


「王家が当事者だろうが手続は手続。書式の誤りは許されん。丁寧にやれ」


「は、はい!」


 そのとき、扉の外から控えめなノック音。

 入室したのは、シンプルな紺のドレスに身を包んだ令嬢と、銀縁眼鏡の青年。


「ごきげんよう。申請人代理――とだけ申し上げておきます」


 イザベラは愛想よく頭を下げる。

 彼女の視線は室内のすべてを素早く拾い、机上の写し取り用水晶板の微細なひびまで記録する。


「書式の確認に参りました。貴局の手を煩わせないために」


「……ありがたく」


 文書局員は、礼を欠かさず応じた。

 彼らは知っていた。

 ロッシ家の令嬢は、礼儀正しく、しかし容赦なく“正しい”。


 


***


 


 その日の午後、イザベラは別の場所で“種”を撒いた。

 貴婦人たちの茶会。

 品よく、さりげなく。


「婚前契約って、形式だけじゃないの?」


「形式だけで足りるなら、あの“第七条”なんてありませんのよ。ご存じ? 最近は、婚約破棄が流行りでして」


「怖い言い方!」


「怖いのは“破棄する側”でしょうね。契約は守るためにある。守られないと、制度が崩れて“市場”が壊れる。結婚も縁談も、信用で動いているのですもの」


 イザベラは笑顔のまま、砂糖壺の蓋を静かに閉じた。


「それから――不思議なうわさ。殿下は“ある方”に高価な首飾りを贈られたとか」


「まぁ!」


「帳簿に残っていれば、すぐ分かりますわ。王家の会計は国民の目があるもの」


 紅茶の香りが立つ。

 軽やかな笑い声の合間に、鋭利な刃が走る。

 噂は、もう情報に変質し始めていた。


 


***


 


 王宮の一角。アレッサンドロは苛立ちを隠しもしなかった。


「くだらん。婚前契約など、誰も本気にしてこなかった。父上の代でも、常に形式――」


「殿下」


 側近の青年貴族が恐る恐る言う。


「今回は“形式ではない”ようです。“コーラ・レギス”が点灯しています」


「監査魔法が?」


「はい。しかも――噂はもう流布しています。“殿下が他の令嬢に贈り物”と」


 アレッサンドロは奥歯を噛みしめた。


「くだらん噂を止めろ。文書局に圧をかけろ」


「それが……“監査”は王家の外部監督に属します。干渉は――」


「黙れ」


 短い言葉に、室温がさらに下がる。

 沈黙ののち、アレッサンドロは低く問うた。


「――イザベラは、どこまでやる気だ」


「ロッシ家は、常識の範囲で“すべて”やる家です」


「皮肉だな」


 


***


 


 夕暮れ、ロッシ家の裏庭。

 イザベラはルーチェと並んで歩く。

 鳩時計が六時を告げ、子どもたちの笑い声が遠くで弾けた。


「噂は行き渡った。次は“初手の結果”を見せる」


「王家の裏金――までは掴めない。だが『贈り物』なら辿れる。出所と納入書が残る」


「ええ。小さな爪痕で十分よ。大樹を倒す最初の切り込みは浅くていい」


「……殿下は、どう思う」


「愚か。けれど、愚かさは“教えられる”。問題は、学ぶ気があるかどうか」


 ルーチェは横目で彼女の顔を見た。


「……怒ってないのか?」


「怒ってるわ。とても」


「なら、どうしてそんな穏やかな顔を」


「怒りは火。契約は水。私は“蒸気”になりたくないの。視界が曇るから。――ほら」


 彼女は立ち止まり、夜空に指を伸ばした。

 初星がひとつ、またひとつ。


「一つずつ。正確に。やるだけ」


 


***


 


 監査一日目。


「第一次照会、回答なし。王家会計、明細提出期限を四十八時間後に設定」


「副照会――王太子私室への搬入記録、物品:蒼玉の首飾り。納入先:王都宝飾工房“ラーヴァ”。支払方法:王城経費」


「支払根拠、不明」


 文書局の声が淡々と記録されていく。

 その抄録が、なぜか貴族たちの間で“回覧”され始めるのに、時間はかからなかった。


 そして翌朝。王都の噴水広場で、ささやきは膨張する。


「殿下、城の経費で贈り物買ったんだって?」


「相手は誰?」


「まさか、あの子?」


「ってことは、やっぱりロッシ家への婚約破棄は――」


 


***


 


 同日、宝飾工房“ラーヴァ”の裏口。

 イザベラはフードを目深に被り、帳場の老職人に軽く会釈した。


「先日の納品、受領書の写しを拝見できますか。“王城経費”で落ちている件です」


「お嬢さん、身元は」


「“監査の手伝い”です。違法はさせません。ただ――正しく整える。領収書が二枚あるはずです。正規と、殿下の私費で切り直した“やり直し伝票”。違いますか?」


 老職人の喉が小さく鳴った。

 イザベラは声を低くする。


「工房に罪はありません。請求起案を王城が誤った。……それを“正したい”。公の信用のために」


 しばしの沈黙。

 やがて、老職人はゆっくりと頷いた。


「……嬢さんの目は、嘘を許さん目だ」


「証拠は必要なぶんだけで十分。余計なものは要りません」


 差し出されたのは、書式の異なる二枚の控え。

 一枚には、王城の経費印。

 もう一枚には、後から押された私費の小印が重なっていた。


「“やり直し”。急いで作った跡ね」


「王子の名誉のために、うちも穏便にと思うたが……監査が出た以上、隠し立てはできん」


「ありがとうございます。工房の善意は必ず報告に記します」


 店を出ると、薄青の空気が胸に冷たい。

 ルーチェが小声で問う。


「これ、どう使う」


「“最初の小さなざまぁ”に。――王城発の訂正文を出させるの。『支払は私費だった。経費記載は誤りだった』って」


「殿下の体面は?」


「傷つくわ。けれど、ここで“自分の金で払った”と言わせれば、彼は公的資金の不正使用を免れる。……恩を売ると同時に、世論に“疑念”を置く」


 ルーチェが目を細める。


「甘くないか?」


「違う。長く効く“苦み”よ。訂正は記録に残る。再発時、倍になる」


 


***


 


 監査二日目、王宮広報が短い文を出した。


《先般の宝飾購入に関し、経費記載に誤りがありました。支払は私費であり、公費は使用しておりません。関係各位にお詫びして訂正いたします》


 掲示板の前で、街人が囁き合う。


「ほら、やっぱりなんかあった」


「“誤り”ねぇ」


「でも、私費だってさ」


「私費なら問題ないのか?」


「問題は“最初に公費で処理しかけた”ことじゃないの」


 疑念の芽は、もう取り除けない。

 イザベラは掲示を遠くから眺め、息を吐いた。


「――初手、完了」


 ルーチェが頷く。


「殿下の側近、顔が真っ青らしいぞ。小さくても傷は傷。評議会で突かれる」


「次は“中立の矢”を放つ。調査官よ」


 


***


 


 王宮調査官、名をカロリナという。

 黒髪を低く結い、簡素な外套。瞳は静かな湖面のようだ。


「ロッシ家令嬢。あなたが申請の実質当事者ですね」


「ええ。証拠は“必要最低限”をご用意しました。これ以上は、調査官のお仕事です」


「あなたが全部やってしまっては、私たちの立つ瀬がありませんからね」


 二人の間に、わずかな微笑が流れる。

 イザベラは封筒を渡した。

 中には――工房の訂正文、二枚の控えの写し、そして夜会での短い録音魔法の欠片。


「……夜会の音?」


「“婚約披露の夜、殿下が別の令嬢の名をささやいた”――事実関係の確認材料に」


「扱いは慎重に。個人の名誉が絡む」


「承知しています。私は“手続の励起”をしているだけ。裁くのは、貴女方」


 カロリナは封筒を懐に収め、短く礼をした。


「第七条の骨格は見ました。……あの条文、誰が書いた?」


「宮廷法務です。私は、ただ“穴”を塞いだだけ」


「塞ぐというより、鍵を取り付けたように見えますけど」


「なら、失くさないで。王国の鍵ですから」


 調査官は小さく笑い、踵を返した。


 


***


 


 評議会・臨時招集の知らせが街に走ったのは、その翌日だ。

 議題は二つ。

 一、婚前契約第七条の監査手続について。

 二、王太子の公的行為の適正性について。


 王都の空は薄く曇り、雨の気配。

 イザベラは馬車の窓から石畳を見下ろす。


「殿下は――来ると思う?」


「来る。来ざるを得ない。**“名誉回復の請求権”**がこちらにある以上、黙っていると“敗北”になる」


「そうね。今日は、殿下に“正しい恥のかき方”を教える日」


「言い方……」


「優しいわよ?」


 馬車が止まる。

 評議室の扉が開く。

 ざわめき。視線。紙と羽根ペンの匂い。


 イザベラは真っ直ぐ歩いた。

 壇上の席――被害当事者代理の席に座る。

 正面、やや右。アレッサンドロが遅れて入室し、硬い顔で腰を下ろした。


 一瞬、目が合う。

 イザベラは微笑まない。

 王子も、視線を逸らさない。


(見ていなさい。私は泣かない。正しく、刃を振るう)


 評議長の槌が打たれた。


「開会する。――第一議題、“第七条”に基づく監査手続の件。文書局、報告を」


 淡々とした読み上げ。

 一次監査の経過。照会。訂正。控え。

 そして、最後に短く付け加えられた。


「なお、被害当事者は公開謝罪と名誉回復措置を請求可能であり、本件においては、既に当事者代理人より予告が届いている」


 視線が一斉にイザベラへ向く。

 彼女は立ち上がり、はっきりと告げた。


「請求します。

 一、公の場における侮辱の撤回と謝罪。

 二、ロッシ家の名誉回復文の王都全域掲示。

 三、違約金の一部をもって、孤児院および兵士遺族基金に寄付。名義は“王太子殿下とロッシ家連名”」


 会場がざわめく。

 アレッサンドロの眉が跳ね、すぐ、静まった。


「異議は」


 評議長の声。

 王子が立ち上がる。

 背筋は真っ直ぐ、声は低い。


「――異議なし。ただし、訂正を一つ。贈り物の件は私費であり、公費の不適切使用はなかった。公表済みのとおりだ」


「承知しました。訂正文の掲示、ありがとうございます。工房の名誉も守られました」


 イザベラが淡々と返す。

 そのやりとりを、記録係が正確に写した。

 小さな“貸し”が、紙の上で生まれた。


「では、第二議題へ移る――」


 評議長が言いかけ、手元の紙片に目を落とした。

 伝令が滑るように近づき、囁く。

 評議長の表情が、わずかに固くなる。


「追加資料が入った。“夜会録音の欠片”。当該音声は、当事者の名誉に配慮しつつ、必要箇所のみ再生する」


 空気が張り詰めた。

 低い、しかし鮮明な声が水晶から流れる。


《――彼女には、言わないでくれ》


《殿下……イザベラ様の前で、そんな》


《もうすぐ終わる。すべて、形式だ》


 ざわっ――

 イザベラは目を閉じ、すぐに開いた。

 アレッサンドロは微動だにせず、ただ拳を握る。


「……当該録音は、契約違反の故意性の疎明に足る」


 調査官カロリナが静かに言葉を置く。

 評議長が槌を打った。


「第七条、発動。爵位・権能の一部、七日間の凍結。以後、追加の違法行為が確認された場合、凍結は延長される。――本日はここまで」


 槌音。

 椅子が軋み、人々の囁きが渦を巻く。

 イザベラは深く礼をして席を立った。


 背後から、低い声。


「イザベラ」


 振り向くと、アレッサンドロがそこにいた。

 彼は、ほんのわずかに喉を鳴らし、言った。


「……訂正の掲示、礼を言う。工房を守ってくれた」


「正しいことをしただけです、殿下」


「おまえは、いつも正しい」


「では、今度は殿下の番です」


 イザベラは一礼し、視線を外した。

 彼の視線が、背に刺さる。

 痛くはない。ただ、熱い。


(さあ――ここから)


 ロッシ家の馬車が、石畳を静かに走り出す。

 雨粒が最初の一滴を落とし、世界の輪郭を少しだけ柔らかくした。



 王城の高塔の夜は、沈黙すらよく響いた。


 冷えた石壁を伝って、少女が一人、黒い外套の裾をたなびかせて歩く。

 その名は――カロリナ。王宮調査官。

 そして彼女の後ろをぴたりとついてくる影がもう一つ。


「……驚いたわ。あなたが“同行”を希望するなんて」


「調査官一人に任せるには申し訳なくて」


 フードで顔を隠したイザベラが苦笑した。

 手袋をした指先は、緊張でわずかに震えている。


「私は契約の“当事者”よ。本来なら同行は許されないけれど、“立会人”という名目なら問題ないのでしょう?」


「規則の限界ギリギリ。あなた、本当に危険なバランスで生きるのね」


「契約ってそういうものよ。紙一枚で人も国も左右する――薄氷の上」


 カロリナは、封印扉の前で立ち止まった。

 魔法印が淡く浮かぶ。

 彼女が鍵符を触れると、静かに扉が開いた。


「――ここが、王太子の私室書庫」


 香り立つ紙、積まれた箱、未整理の文書。

 イザベラは一歩踏み入れ、息を深く吸う。


(殿下……あなたが何を隠し、何を守ろうとしていたのか。今日は、知ることになる)


 カロリナが言った。


「対象は“婚前契約に関わる私的資料と交際関連物品”。あなたが提出した照会資料の正否を確かめる」


「感謝します。判断は貴女に委ねます」


「ええ。――私は調査官。“裁く”のは条文」


 


***


 


 机上の小箱を開けた瞬間、空気が変わった。

 緋色のリボンで結ばれた手紙が三通。

 そして、蒼玉の首飾りとお揃いの耳飾り。


 イザベラの瞳が細くなる。


「“対価贈与”。婚前契約中に、特定の第三者に贈答品を与えた場合、誠実義務違反にあたる――」


「第七条を支える補則三条目。ええ、理解しています」


 カロリナは手袋越しに手紙を開き、魔力灯の下にかざした。


《……君の瞳は、海より深い》


《彼女には言わない。すぐに終わる。君だけが、私の本心を――》


 読み終えたカロリナは、そっと封を戻した。


「この手紙は、あなた宛ではない」


「いいえ。間違いなく、“私の婚約期間中”の日付です」


「……決定的ですね」


 調査官は長く息を吐いた。


「王太子は、あなたを形式としながら別の令嬢に“心の契約”を行っていた。

 法廷では“誠実義務違反”として有効に扱われるでしょう」


「録音と手紙、そして贈与物。証拠が三点揃った」


「監査会で公開すれば、一撃です」


「――公開しません」


 カロリナが振り返る。


「……なぜ?」


「これは“最終手段”。まだ使わない。殿下に“逃げ道”を残さないため。

 私は、彼に――自分で歩かせたい」


「許すつもりはあるの?」


「許しは“契約の外”で行うもの。今は、ただ“条文どおり”に進めるだけ」


 イザベラの声音は静かだった。


 


***


 


 翌日。王宮監査会。


 大理石の床が冷たい。

 評議員、調査官、王家法務、そして――当事者。


 アレッサンドロは席に着いたが、表情は硬い。

 夜を徹して対策を練ったはずなのに、焦燥は隠し切れない。


 評議長が宣言する。


「第二次審問を始める。証拠提出者より口頭説明を許可する。ロッシ家令嬢――」


 イザベラが立ち上がり、深く礼をした。


「提出する証拠は、三点。

  一、宝飾工房の訂正控え。

  二、夜会録音の一部。

  三、交際記録を示す“物証”――蒼玉の耳飾りと、手紙」


 ざわめき。

 アレッサンドロの指が、椅子の肘掛けをひっかいた。


「ただし――」


 イザベラは続けた。


「手紙そのものの公開は、今この場ではいたしません。名誉を害しすぎる行為は、制度への信頼を損なうため」


 評議室が一瞬静かになる。

 調査官カロリナが目を細めた。


「しかし、必要とあらば提出は可能。封印下での保管を希望します」


 評議長がうなずく。


「……合理的な配慮と認める。調査官、証拠の真偽は?」


「三点すべて、真作と確認済み。日付・筆跡・魔力残滓、一致」


 その瞬間、アレッサンドロが立ち上がった。


「――待て」


 声は低く、震えていた。


「監査は理解する。だが、手紙の公開はやめろ。彼女は……関係ない」


「殿下」


 イザベラが静かに呼ぶ。


「“関係ない人間”に贈り物をして、私を侮辱したのですか?」


 沈黙。


「なら、条文どおりに“誠実義務違反”です」


 アレッサンドロは拳を握った。


(これが……イザベラか。

 私は――本当に、彼女を侮った)


 


***


 


 審問後、控室。


 アレッサンドロが静かに扉を閉め、イザベラの前に立った。

 侍従も、側近もいない。

 ただ二人。


「取引をしよう、イザベラ」


「取引?」


「手紙を出すな。監査の範囲で終わらせろ。……そうすれば、違約金を倍にして払う。名誉回復文も、私の名前だけで出す」


「……つまり、“自分の名誉だけは守りたい”と」


 イザベラは、目を細くして笑った。


「少し意外です。殿下は“名誉など気にしない”方だと思っていました」


「私は王太子だ。国の顔だ。

 ――そして、お前にだけは、軽蔑されたくなかった」


「はい?」


 一瞬、時間が止まった。

 イザベラは言葉を失った。

 喉が乾く。


 アレッサンドロは視線を逸らさず言った。


「お前が笑うとき、私の横にいてほしいと思った。

 それを――軽く扱った。自分でも理解できん。だが、今は……分かる」


 イザベラはゆっくり息を吐いた。


「殿下。これは“感情”ではなく、“契約”の償いです。

 あなたが言うべきことはただ一つ。『違約を認め、履行する』」


「……そうか」


 アレッサンドロは目を伏せた。


「ならば、条文どおりに――滅びるか」


「滅びませんわよ。殿下が“正しく滅び方を学べば”」


 


***


 


 その夜。


 王宮の掲示板に、新たな布告が貼られた。


《王太子アレッサンドロ・モレッティは、婚前契約違反を認め、これを詫びる。

 ロッシ家の名誉を毀損した件について謝意を表し、回復措置を取る。

 違約金の一部は孤児院および遺族基金に寄付する。以上》


 王都はざわめき、笑い、嗤い、そして――少しだけ感心した。


「殿下、生きて帰ったな」


「謝ったのか、本当に……?」


「ロッシ家の娘、すごいわね。王太子を跪かせたんだもの」


 


***


 


 イザベラは窓辺でその布告を読んだ。

 ルーチェが横で腕を組む。


「勝ったな」


「まだよ。これは“途中経過”。本番はここから」


「殿下は、落ちたと思うか?」


「ええ。落ちたわ。階段から滑り落ちた程度には」


「致命傷じゃないのか」


「致命傷にはしなかったの。……わざと」


 ルーチェが目を丸くする。


「なぜ」


「復讐で終わる物語は、短いでしょう?

 ――私が欲しいのは、“正しく再建する物語”よ」


 小さく笑ったその顔に、ルーチェは初めて“怒り以外の色”を見る。


「もしかして、まだ殿下を――」


「感情を語るのは“契約が終わってから”。

 それまでは、ただの“違約者”」


 イザベラはカーテンを閉じた。


「おやすみなさい、殿下。

 次は――あなたの番ですわ」



 七日の凍結は、長いようで短い。

 王都の朝は早いが、噂の朝はもっと早い。

 「王太子、謝罪の布告」「違約金の寄付」「ロッシ家の名誉回復掲示」――人は紙に書かれた文字を指でなぞり、それぞれの物語を勝手に読み始める。


 当のイザベラは、淡々としていた。

 静かに起き、静かに食べ、静かに書類に目を通す。

 ロッシ家に積もった“見えない汚れ”を、今のうちに落とすためだ。


「辺境の穀倉地、物流を見直すわ。凍結期間中に決裁を進める。王家の判を仰がなくてもできるところまで」


「――つまり、“殿下の権限が戻る前に”、改革の土台を固める」


 ルーチェが書類を受け取り、苦笑した。


「抜かりないな」


「念押しは契約の基本よ。口約束は、風で飛ぶもの」


「……それ、殿下の前でも言う?」


「言うわ」


 イザベラはペンを置いた。

 窓の向こうで、曇天が白く膨らむ。


「この七日が、殿下の“学習期間”になると良いのだけれど」


 


***


 


 七日目。

 王城・大広間。

 評議員、家臣、職人、市民代表。

 そして、王家の紋章の下に置かれた一つの台――“謝罪と誓約”の台。


 イザベラは最前列に立ち、腕を組まない。

 手を前に重ね、背筋だけで緊張を支える。

 これは“勝利宣言”ではない。

 制度を修復する儀式だ。


 アレッサンドロが入室した。

 濃紺の式服。肩章は外され、権能の一部凍結を示す徽章のみが胸で沈黙する。

 彼は視線を逸らさず、壇上に立った。


 評議長が告げる。


「王太子、発言を許可する」


 アレッサンドロは深く息を吸い、響く声で言った。


「私は、婚前契約の誠実義務に違反した。

 ロッシ家の名誉を傷つけた。

 国の制度への信頼を軽んじた。

 ――謝罪する」


 拍手は起きない。

 拍手は、祝福に対する合図だ。

 償いに対する合図は、沈黙だ。


「違約金は規定どおり納める。一部は孤児院と遺族基金に寄付する。

 加えて、王太子としての私的な財を処分し、貧民街の医療院に充てる。

 名誉回復文は王都全域に掲示した。さらに――」


 彼は言葉を探し、うっすら笑った。

 自嘲か、諧謔か、本人にも分からない笑み。


「――私は“恥のかき方”を学ぶ。公の場で何度でも。必要なだけ」


 その一文に、会場の空気がたしかに動いた。

 見物に来ていた年老いた女主人が、うんうんとうなずくのが見える。

 イザベラは、わずかに首を傾けた。


(合格。採点はまだだけど)


 評議長が続けた。


「本日の議題、二つ目。ロッシ家より“個別誓約”の案が提出されている。読み上げる」


 係官が羊皮紙を開く。


《今後、王太子は公の場で一個人を侮辱しない。

 矛先を制度に向けるべきときは制度に、個人に向けるべきときは私密の場で。

 ――これを“誓い”として、王都の子どもに分かる言葉で宣言すること》


 ざわり、と笑いが走った。

 子どもの言葉で、だって?

 それは確かに、国の顔にとっていちばん難しい約束だ。


 アレッサンドロがうなずいた。


「誓う。

 私は、誰かを玩具にしない。

 間違えたら、まず『ごめん』と言う。

 偉いから正しいのではなく、正しいから偉い、を覚える」


 イザベラの胸が、少しだけ痛んだ。

 それが何の痛みか、まだ名前を付けない。


 


***


 


 式は滞りなく終わり、凍結は解けた。

 王太子の権能の一部が戻る。

 しかし、王都は知っている。

 “戻る前と同じ”ではない、と。


 午後。

 王宮の温室庭園。

 珍しい白い葡萄の蔓が、陽を透かして天蓋のように広がる。


「ここに呼ぶなんて、珍しいわ」


「人目を避けるには悪くない場所だ」


 アレッサンドロは手袋を外し、指先で葉脈を撫でた。

 彼は無言のまま一度だけ息を整え、イザベラに向き直る。


「契約の写しは――持っているか」


「ええ」


 イザベラは肩掛けの内側から、角を保護した箱を取り出した。

 銀の封蝋は、すでに半分割れている。


「この“第七条の契約”。まだ“有効”よ。

 私が破棄の意向を示すまでは」


「……破棄してくれるか」


 直球。

 彼はいつだって、勝負どころでは直球を投げる。

 それでいて、これまでは逃げてばかりだった。


 イザベラは箱を見下ろし、ゆっくり首を振った。


「破棄はしない。――今はまだ」


 アレッサンドロが瞬きをする。

 けれど、表情は崩れない。

 恥のかき方を学んだ者は、沈黙の耐え方も少し学ぶ。


「ただし、“上塗り”はする。

 殿下、あなたのための新しい“紙”よ」


 イザベラは小さな羊皮紙を差し出した。

 前の契約より、薄い。

 簡素な言葉で、短い文。


《わたしたちは、約束を武器にしない》

《わたしたちは、話すとき、怒りの声の代わりに理由を探す》

《わたしたちは、嘘をついたら、一度だけやり直せる》

《二度目の嘘は、さよならの合図》


 アレッサンドロの喉が、かすかに鳴った。


「……これを、私に?」


「私たちに。

 “王国の契約”の上に、“人間の約束”を重ねる。

 法律の火は、心を燃やすための薪じゃない。

 ――暖を取るための灯だもの」


 彼は笑った。

 笑いながら、目を伏せる。

 ああ、こういう顔をするのか、とイザベラは一瞬だけ見惚れた。


「サインは……血判か?」


「墨でいいわ。手を切るのは仕事だけで十分よ」


 ふたりは並んで、台の上の羊皮紙に名前を書いた。

 イザベラ・ロッシ。アレッサンドロ・モレッティ。

 墨が乾くまでの短い沈黙のあいだ、温室の外で子どもたちの笑い声がした。


「なぜ、私を許す道を残した」


 やっと、王子が問う。


 イザベラは、葡萄の蔓越しに空を仰いだ。


「復讐で終わる物語は、短い。

 短い物語は、登場人物を賢くしない。

 賢くならない王太子は、国を傷つける」


「……だから、お前は私を“賢くする”方を選んだ」


「選んだけれど、甘くはない。

 次に嘘をついたら、私は容赦なく“第七条”を燃料にする。

 ――世界が暖まる前に、全部焼けるわ」


「こわいな」


「怖がってくれて嬉しい」


 イザベラはやっと、ふっと笑った。

 アレッサンドロも、少しだけ笑う。


「……私は、お前に軽蔑されたくなかったと、言ったな」


「言ったわね」


「今は、尊敬されたくなった」


「高望み」


「だろうな」


 白葡萄の影が、ふたりの肩を交互に撫でた。


 


***


 


 その後は、仕事だった。

 ロッシ家は辺境の物流改革に着手し、王家は手続きの透明化に着手した。

 文書局の受付に、子ども用の“簡易契約”パンフレットが置かれた。

 表紙には大きな文字。


《やくそくは、つよくて、やさしい》


 イザベラが監修した。

 アレッサンドロが、こっそり寄付した。

 カロリナが、チェックを入れた。


 王都の掲示板に、もう一枚の紙が増えた日。

 それは、誰の署名もない短い声明だった。


《誰かの恥で笑った日を、忘れないで。

 それを“学びの日”と呼べるうちは、私たちの国は大丈夫だ》


 作者不詳。

 だが、読む人は勝手に差出人を想像し、少しだけ背筋を伸ばした。


 


***


 


 夜。

 ロッシ家の書斎。

 イザベラは、古い箱を机に置いた。

 銀の封蝋が半分割れた、あの箱だ。


「燃やすのか?」


 扉の陰から、ルーチェが顔を出した。

 彼は蝋燭を二本持っている。


「ええ。――半分だけ」


「半分?」


「“第七条の写し”のうち、原本の余分な控えは処分する。

 権利を手放すんじゃない。“複製に頼る怠け心”を手放すだけ」


「詩人ぶって」


「法務も詩も、紙に書くのは同じよ」


 マッチが擦れ、短い火が生まれ、紙の端に移った。

 ぱちぱち、と乾いた音。

 灰が舞い、銀の封蝋が陽炎のように歪む。


 イザベラは煙を追わない。

 代わりに、もう一枚の紙を取り出す。

 温室で二人で署名した、薄い羊皮紙だ。


「“武器にしない”契約、だっけ」


「ええ。

 名前が要るわね……“灯契ともしびのちぎり”でどう?」


「悪くない」


 炎が小さくなる。

 灰皿に残った黒い欠片を、イザベラはそっと指で押しつぶした。


「――私を捨てるなら、国ごと滅びる。

 書いたのは私。

 けれど、国を滅ぼしたいわけじゃなかった」


「知ってる」


「じゃあ、次は“捨てない方”を、教える番」


「先生は厳しいのか?」


「ええ、とても」


 ふたりは笑い、蝋燭を吹き消した。

 部屋の暗がりは静かで、優しい。


 


***


 


 数か月後。

 王都の市場は人で溢れ、冬に向けた備蓄が動く。

 ロッシ家の穀物は辺境から滞りなく届き、飢えに泣く家は目に見えて減った。

 王家の帳簿は読みやすくなり、誰でも閲覧できる“要約版”が広間に置かれた。

 子どもたちのパンフレットは端がぼろぼろになっても大事に読まれ、時々持ち帰られ、また補充された。


 温室庭園。

 イザベラは葡萄の蔓に新しい支柱を結び、振り向いた。


「殿下、遅い」


「遅刻だ。罰は?」


「苗床運び、一往復」


「重労働だな」


「契約に書いてあるもの。“遅刻は筋肉で償う”って」


「そんな条文、いつ追加した」


「今」


「横暴」


「納得したなら、サインを」


「……はいはい」


 アレッサンドロは笑って肩をすくめ、鍬を担いだ。

 ふたりの足元で、柔らかな土が音を立てる。

 遠くで、鐘が鳴った。


「イザベラ」


「なに?」


「好きだ」


「――契約違反ではないの?」


「“好きと言うのは一日一回まで”の条文は、なかったはずだ」


「今、作る?」


「やめてくれ」


「冗談よ」


 イザベラは、目を細めた。

 心は、破れなかった。

 契約は、時々破った。

 紙は灰になる。

 けれど、約束は残る。

 だから、今日も人はサインをする。

 未来に、そして――互いに。


 風が、葡萄の葉を揺らした。

よろしければ何点でも構いませんので評価いただけると嬉しいです。

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