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46話

 目が覚めると、光ちゃんはすでに起きていた。

 ベッドの中に入ったまま、私のことをじーと見ていた。


「……ひ、光ちゃん……おはようっ……」

「……おはようございます」


 寝顔を見られていたかと思うと、恥ずかしくて顔が熱くなる。私は布団を引っ張て、目から下を隠した。


「……よく眠れた?」

「はい、よく眠れました。文香先輩は抱き枕の才能ありますね」


 光ちゃんは冗談を言って、笑顔を浮かべた。心なしかクマが少し薄くなったように見える。眠った効果あった。


「……何か飲む?」

「あ、私が……」


 ベッドから出ようとする光ちゃんの腕を私は掴んだ。


「今は……私に甘えて……頼りないかもだけど……」

「分かりました。文香先輩に甘えます」


 ベッドから起き上がり、お湯を沸かす。台所を物色すると、インスタントのコーヒーを見つけた。私と光ちゃん分のコーヒーを淹れる。

 光ちゃんはベッドから出ていた。ベッドに背中を預けて、座っていた。目を瞑り、頭が揺れている。

 コーヒーをチョイスしたのは失敗だったかも。少し後悔しながらも、光ちゃんにコーヒーを差し出した。


「ありがとうございます」

「……うん」


 私は光ちゃんの隣に座った。

 最近は寒くなってきたから、人肌が温かい。


「文香先輩」


 私の名前を呼ぶ光ちゃんの声は震えていた。


「私の……話、聞いてくれますか? 過去に犯した罪の話を……」


 光ちゃんを見ると、わずかに身体が震えていた。

 言いにくい話なのだろう。


「……うん」


 光ちゃんはポツリポツリと語り始めた。


***光視点***


 中学生の時、私は一人の男子生徒に告白された。


「七瀬のこと……気になってて……良かったら俺と付き合ってくれないか?」


 自分の容姿が周りより良いことを自覚したのは、中学生の時だと思う。告白されたことは何回もあった。だからといって、誰かと付き合うつもりはない。

 理由としては恋愛よりも友達と遊びたかったし、恋愛というものに、あまり興味がなかった。


「……」


 私は男子生徒の返事に困っていた。断る事は決まっているが、相手が友達の楓が片思いしている男子だったのだ。


「ごめんなさい……私、好きな人いるから……」

「そ、そうか……」


 好きな人いるから。便利な魔法の言葉である。

 男子生徒は肩を落として去っていく。

 楓には悪いことしちゃったかも。けど、仕方ないよね。

 当時の私は、この出来事を軽く考えていた。

 数日後、変な噂が流れていた。


「七瀬さんは男遊びが激しく、何人もの男子と付き合っているらしい」

「七瀬さんには社会人の恋人がいて、お小遣いを貰っているらしい」

「七瀬さんは頼めば誰でも寝るらしい」

「七瀬さんは友達の彼氏を寝取るらしい」


 全て根拠のない噂だった。

 なのに、噂が一人歩きし、他の学年にも伝わっていく。


「……」


 クラスメートは私と距離を置いた。友人に話しかけても、素っ気なくなり、私を避けるようになった。それでも、私と話してくれる友達はいた。


「光……大丈夫。私は信じてないから。噂もそのうち無くなると思うよ」

「……うん、ありがとう。嵐……」


 まあ、噂も自然に収まる。

 私は噂を放置して、収まるのを待ったが、いくら待てど噂が収まる様子はなく、むしろ炎上していった。


「……」


 ある日、学校に行くと、上履きが捨てられていた。

 ある日、机の中に入れていた教科書が無くなっていて、ゴミ箱に捨てられていた。

 ある日、机に暴言が書かれていた。

 どうして、私がこんな目に遭わないと行けないのか?

 私が一体、何をしたというのか?

 それから、話してくれる友達はいなくなり、私は完全に孤立した。いや、話してくれる友達はいなくなったけど、話しかけてくるいじめっ子がいた。


「光……! あんたが悪いのよ……! 私が好きだった人を盗るから……!」


 そう言って、私を睨みつけるのは楓だった。楓の周りには私を囲うように元友達が立っていた。いつも友好的に話しかけてくれていたのに、今は忌々しい視線を私に向けていた。


「あんたが居たせいで、私の好きな人も盗られた」

「可愛いからって調子に乗ってる……!」

「どうせ、影で私達の悪口を言ってたんでしょ!」


 否定をしても、私の言葉は誰にも届かない。

 家に帰ると、家には誰も居ない。

 両親は仕事で忙しく、家に帰ってくることはあまり無いし、あったとしても、話す事が何も無かった。

 無関心ではあったけど、生活費はくれたので、不自由することはなかった。


「……」


 鏡に自分の姿が映る。

 他の人よりも優れた容姿。この容姿のせいで私は虐められる。

 それなら、私はカッターを手に取った。刃を出して自分の顔に近づけた。

 そして、刃先が私の頬に触れた。

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