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45話

 不審者がカッターを私に向けた。


「っ……」


 恐怖に駆られ、私の身体は動かなくなる。


「死ね……!」


 不審者はカッターを私に向かって振りかざした。


「っ……」


 目を瞑るが、待っても痛みがやってこない。

 恐る恐る目を開けると、


「文香先輩、大丈夫ですか……?」


 光ちゃんが私の前に立ち、私の盾になっていた。


「光ちゃん……顔が……」


 光ちゃんの頬には、一筋の傷があった。血が出てきて、顎を伝い、地面に滴下する。


「光……! どうして……! どうして、邪魔するの……!」

「邪魔? 当然するよ」


 光ちゃんは私に顔を向けると、笑顔を向けた。


「文香先輩……巻き込んで、ごめんなさい」

「光ちゃん……」


 光ちゃんは不審者と向かい合った。


「っ……よく分かった。光が私と一緒にならないなら、壊してやる……!」


 不審者がカッターを光ちゃんに向けた。

 助けないと……!

 起き上がろうとするけど、足に力が入らない。

 光ちゃんにカッターが振り下ろされる瞬間、その腕を背後から蒼ちゃんが掴んだ。


「よう。てめぇ、私の彼女と友達に何してんだ?」

「誰……っ!?」


 蒼ちゃんが腕を強く握ると、不審者は顔を歪めて、カッターを落とした。


「光、文香。大丈夫……っ」


 蒼ちゃんは光ちゃんの頬の傷を見て、顔色を変えた。


「おい、光の傷、てめぇがやったのか……?」

「そうよ……! だから何?」

「そうか」


 次の瞬間、蒼ちゃんの蹴りが不審者の腹に直撃した。不審者は吹き飛ばされて、木にぶつかる。


「っ……」


 不審者はお腹を抱えて嘔吐した。

 蒼ちゃんが不審者に近寄る。不審者は蒼ちゃんを睨みつけるが一瞬で青ざめた。

 本気で怒っている蒼ちゃんは怖い。どんなに威勢が良かった人も一瞬で顔を青ざめる。


「……てめぇに選ばせてやる。パンチとキック、どっちがいい?」

「っ……」


 不審者は必死に顔を横に振る。目には涙を浮かべて、身体を小刻みに震わせていた。


「おいおい、贅沢だな。締め技がいいってことか?」

「ち、違う……いや、来ないで……!」


 さっきの不審者の威勢は消え去り、もう怯えている少女しかいない。

 まあ、不審者には悪いけど、蒼ちゃんの脅しをたっぷりと受けてもらおう。

 それから、警察と救急車が到着した。誰かが通報したのだろう。


***


 不審者騒動から一週間が経ったが、光ちゃんが学校に来ない。


「はぁ……」


 蒼ちゃんはすっかりと落ち込んでしまった。


「光……くっ、私がしっかり守ってやれば……!」

「蒼ちゃんは、しっかり守ってくれたと思う……」


 蒼ちゃんが間に合わなければ、光ちゃんは最悪死んでいたと思う。もちろん、私も。


「それに連絡もつかないし……うう、心配だ。やっぱり先生を脅して住所を聞き出して」

「ダメだよ」


 不審者騒動の際、やり過ぎと注意されたのに、そんなことをしたら停学処分である。


「光……」


 落ち込み度マックスな蒼ちゃん。

 蒼ちゃんも心配だけど、今は光ちゃんだ。

 心配になった私は土曜日に光ちゃんの家を訪ねることに。

 マンションの正面玄関でインターフォンを押す。


『はい』

「光ちゃん、文香だけど」


 あれ? 切れちゃった。

 首を傾げていると、自動ドアが開いた。

 私は中に進み、光ちゃんの家まで辿り着く。

 インターフォンを開けると、光ちゃんが出迎えてくれた。


「文香先輩、いらっしゃい」

「……お邪魔します……」


 いつものような元気はない。いつもなら、家に入った瞬間、ハグやらキスをしそうなのに……て。私が期待しているみたいじゃないか。


「今日は何しに来たんですか?」

「光ちゃんが心配で……」

「心配ですか……見ての通りで、私は元気ですよ」


 と、光ちゃんは言っているが、目の下にはクマが出来ていた。頬にはガーゼが貼ってあった。


「……」


 こういう時、何て言葉を掛けたら良いんだろう。

 友達が少ない私には難題だ。

 けど、このまま放っておく事は、ダメ……!

 光ちゃんはベッドには座っている。私は隣に座ると光ちゃんを抱きしめた。


「文香先輩?」

「この前……光ちゃんが抱きしめてくれて……少し楽になったから……」


 これが私の精一杯。少しでも、光ちゃんに元気になって欲しい。


「……文香先輩は優しいですね」

「……光ちゃんも優しいよ」

「……私は優しくないですよ」


 そう言いながら、光ちゃんは私と一緒にベッドに倒れ込んだ。そして、私の胸に顔を押し付ける。


「少し寝ても良いですか?」

「うん」

「後、頭も撫でてください」

「うん」


 私は光ちゃんの頭を撫でた。

 光ちゃんはすぐに眠ってしまった。


「ふぁ……」


 光ちゃんを抱きしめていたら眠くなってきた。

 目を閉じると、あっという間に夢の世界へと旅立った。

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