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42/50

42話

 流れとはいえ、光ちゃんの家に泊まることになった。

 よく考えてみれば、光ちゃんが手を出さないことは今までの経験上ないに等しい。


「……」


 ライオンの檻に迷い込んだウサギの気分である。


「文香先輩、何か飲みますか?」

「え、えーと……取り敢えず生で」

「……未成年ですよね?」

「……カフェオレで」


 緊張し過ぎて変なことを口走ってしまった。もちろん、お酒なんて飲んだことはない。

 光ちゃんが温かいカフェオレを淹れてくれた。

 私は一口飲むと、身体も心も温かくなる。


「生はないですけど、愛情たっぷり淹れました」

「……そっか」

「素っ気ないですね、美味しくなかったですか?」


 光ちゃんがしゅんと肩を落とした。


「いや、美味しいよ。うん、愛情の味がする…….!」

「ふふ、良かったです」


 それから、私はせめてもお礼として夕食を作った。とは言っても、インスタントしか無かったので、インスタントラーメンだけど、光ちゃんは満足してくれたようだ。

 夕食を食べ終えると、


「文香先輩、先にお風呂どうぞ」

「……ありがとう」


 光ちゃんの言葉に甘えて、先にお風呂を頂く。

 身体を洗い、湯船に浸かった。


「ふぅ……」


 光ちゃん、突入してこないよね……。

 警戒していたが、そんな事は無かった。仮にあっても非力な私には何も出来ないけど。

 風呂から出ると、着替えが用意されていた。光ちゃんに感謝だね。

 着替えるが、少しサイズが大きい。

 鏡を見ると、子供が大人の服を着たみたいだ。


「笑われそう……」


 私は洗面所間脱衣所を出る。


「光ちゃん、あがった」

「了解です……パジャマ似合ってますよ」

「……ありがとう」

「後、ドライヤーそこに置いてあるので」

「うん」


 私はドライヤーを手に取り髪を乾かす。

 三十分後、光ちゃんが上がってきた。


「文香先輩、私の髪も乾かしてください」

「……分かった」


 私はベッドに座り、光ちゃんは床に座った。


「上手ですね」

「そう……」


 褒められると悪い気はしない。

 髪を乾かし終えると、光ちゃんは口を開いた。


「この後、何かします?」

「……」


 特にやりたいことはない。


「ふぁ……」


 思わず欠伸が出た。


「もう、眠そうですね」

「今日は疲れたかも……」


 普段なら寝るにはまだ早い時間。けど、不審者のせいで疲れているのかも。


「じゃあ、寝ましょうか」

「……うん、布団はどこに?」

「布団? ありませんよ」

「……」


 ないてことは一緒に寝るってこと……!

 光ちゃんはベッドに上がると、私の横に寝転がった。


「さあ、寝ましょう」

「……」


 笑みを浮かべる光ちゃんはベッドをポンポンと叩いた。

 受け入れるしかない私は光ちゃんの隣に寝転がった。

 大丈夫。お風呂入った時も乱入とかなかったし……。


「文香先輩、私と同じ匂いですね」

「そ、それは……ボディソープとシャンプーを借りたから……」

「ふふ」


 光ちゃんが抱きしめてきた。柔らかくて良い匂いがする。私と同じ匂いが、と思うと鼓動が高鳴り、顔が熱くなった。


「文香先輩、これ」


 光ちゃんが左手を見せてきた。薬指には以前買ったペアルックの指輪がしてある。


「文香先輩も持ってます?」

「うん、鞄の中に……」

「では、一緒に付けて寝ましょう」


 私は鞄から指輪を取り出す。付けようとした時、光ちゃんが指輪を取った。


「私が付けてあげます」

「……」


 光ちゃんは私の前に膝をつくと、左手の薬指に指輪をつけた。


「結婚式みたいですね」

「っ……」

「参列者なし、神父なし、私達二人だけの秘密の結婚式。そう思うと、ロマンチックですね」

「……」


 光ちゃんの言う通り、ロマンチックである。


「では、誓いのキスを」

「っ……エ、エッチなことはしないって……」

「誓いのキスは神聖なものです」


 光ちゃんはそう言って、私にキスをした。


「じゃあ、次は初夜ですね」

「……初夜はエッチだから……」

「ふふ、そうですね。初夜はやめときましょう」


 やっぱり、油断できない。

 私達はベッドに入る。

 もちろん、エッチな事はしないけど、光ちゃんが私を抱きしめていた。


「文香先輩、私の抱き枕になりませんか?」

「……ならない」


 そんなに私の抱き心地が良いのか? 別に太っているわけではないけど。

 いつの間にか、瞼が重くなってきた。


「お眠ですね……おやすみなさい、文香先輩」


 光ちゃんの優しげな声と、おでこに柔らかな感触を感じた。

 それを最後に、私の意識は夢の世界に旅立った。

 私は夢を見た。

 ウェディングドレスを着た私と光ちゃんが、教会で二人きりの結婚式を挙げる夢。鐘の音が響き、ステンドガラスからは日の光が差していた。結婚式を終えた後、私は光ちゃんに押し倒された。


「今日は素敵な一日にしましょうね」


 そう言って、光ちゃんは私のドレスを脱がせていく。私は恥じらいながらもそれを受け入れて、私達の身体は重なっていった。

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