42話
流れとはいえ、光ちゃんの家に泊まることになった。
よく考えてみれば、光ちゃんが手を出さないことは今までの経験上ないに等しい。
「……」
ライオンの檻に迷い込んだウサギの気分である。
「文香先輩、何か飲みますか?」
「え、えーと……取り敢えず生で」
「……未成年ですよね?」
「……カフェオレで」
緊張し過ぎて変なことを口走ってしまった。もちろん、お酒なんて飲んだことはない。
光ちゃんが温かいカフェオレを淹れてくれた。
私は一口飲むと、身体も心も温かくなる。
「生はないですけど、愛情たっぷり淹れました」
「……そっか」
「素っ気ないですね、美味しくなかったですか?」
光ちゃんがしゅんと肩を落とした。
「いや、美味しいよ。うん、愛情の味がする…….!」
「ふふ、良かったです」
それから、私はせめてもお礼として夕食を作った。とは言っても、インスタントしか無かったので、インスタントラーメンだけど、光ちゃんは満足してくれたようだ。
夕食を食べ終えると、
「文香先輩、先にお風呂どうぞ」
「……ありがとう」
光ちゃんの言葉に甘えて、先にお風呂を頂く。
身体を洗い、湯船に浸かった。
「ふぅ……」
光ちゃん、突入してこないよね……。
警戒していたが、そんな事は無かった。仮にあっても非力な私には何も出来ないけど。
風呂から出ると、着替えが用意されていた。光ちゃんに感謝だね。
着替えるが、少しサイズが大きい。
鏡を見ると、子供が大人の服を着たみたいだ。
「笑われそう……」
私は洗面所間脱衣所を出る。
「光ちゃん、あがった」
「了解です……パジャマ似合ってますよ」
「……ありがとう」
「後、ドライヤーそこに置いてあるので」
「うん」
私はドライヤーを手に取り髪を乾かす。
三十分後、光ちゃんが上がってきた。
「文香先輩、私の髪も乾かしてください」
「……分かった」
私はベッドに座り、光ちゃんは床に座った。
「上手ですね」
「そう……」
褒められると悪い気はしない。
髪を乾かし終えると、光ちゃんは口を開いた。
「この後、何かします?」
「……」
特にやりたいことはない。
「ふぁ……」
思わず欠伸が出た。
「もう、眠そうですね」
「今日は疲れたかも……」
普段なら寝るにはまだ早い時間。けど、不審者のせいで疲れているのかも。
「じゃあ、寝ましょうか」
「……うん、布団はどこに?」
「布団? ありませんよ」
「……」
ないてことは一緒に寝るってこと……!
光ちゃんはベッドに上がると、私の横に寝転がった。
「さあ、寝ましょう」
「……」
笑みを浮かべる光ちゃんはベッドをポンポンと叩いた。
受け入れるしかない私は光ちゃんの隣に寝転がった。
大丈夫。お風呂入った時も乱入とかなかったし……。
「文香先輩、私と同じ匂いですね」
「そ、それは……ボディソープとシャンプーを借りたから……」
「ふふ」
光ちゃんが抱きしめてきた。柔らかくて良い匂いがする。私と同じ匂いが、と思うと鼓動が高鳴り、顔が熱くなった。
「文香先輩、これ」
光ちゃんが左手を見せてきた。薬指には以前買ったペアルックの指輪がしてある。
「文香先輩も持ってます?」
「うん、鞄の中に……」
「では、一緒に付けて寝ましょう」
私は鞄から指輪を取り出す。付けようとした時、光ちゃんが指輪を取った。
「私が付けてあげます」
「……」
光ちゃんは私の前に膝をつくと、左手の薬指に指輪をつけた。
「結婚式みたいですね」
「っ……」
「参列者なし、神父なし、私達二人だけの秘密の結婚式。そう思うと、ロマンチックですね」
「……」
光ちゃんの言う通り、ロマンチックである。
「では、誓いのキスを」
「っ……エ、エッチなことはしないって……」
「誓いのキスは神聖なものです」
光ちゃんはそう言って、私にキスをした。
「じゃあ、次は初夜ですね」
「……初夜はエッチだから……」
「ふふ、そうですね。初夜はやめときましょう」
やっぱり、油断できない。
私達はベッドに入る。
もちろん、エッチな事はしないけど、光ちゃんが私を抱きしめていた。
「文香先輩、私の抱き枕になりませんか?」
「……ならない」
そんなに私の抱き心地が良いのか? 別に太っているわけではないけど。
いつの間にか、瞼が重くなってきた。
「お眠ですね……おやすみなさい、文香先輩」
光ちゃんの優しげな声と、おでこに柔らかな感触を感じた。
それを最後に、私の意識は夢の世界に旅立った。
私は夢を見た。
ウェディングドレスを着た私と光ちゃんが、教会で二人きりの結婚式を挙げる夢。鐘の音が響き、ステンドガラスからは日の光が差していた。結婚式を終えた後、私は光ちゃんに押し倒された。
「今日は素敵な一日にしましょうね」
そう言って、光ちゃんは私のドレスを脱がせていく。私は恥じらいながらもそれを受け入れて、私達の身体は重なっていった。




