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39話

 私が学校で最も嫌いな行事は体育祭である。

 運動が全然出来ない私は体育祭で活躍できない当然。むしろ迷惑を掛けてしまう。

 だから、体育祭はできるだけ存在感を無くすのだ。

 私と正反対に神によって運動神経特化に設計されたとしか思えない蒼ちゃんは、体育祭活躍間違いなし。


「よし! 勝つぞ!」

「「「おお!」」」


 黒板の前に立ち、蒼ちゃんが声を上げると、クラスメートがこだまする。


「……」


 私は教室の隅で、背景と同化する様に努めていた。

 体育祭の種目はバレーボール、バスケ、卓球、ソフトボールがあり、男女別々である。

 そして、必ず一人一つは参加しないといけない。

 私は平和な卓球で、蒼ちゃんはバレーボールとバスケである。


「……負けた……」


 体育祭はトーナメント形式で私は初戦敗退してしまった。対戦相手も初心者だったけど、私は空振りしまくりあっさりと負けた。

 私の役目は終わり、後は応援するだけだ。

 バレーボールの試合を見に行くと、人だかりが出来ていた。


「しっかり……!」

「大丈夫、傷は浅いわ」


 一体、何が……?


「……大丈夫だ! 私はまだやれる……!」


 そう言って立ち上がったのはマッチョな女子生徒だった。一瞬、男だと思ったけど、可愛いらしい三つ編みのおさげが二つあった。


「バレー部の部長として負けるわけにはいかない……!」

「先輩、そのいきだぜ……!」


 対戦相手は蒼ちゃんのようだ。


「待たせたな……!」


 三つ編みの女子生徒はコートに戻っていく。


「夏目蒼……! 手加減は無用だ! 本気でこい!」

「遠慮なくいかせてもらうぜ!」


 熱血漫画みたいだ。ここから、熱い試合が始まるに違いない。

 周りを見ると、バレー部部長の勇姿に涙している人もいた。

 ホイッスルが鳴る。蒼ちゃんのサーブだ。

 蒼ちゃんがボールを高く上げると、ジャンプしてボールを打った瞬間、ボールが消えた。


「ぐっ……」


 パンと乾いた音とボールが観客の方へ飛んでいく。そして、三つ編みの女子生徒をぶっ飛び、壁まで転がっていく。


「部長……!」


 チームメイトが駆け寄ると、三つ編みの女子生徒は立ち上がった。


「くっ……恐ろしいサーブだ……! 私が取るだけで、この様とは……!」


 三つ編みの女子生徒の腕はプルプルと震えて赤くなっていた。


「先輩も私のサーブを取るなんて大したものです」

「まあな! これでもバレー部を背負ってるんだ……! 負けるわけにはいかねえよ!」


 バレーボール盛り上がってるな。

 私は体育館を出た。

 うん、絶対に蒼ちゃんとはバレーボールはしない。

 適当に校舎内をぶらつく。体育祭のせいで、校舎には人があまりいない。少し新鮮な気分だ。


「あっ、文香先輩!」

「……光ちゃん」


 光ちゃんとばったり遭遇してしまった。


「サボりですか?」

「違う……初戦で負けたからやる事ないだけ」

「なるほど……文香先輩は運動苦手ですもんね」

「……光ちゃんは?」

「私はソフトボールで、二回戦で負けちゃいました」

「……そう」


 ソフトボール……私なら、絶対に無理だ。


「蒼ちゃんの応援行かないの?」

「うーん……私が応援しなくても、蒼先輩は負けませんし」

「でも、光ちゃんが応援した方が喜ぶと思う」


 きっと、蒼ちゃんのやる気も高まるはずだ。

 いや、今以上に高まったら死人が出るかも。


「そうですね……でも、人多そうなのでやめておきます」


 蒼ちゃん、人混みに負けてしまった。


「それにしても、文香先輩の体操着姿新鮮ですね」

「……」


 光ちゃんから向けられる視線に私は手で身体を隠す。光ちゃんは私の耳元で囁いた。


「……イタズラしたくなってきました……」


 光ちゃんは私の手を引くと、空き教室に連れ込まれてしまった。


「ふふ」


 光ちゃんからの視線に身の危険を感じた。それは正しいけど。


「文香先輩」


 光ちゃんは私を抱きしめた。そして、首筋に顔を埋めてきた。


「すぅ」

「っ……」


 臭いを嗅がれてる……!

 光ちゃんから離れようとするが、離れることはできない。


「汗の匂いしますね」

「臭いなら、離して……」

「ふふ、私は好きですよ」

「っ……光ちゃんは変態なの?」

「今更ですか?」


 そう言えば、光ちゃんにメイドの格好とかさせられたな……。


「そうだ、文香先輩も汗の匂い嗅いでみます?」


 光ちゃんはジャージのファスナーを開ける。


「いや、いい……」

「遠慮しなくても良いんですよ?」

「してない……」

「残念です」


 光ちゃんは肩をすくめた。


「文香先輩はブルマも似合いそうですね。今度用意するので履いてください」

「……いや」

「ふふ」


 光ちゃんは私の顎を持ち上げる。


「拒否権はないですよ」


 そう言って、光ちゃんは私にキスをした。

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