30話
ある日の放課後。
私、蒼ちゃん、光ちゃんの三人でファミレスに来ていた。
「もうすぐ文化祭ですね、蒼先輩と文香先輩のクラスは何をやるんですか?」
「……私達のクラスは展示会だ」
「そうなんですね。どんな物を展示するんですか?」
「一人一人、テーマ決めて……それのアート作品を作ってこいて……」
「なるほど……」
蒼ちゃんの元気がないのも、無理がないことだ。
クラスの出し物が決まらずに、案だけが出てくる状態であった。そこで学級委員長が、クジを作り、結果展示会になった。
「はぁ……」
おかけで、蒼ちゃんのテンションは低空飛行のままだ。私として、変な出し物に決まらずに安心だけど。
「……光ちゃんのクラスは何やるの?」
「うちのクラスは、映画制作です。私、ヒロイン役ですよ」
「なっ……光がヒロインだと……! も、もしかして、キスシーンはあるのかっ……?」
動揺した蒼ちゃんが光ちゃんに顔を近づけた。光ちゃんは頬を赤らめながら、答える。
「キスはなくて、ハグとかはありますけど……相手も男装した女子なので……後、蒼先輩……顔近いです」
「あっ……悪い……」
顔を赤くした蒼ちゃんは慌てて光ちゃんから離れた。光ちゃんから目を逸らして、ぽりぽりと頬をかく。
「脚本とかも、一から内容を作るみたいで……内容は観てからのお楽しみです」
「た、楽しみだな……絶対に行く……」
「ええ、蒼先輩も文香先輩も絶対に見に来てください」
光ちゃんがヒロインの映画。光ちゃん、演技とか得意だから名演技になりそうだ。特に悪女としては。
「の、飲み物取ってくる……!」
蒼ちゃんは席を立ち、ドリンクバーへと向かっていった。
「はぁ……文化祭、めんどうですね」
さっきまでのキラキラで可愛らしい雰囲気とは一転、光ちゃんはため息を吐いてそう言った。
やっぱり、名演技だ。
「……光ちゃんは文化祭嫌い?」
「……嫌いですね。行事自体そもそも好きじゃないです。文香先輩はどうですか?」
「私も文化祭とかは、好きじゃない……」
「そうですよね。見るからに陰キャの文香先輩にとっては、行事なんて拷問ですよね」
「……陰キャだけど……」
腹が立ったので、光ちゃんから目を逸らした。
「もう、拗ねないでくださいよ」
「……」
「……そんな拗ねた可愛い顔してるとキスしたくなります」
「今機嫌直った。うん、超ご機嫌」
こんな人目の多いところでキスされたら、溜まった物じゃない。
「残念です」
光ちゃんは肩を落とすと、アイスコーヒーを一口飲む。
「そう言えば、アート作品ですか、文香先輩は何を作りますか?」
「……まだ、決めてない」
学級委員長曰く、テーマは各自自由に決めて良い、て言ってたけど……そもそも、アートが何か分からない。なので、目の前の光ちゃんに訊いてみた。
「アート、て何……?」
「アートですか……分かりません。取り敢えず、それっぽい物作れば良いと思いますよ。文化祭なんて楽しければ良いみたいな空気じゃないですか」
「……適当」
「適当な私が好きって言ったのは文香先輩ですよ?」
そんなこと言ったけ……?
記憶を掘り返してみるが、言った記憶はない。
「……そんなこと言ってない」
「そうですね、私の捏造でした」
「……」
油断するとすぐに揶揄ってくる。
「アート作品……では、写真集とかどうですか? ふとした日常の風景、甘いスイーツ」
光ちゃんはスマホを操作すると、私に写真を見せてきた。
「そして、イケナイメイドとか」
「っ……」
写真は私がメイド服を着た物だ。
スマホに手を伸ばすけど、光ちゃんに簡単に避けられてしまった。
「……絶対に却下」
「ふふ、残念です」
と、蒼ちゃんが戻ってきた。
「蒼先輩は、アート作品何作るか決めましたか?」
「私は……まだだ。そもそも、美術自体苦手だからな……」
「蒼ちゃんの美術レベルは幼稚園児レベル」
「なっ……そこまで酷くは……」
「ないと言い切れる?」
「……」
蒼ちゃんは目を逸らした。どうやら、言い切れなかったようだ。
もし、ステータスが表示できるなら、蒼ちゃんは運動神経に全振りだろう。
「蒼先輩、美術苦手なんですね。今度、作品見てみたいです」
「……いや、それは……」
光ちゃんのお願いに蒼ちゃんは言い淀んだ。恋人からのお願いは断り難いようだ。
「い、いつか……見せる」
「いつか、ですか……」
しゅんと肩を落とす光ちゃん。そんな落ち込んだ光ちゃんに私はアドバイスした。
「光ちゃん、文化祭の展示会で見れる」
「あ、そうですね。アート作品の展示ですもんね」
ぱぁと花を咲かせる光ちゃんと、顔を青くする蒼ちゃん。
「蒼ちゃん、作品作り頑張ろう」
「蒼先輩、応援してます」
「お、おう……頑張る……て、文香も作るんだぞ」
「……うん、私も頑張る」




