27話
私は台所に立つ。
スマホでオムライスの作り方を調べる。
「なるほど……」
ようするに、玉ねぎと鶏肉を細かく切って、バター入れてご飯と玉ねぎと鶏肉を入れて焼く。ケチャップと塩胡椒で味付けして、焼いた卵を被せてやれば完成か。
「いけるかも……」
私は早速トライしてみた。
「……できた」
完成したけど、卵は所々破れて見た目は悪い。
味は……まあ、少し味見したし大丈夫……たぶん。
最後にケチャップで、光ちゃんリクエストの文字を書こうとした時、
「あ……」
ケチャップが勢い良く飛び出てきた。
「……」
最後の最後で失敗したが、仕方のないことだ。
私はオムライスを持ち、光ちゃんの元へ運ぶ。
「お待たせ」
「美味しそうな匂いですね」
私がオムライスをテーブルの上に置くと、光ちゃんは首を傾げた。
「ごめん……最後で失敗した」
「そうですか……まあ、仕方ないですね。このオムライスにタイトルをつけるなら『ドジっ子メイドが作った初めてのオムライス』て、どうですか?」
「私は……ドジっ子じゃない……」
「ふふ」
光ちゃんは笑った後、私の事を見つめて、言った。
「メイドには特別な魔法がありますよね?」
「特別な魔法……?」
私が呟くと、光ちゃんは手でハートを作った。
思い当たる事はあるけど、理解したくない。
「……わ、わかんない……」
「美味しくなる魔法です」
「……大丈夫、美味しいと思うから……」
「文香先輩」
「はい……」
「これは命令です」
「……」
逃げ場はなし、やるしかない……。
震える手でハートを作る。顔が湯気が出るほど熱くなりながらも、口を開いた。
「お、美味しくなれ……萌え、萌え……きゅ、きゅん……」
は、恥ずかしいけど、言い切った……!
シャッター音が聞こえてきた。
「文香先輩が、可愛かったので写真撮っちゃいました!」
光ちゃんがスマホで撮った写真を見せる。メイド服姿の私が顔を赤くして、ハートを作っていた。
「け、消して……」
「嫌です。私の宝物にします」
「っ……」
「あんまりわがまま言うと……蒼先輩に間違って送るかもしれません」
「……光ちゃんの宝物にしてください」
「ふふ、文香先輩は可愛いですね」
私は脅迫に屈してしまった。
光ちゃんに新たな弱みを握らせてしまった。
「では、良い写真も取れたことですし……いただきます」
光ちゃんはスプーンを手に取ると、オムライスを一口食べた。
「……どう?」
「美味しいですよ」
「良かった……」
ほっと胸を撫で下ろすと、グーと間抜けな音が鳴った。
「腹ペコメイドさんの為に、少し上げますね」
「……ありがとう」
小皿とスプーンを持って来ようと思ったけど、光ちゃんはスプーンでオムライスを掬うと、私の口元に運ぶ。
「どうぞ」
「……メ、メイドとして……ご主人様に食べさせてもらうのは……」
「うんうん、奉仕の精神を持つ文香先輩も良いですけど、ご主人様の命令は絶対ですよ」
「……」
私は大人しく口を開けた。
「小さなお口が可愛いですね。まるで、親鳥になった気分です」
それは私が雛て、こと?
光ちゃんが私の口にオムライスを入れた。
「もっと、どうぞ」
それから、光ちゃんは私にあーんを続けた。結局オムライスの半分くらいは私が食べてしまった。
食器を片付けて、部屋に戻ると、光ちゃんはベッドで横になっていた。
「ご飯の後はお昼寝ですよ。さあ、文香先輩も隣をどうぞ」
光ちゃんはベッドを叩いた。
ベッドは一人用だけど、私は小柄な為、密着すれば寝ることができる。
「メ、メイドとして」
「ご主人様の命令は?」
「……絶対です」
「よろしい」
もう、光ちゃんには口論で勝てる気がしない。
従順なメイドの私は光ちゃんの隣に寝転がった。
「ふふ」
光ちゃんは私を抱きしめた。
「……」
夏休みが終わったばかりだから、まだ暑いし、それに恥ずかしい。
「文香先輩、どうしてそっち向いてるんですか?」
「……」
私は恥ずかしさのあまり、光ちゃんの反対方向を向いていた。
「こっち見てくださいよ」
光ちゃんが私の頬を突く。それでも、向かないでいると、光ちゃんは私の耳元で囁いた。
「こっち向かないと、悪戯しちゃいますよ」
「っ……」
嫌な予感がし、慌てて光ちゃんの方へ向く。
「あ、残念です……」
光ちゃんとの距離が近い。後少し顔を近づけたらキスできてしまう。
「ちゅ」
そんなことを考えていたら、光ちゃんに唇を奪われてしまった。
「ケチャップの味がしますね」
「オムライス食べたから……」
「なるほど……」
それから、何度か唇を重ねた。
「文香先輩、キスに慣れてきましたか?」
「はぁ、はぁ……」
キスに慣れる……? そんなわけない。
息も絶え絶えだし、心臓も高鳴って破裂しそう。
「ふぁ……」
光ちゃんが欠伸をすると、目元を擦る。
「眠くなったので、寝ますね」
光ちゃんは私を抱きしめると、すやすやと寝息を立て始めた。
「……」
しっかりとホールドされてるから、脱出は無理。
諦めた私は光ちゃんの抱き枕になることにした。
「……」
それにして、心臓の高鳴りが全然収まらない。これも、無理やりキスしてくる光ちゃんのせいだ。
光ちゃんを睨むけど、そんな内心は知らずか気持ち良さそうに寝ている。
私も目を瞑ることにした。寝れる気はしないけど。




