26話
土曜日。
光ちゃんとの約束を果たす為、私は光ちゃんの家に向かっていた。
「……この辺だよね……」
メッセージで送られてきた住所を元に辿り着いたのはマンションだった。
自動ドアから入ると、インターフォンが設置されていた。
部屋の番号押せば良いのかな……? でも、間違ってたら……?
他の人の家なんて、蒼ちゃんの家しか行った事がないから参考にならない。
あれこれと悩んでいると、内側の自動ドアが開いた。
「文香先輩!」
「光ちゃん……」
「もう、遅いので迎えに来ました」
「うっ……ごめん」
光ちゃんに案内され、部屋に辿り着いた。
「いらっしゃい。どうですか、私の家は?」
「えーと……綺麗」
少なくても、蒼ちゃんの部屋よりは片付いていた。
「文香先輩は私のお母さんですか? 妹ポジションの次はお母さんポジションを狙ってます?」
「ね、狙ってないから……!」
それにしても、この間取り……。
部屋が一つ、台所、トイレ、脱衣所、お風呂。
まるで一人暮らしのようだ。
「……光ちゃんて、一人暮らし?」
訊くと、光ちゃんの表情が一瞬固まった。
「おっ、鋭いですね……そうですよ」
「……」
何か特別な事情があるのかな?
「……さて、お話はここまでにして、本題に入りましょう!」
「ほん、だい……?」
「文香先輩はここに何をしに来たか、忘れましたか?」
「……光ちゃんへの恩返し」
「そうです……と、言う事で文香先輩にはこれを着て貰います!」
光ちゃんはクローゼットを開ける。中から取り出したのは、黒と白のフリフリな衣装。世間一般で言うメイド服。
「メイド服……」
「ふふ……文香先輩にはメイド服を着て貰って、今日一日私にご奉仕をして貰います!」
「っ……」
このヒラヒラで……メルヘンチックな物……私が着る……! そして、ご奉仕……!
「む、無理……!」
私が後ずさると、光ちゃんが一歩詰めてきた。
「無理、ですか……」
そして、光ちゃんは私の唇に指で触れ、顔を近づけてきた。
「文香先輩には選択権はありません」
「っ……」
「後、ガータベルトと下着も用意したので着替えてくださいね」
「うぅ……」
「文香先輩が着替えられないなら、私が着替えさせますけど」
「……自分で着る」
私は光ちゃんから着替え一式を受け取ると、脱衣所に入った。
着替え終わり、自分の姿を鏡で見る。
私の見た目は、地味系な小柄な女子だ。それがメイド服を着ても地味なメイドの完成である。
それにしても、光ちゃんのことだからスカート丈は超ミニだと思ったけど、膝丈まであった。
「文香先輩、着替え終わりました?」
「……うん」
私が答えると、脱衣所の扉が開いた。光ちゃんは私のメイド姿をジロジロと眺める。
「……変じゃない?」
「変じゃないです! とても、似合ってますよ」
「そっか」
ほっと胸を撫で下ろす。
まあ、似合っていても、どちらでも良いんだけど……。
「良かったら、ずっと私のメイドしませんか?」
「……しない。今日だけ」
「残念です」
光ちゃんはやれやれとした様子で肩を落とした。
「下着もちゃんと着けてますか?」
「……着けてる」
「えい」
光ちゃんは私のスカートの裾を掴むと、捲り上げた。
「っ……」
一瞬、状況が理解できなかったが、私はすぐにスカートの裾を押さえる。
「うんうん、ちゃんと着けてますね」
「うぅ……」
顔が熱い。鏡を見ると、真っ赤になっていた。
「では、メイドとしての初の仕事ですが……」
光ちゃんは少し間を空けた後、言葉を続けた。
「写真撮影です!」
「写真撮影……?」
首を傾げていると、光ちゃんが私にスマホのカメラを向けた。
「文香先輩には、写真のモデルになってもらいます」
「モ、モデル……っ!?」
メイド服のままで、写真を撮られると……!
「む、無理……!」
「文香先輩……大丈夫です。安心して私に身を任せてください」
光ちゃんが聖母のような笑みで、そう言ってるが、安心できる要素が何も無い。
「それに、文香先輩に拒否権はないですよ。それでも、抵抗するなら」
光ちゃんは私に近寄ると、私の太ももを指でなぞった。
「イケナイメイドさんの写真になっちゃいます」
「イケナイ……メイド……」
「分かりやすく言うと……エッチな写真」
「っ……」
顔が熱くなり、光ちゃんから離れた。
「その……抵抗しないから……」
「あら、残念です」
光ちゃんは肩を落とした。抵抗したら、どんな目に遭わされてたか……想像するだけで、身体が震えてくる。
「写真撮影を始めるので、私の指示通りポーズお願いします」
「……うん」
そして、写真撮影が始まった。
一時間後、私は部屋の隅で体育座りをしていた。
「光ちゃんの嘘つき……」
「嘘なんて言ってないですよ」
「……私のパンチラ撮ったくせに……」
頬を膨らませると、光ちゃんは笑った。
「文香先輩……パンチラは私的には健全だと思うんです。だって、もしパンチラがエロい物であればアニメや漫画のパンチラは全て十八禁になります」
「た、確かに……」
そう言われると、パンチラて健全と思えてくる……!
「それに、私が下着を用意した時点でパンチラがあることは、理解していただかないと」
「え? 私が悪いの……?」
「ええ、文香先輩が悪いです」
「……」
全然腑に落ちない。
「では、写真撮影が終わったので……次は私のお昼ご飯を作ってください。食材は用意しているのでオムライスでお願いします」
「お昼ご飯……オムライス……」
オムライス、作ったことない……。
「あ、ケチャップで『光ちゃん大好き』て書いてください」
「……」
「では、健闘を祈ります!」
光ちゃんは敬礼すると、部屋に戻って行った。




