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BL

箱の中の原材料

作者: 相沢ごはん

pixiv、個人サイト(ブログ)にも同様の文章を投稿しております。


(ご都合主義のゆるふわ設定なので、細かいことは気にせずふんわり読んでいただけると助かります)

「島田先輩」

 夕方のサークルボックスで、朝比奈に名前を呼ばれた。ふたりきりだし、狭いボックス内でわざわざ名前を呼ばなくてもいいよ、と思い、そう言ったことがあるのだが、「島田先輩、集中してると返事してくれないじゃないですか」と朝比奈は言う。「そうだっけ」と答えると、「そうですよ。でも、名前を呼ぶと、集中してても気づいて返事をしてくれるんでそうしてますし、今後もそうします」と言われた。そうなのか。

「搾菜ってあるじゃないですか」

 顔を上げると、テーブルを挟んで向かいに座った朝比奈は、手元の紙に視線を落としたまま、作業を止めずに話し始める。漫画を描いているのだ。

「搾菜。『アイアムアヒーロー』の走馬灯だ」

 搾菜と聞いて、ゾンビ漫画のタイトルを思い出したので、そのまま伝える。

「そう! あのシーンいいですよね! 僕、『アイアムアヒーロー』を読んで、初めて搾菜というものを知りました」

 朝比奈の声はうれしそうに弾む。

「そうなんだ」

「走馬灯に出てくるくらいおいしいのかなって」

「あれは、搾菜のおいしさを表現したシーンではないよ、たぶん」

 俺の言葉に、わかってますよ、と朝比奈は少しすねたように言い、上目遣いでこちらを見た。顔がいいので、うっかりかわいく見えてしまう。

「それ以来、搾菜ってたまに食べてるんですけど、こないだ、ふと思ったんですよ。気に入って食べてる、この搾菜ってやつ。そもそもなんなんだろうって」

「そういや、知らないな。タケノコを加工したなにかとかじゃないの?」

「それはメンマじゃないですか」

「ああ、そっか」

 メンマも搾菜も同じような瓶に入っているイメージなので、頭の中でごちゃごちゃになっている。

「原材料はなんだろうって思って、そういうときって、まず、瓶のラベルを確認するじゃないですか」

「うん」

「原材料、搾菜って書いてあって」

「ほう。つまり、搾菜って植物があるんだ」

 そう言ってから、急に自信がなくなり、「植物だよな?」と確認してしまう。

「植物です」

 朝比奈がうなずき、続ける。

「僕、スマホで調べたんですよ、搾菜を」

「まあ、そうするよね」

「カラシナの変種だそうです。アブラナ科の植物で、瘤のようにふくらんだ茎の部分を漬物にしたものが、我々の口にしている搾菜」

 そう言われても、想像もできないくらいに知らない植物だ。

「知らない植物だからか、なんだかピンとこないな。カラシナは知ってるけど」

「ですよね。正体がなにかわからずに食べてるものって、結構あるのかもしれないなあ、と思って。思っただけですけど」

 朝比奈は言い、

「それで、あのう」

 もにょもにょと続けて、

「なに?」

「僕、先輩の正体、もっと知りたいなって思ってます」

 突然、そんなことを言ってきた。

「なんで急に恋が始まりそうなこと言うの?」

 ちょっとおもしろくなってしまい、笑いながらそう尋ねたけれど、朝比奈は端正な顔に曖昧な笑みを浮かべるだけで、答えてはくれなかった。


   *


「島田先輩、ロイヤルコペンハーゲンって知ってます?」

 みんなが帰ってしまった夕方のサークルボックスで、ふたりきりになった途端、朝比奈が口を開いた。

「なんだろう、パン?」

「違います。コッペパンを連想したでしょう」

「じゃあ、紅茶」

「違います。ロイヤルミルクティーを連想しましたね」

「うーん、アイスクリーム」

「違います。ハーゲンダッツでもないです」

 俺の連想したものをことごとく当てられて、「おまえ、名探偵かよ」と笑うと、「そんなの、誰だってわかりますよ」と朝比奈はどことなくうれしそうに言い、「正解は、陶磁器のメーカーです。高級な」と答えを教えてくれる。

「こういうやつです」

 朝比奈は俺の目の前に自分のスマホを差し出し、画面を見せた。白地に青の植物のような模様が入った、上品な食器の写真が表示されている。

「ああ、なんか見たことあるかも。素敵なやつだ」

 俺の言葉に、朝比奈はパチパチと瞬きをして、「素敵なやつ」と呟いて、幸福そうに笑った。

 俺と朝比奈は、大学の大衆文化研究会というサークルに在籍している。映画やアニメ、ドラマなどの映像作品から、漫画や小説、ゲームなど、ポップカルチャーを幅広く研究するための会である。本当に研究をしているのかと問われると、言葉を濁してしまうような、オタクが集まって楽しんでいるだけのゆるいサークルだ。

 俺は、思い立って、ボックス内に代々放置されてきた漫画や小説を片っ端から読んでいる最中で、朝比奈は朝比奈で思い立ったようで、ぺらぺらのコピー用紙にゲルインクのボールペンで漫画を描いている最中だ。なので、このふたりが、いつも最後までボックスに残ることになる。一度、朝比奈に、漫画をデジタルで描いたりしないのかと尋ねたことがある。「デジタルだと、パソコンとかタブレットとか要るでしょ。ボックスで作業できないじゃないですか」と朝比奈は言っていた。家で作業すればいいじゃん、とは思ったが、家では集中できないのかもしれない。その気持ちはわかる。それ以来、朝比奈がぺらぺらの紙にボールペンで漫画を描いているのを見てもなんとも思わなくなった。

「うちにも、こういうティーセットみたいなのあって」

 朝比奈は、ロイヤルコペンハーゲンの話を続ける。

「おまえんち、お金持ちなの?」

 先ほど見せられた画面に表示されていた食器の値段を思い出した。

「いえ、別に普通です」

 朝比奈は言う。

「ある日、母に聞いたんですよ。これってロイヤルコペンハーゲンだよね? って」

「うん」

「そしたら、違うって。それは偽物だって言われちゃって」

「偽物とかあるんだ」

「正確には、似せて作ってある別物らしいんですけど」

「似せ物だ」

「ちなみに、これがうちにあるロイヤルコペンハーゲン風のティーセットです」

 朝比奈は、再び俺にスマホの画面を見せた。白地に青の植物のような模様が入った、上品な食器の写真だ。背景が実家の食卓らしきところが、ちぐはぐでいい。

「すっごく似てる」

「こんなふうに、本当は別物なのに、これだ! って信じちゃってるものって、他にもあるのかもって」

「哲学的なこと言うね」

 俺の相槌に、朝比奈はしばし沈黙したのち、

「先輩って、実は女性だったりしないですよね?」

 などとぬかした。

「しないよ。生まれたときから男だよ」

 別に女性的な顔立ちや体形をしているわけでもない、ただの平凡な大学生の俺のどこを見てそんなことを考えたのか。朝比奈はときどき、よくわからない。そもそも、今年の春に知り合ったばかりの朝比奈のことを、俺はそんなには知らないのだ。

「ですよね」

 朝比奈はがっかりした様子で、小さなため息を吐いた。

「なんで溜め息吐くんだよ。失礼なやつだな。別に男でもいいだろ」

「そうか。まあ、そうですよね。別に男性でもいいです」

 朝比奈は急に元気になり、そんなことを言う。その様子がおもしろくて、俺はやっぱり笑ってしまう。

「ていうか、朝比奈くん、セクハラぁ」

「すみません」


   *


「今日、帰るの面倒だな。ねえ、朝比奈。明日休みだし、たまにはオールで遊んじゃう?」

 いつものように、夕方のサークルボックスで朝比奈とふたりきり。現在、読み進めている小説が難解すぎて、俺は読むのを中断し、朝比奈に話しかけた。家に帰ってもどうせひとりだし、帰ったら帰ったで家事をしなくてはいけないのが面倒くさい。帰らなければ家事をしなくていい、と単純に考えたのもあるが、せっかくの週末の夜を楽しく過ごせたらいいな、と思い朝比奈を誘った。朝比奈とふたり、ボックスで過ごすこの時間が最近は案外楽しいので、その楽しい時間を延長しようと思ったのだが、

「すみません。残念ですが、僕、実家暮らしなんで帰らないとです」

 速攻で断られてしまった。

「へえ、実家なのか」

 俺はいま、朝比奈の知らない部分を知ったのだな、と、なんとなく思った。すごく些細なことだけど。そして、ちょっと羨ましいとも思ってしまう。実家暮らしなら、一人暮らしのような自由は少ないだろうが、家事の負担も少ないのではないか。そんな、どうでもいいことを考えていると、

「島田先輩、その小説飽きたんでしょう」

 朝比奈は漫画の作業の手を止め、俺の持っている文庫本を見て言う。目ざとい。

「飽きたわけじゃない。難しいんだよ。頭に入ってこなくて、何度も同じ行を読んじゃう」

「そういうときは、その小説を一旦戻して、別のものを読むんですよ。それで、一年後くらいにまた読んでみると、読めるようになってるかもしれません」

「そんなことしたら、一生読まなそうだけど」

 そう言いつつ、俺は、ここまで読んだ、という目印に、文庫本に自分の名前と今日の日付を書いたノートの切れ端を挿んで、本棚に戻す。

「几帳面ですよね、先輩って」

「そうかしら」

「あ、のび太の語尾」

「わかった?」

 些細な小ネタでひっそりと笑いあい、ふと、

「実家暮らしならさ、朝比奈って、じゃあ、普段どこでセックスしてんの?」

 思ったことをそのまま口にしてしまっていた。

「セクハラッ!」

 顔を真っ赤にして、朝比奈が悲鳴のように言った。

「ああ、ごめん」

「あの、僕は日常的にセックスをしているわけではないので、そういう人間ではないので、そんな言い方しないでください」

 少しトーンダウンした朝比奈が言い、

「それは、本当にごめんなさい」

 俺は反省して謝る。朝比奈は顔がいいからモテるだろうと思い、偏見から、ついそんな言い方をしてしまった。顔がいい男が、日常的にセックスをしているとは限らない。などと考えていたら、

「するとしたら、ええと、相手の家とか? に、なるんだと思います」

 朝比奈が、もにょもにょと言った。答えるんだ、と俺は笑う。

「相手のひとは一人暮らしなの?」

 なにげなく尋ねると、「先輩って、一人暮らしですよね?」と問い返された。

「うん」

「じゃあ、問題ないです」

「意味深なこと言うなよ」


   *


「島田先輩の好きな食べ物って、大根ですよね」

 いつものように漫画を描きながら、夕方のサークルボックスで朝比奈が言う。

「うん。言ったっけ? あ、自己紹介シートに書いてたやつ見たんだ?」

 俺も、いつものようにボックス内に放置されている小説を読んでいた。

「はい」

 大衆文化研究会では、新入生が入ると、名簿の代わりに自己紹介シートというものを全員で書いて、それを印刷してコピー本みたいな冊子を作り、メンバーに配るというのが慣例となっている。氏名はもちろん、学部や誕生日、好きな作品や好きな食べ物、趣味などを書く欄があるのだ。

「先輩って、好きな食べ物を原材料で答えるひとなんですね」

「なんて? どういう意味?」

 原材料の意味がわからず、問い返してしまう。

「たとえば、僕は、好きな食べ物の欄に、トンカツって料理名を書きました」

「うん」

「豚肉とは書きません」

「ああ、そういうこと」

 朝比奈の言う原材料の意味がわかり、納得する。

「だって、大根の煮物も、おでんの大根も、ブリ大根も、味噌汁の大根も、大根サラダも、大根おろしも、切り干し大根の煮物も、ふろふき大根も、好きなんだもん。もう好きな食べ物は大根でいいじゃん」

 好きな食べ物の欄に原材料を書いた理由を話すと、

「そこまでいくと、確かに、原材料で答えてもいいかもです」

 朝比奈はあっさりと降参した。

「だろ」

「ふろふき大根といえば、『きつね森の山男』って絵本、知ってます?」

 そう聞かれ、

「あ、それだよ。俺の大根好きの始まりは。あれ、めちゃくちゃおいしそうなんだよな、ふろふき大根がさあ」

 うれしくなって答えてしまう。

「わかります。僕も、あの絵本大好きでした」

 朝比奈のその言葉に、

「おまえもあの絵本好きなのに、なんで好きな食べ物が大根じゃないわけ?」

 俺は素朴な疑問を持ってしまう。

「そういう育ち方もあります」

 朝比奈は言った。そして、

「あの、島田先輩。いつか一緒に、ふろふき大根をつくりませんか」

 などと唐突に言う。

「いいけどさ。それってどういうつもりで言ってんの?」

「先輩がよろこぶかと思って」

 朝比奈の答えにあまり納得できない俺は、自分がそれでよろこぶのだろうか、と考えてみる。が、答えは出ない。朝比奈とふろふき大根をつくって、それが楽しかったら、そのときは、よろこぶのかもしれない。

「うーん。朝比奈が俺をよろこばせようとしてることはわかったよ」

 俺はひとりで納得して言った。

「ありがとね」

 そう言うと、「えっ」と言ったまま、朝比奈は両手で胸を押さえてかたまってしまった。

「どういう反応だよ」

 思わず笑うと、朝比奈は困ったように眉を下げた。


   * 


 朝比奈との出会いは、やはりこの大衆文化研究会のサークルボックスだった。

 ボックスの扉の前で突っ立っていた朝比奈を、「入会希望? 入って入って!」と、俺が無理矢理ボックス内に押し込んだのだ。数日後、正式に入会したという朝比奈に、「あのとき、ありがとうございました」と礼を言われた。

「え、なにが?」

「僕、扉を開ける勇気なかったんで」

「そっか」

 おせっかいだったかも、と、あとになって思っていたので、朝比奈が大衆文化研究会に入ってくれたことにも、律儀に礼を言ってくれたことにも、ちょっとほっとしたのを覚えている。

「島田先輩。漫画、完成したんで読んでください」

 ある日の、夕方のサークルボックスで、朝比奈が言った。

「やった。実はずっと完成を楽しみに待ってたんだよ。やっと読める」

 朝比奈に渡されたコピー用紙の漫画は、結構な枚数になっていた。朝比奈の作業中の手元からちらりと見える絵柄が昭和の少女漫画みたいだったので、そういう世界観の漫画なのだろうと予想していたのだが、扉絵は、高校生らしき女の子ふたりが楽しそうにくっつき合って、スマホで自撮りをしているというキラキラしたワンシーンだった。スマホを持っているので、とりあえず昭和の話ではなさそうだ。

 扉絵をめくって最初のページから数ページに渡って、ふたりの女子高生のキラキラした日常が描かれている。

「すごいな。絵がきれいだし、ほのぼのしてて好き。時代背景と絵柄がちぐはぐなのも、味があっていいと思う」

 言いながら、コピー用紙をめくると、次のシーンで片方の女の子が死んだ。

「急に! なんで!?」

「幽霊との交流を描きたかったので。そのためには片方に死んでもらわなきゃ」

「そうか……」

 朝比奈の言葉に俺は一旦うなずく。そして、

「ていうか、びっくりした。最初から幽霊として登場させるんじゃなくて、楽しそうに生きている姿をこちらに見せつけておいてから死なすという発想が怖いよ」

 思ったことを正直に言ってみた。

「生きるよろこびや、日常の輝きをまず表現しないとと思って。そうしないと、死んでしまった幽霊の悲哀を表現できないじゃないですか」

「なるほど、そうか。そういうもんか」

 朝比奈の言い分を聞くと、悔しいが納得してしまう。

 片方の女の子は死んだものの、幽霊として再び登場し、ふたりの変わらないようで変わってしまった友情が続く。しかし、幽霊と人間なのだ。最後には、必ず別れが訪れる。

「おもしろい。さみしいけど、暗くないっていうか、未来を向いてる最後っていうか。なんていうか、いい話だった」

 読み終わった俺のつたない感想に、朝比奈はうれしそうに微笑んだ。

「朝比奈は、漫画を描くひとになりたいの?」

 俺の素朴な質問に、

「わかりません」

 朝比奈は少し考えてそう答えた。

「もともと、不純な動機なんです。いつもボックスに残ってる島田先輩と、なんとか一緒にいたくて、ボックスに居残る理由として漫画を描き始めたので」

「え。もしかして、これって、初めて描いた漫画?」

「はい。初めて描きました」

 俺は驚いて、手元のコピー用紙を凝視する。とても初めてとは思えない美麗な絵(昭和っぽいが)と、まとまったストーリーなのだ。

「すごいよ」

 それしか言えない。

「絵もストーリーも人真似です。でも、ちゃんと最後まで描くことができたので、達成感はあります」

 朝比奈は、照れたようにそう言った。

「漫画、描いてて楽しかった?」

 尋ねると、朝比奈は少し考えて、

「はい。うまく描けないときは、自分でもびっくりするほどしんどかったですが、トータルすると、楽しかったです」

「なら、よかった」

 そう言うと、

「なんで先輩がうれしそうなんですか?」

 朝比奈が不思議そうに尋ねてきた。

「わかんない。でも、なんかうれしい」

 自分の気持ちをうまく言葉で表現できず、

「俺も、朝比奈の正体、もっと知りたくなった」

 以前の朝比奈の言葉を引用して言う。

「だから、漫画描くの楽しいならさ、これからも朝比奈の描いた漫画、俺に読ませて」

 自分で言ってしまってから、恋が始まりそうだな、と思った俺の言葉に、「はい」と朝比奈はうなずいた。でも、それだけだった。

「おまえ、なにもしてこないのな。せっかく、恋が始まりそうなのに」

 そう言ってみる。

「僕の恋は、もうとっくに始まってますけど!」

 朝比奈は、顔をほんのりと赤くして言った。

「なに、むきになってんの?」

「だって、なにかするにしても、このご時世、許可が必要じゃないですか。どうすればいいのか、わからないんですよ」

「じゃあ、許可を取ってからなんかすればいいだろ」

 朝比奈は、無言で椅子から立ち上がると、向かいの俺のほうへ移動して、「島田先輩、抱きしめてもいいですか?」と許可を求めてきた。

「いいよ。どうぞ」

 俺は言い、座ったまま両手を朝比奈のほうへ広げて、受け入れ態勢に入る。ぎゅっと覆いかぶさるように抱きしめられて、俺は腰を反らして朝比奈の身体を受け止めた。

「今度、島田先輩の家、行ってもいいですか?」

 耳元でそうささやかれ、以前した、どこでセックスをするのか云々の会話を思い出してしまった。

「お互いの正体を、もう少し知ってからにしない?」

 俺の言葉に、朝比奈は、「いいですよ。これからもここで、他愛のない話をしながら、ゆっくりお互いの正体を知っていけたら、それでいいです」と言い、抱き合っていた身体を離す。

 ほっとして、朝比奈の顔を見上げると、幸福そうに笑っていた。



ありがとうございました。


参考

・搾菜の件

花沢健吾『アイアムアヒーロー』全22巻(小学館)

(搾菜が登場するのは3巻)

・のび太の語尾(~かしら)の件

藤子・F・不二雄『ドラえもん』全45巻(小学館)

・ふろふきだいこんの件

馬場のぼる『きつね森の山男』(こぐま社)

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