まさかの能力(チート)?!
前回のあらすじ
魔石図鑑を見たメルルは魔石には秘められた力があるという情報を手に入れた。
秘められた力を引き出せれば一攫千金のチャンスかもしれない。
やるべきことをまとめたメルルの道はまだ序章にすぎない。
決意してから数日後
とりあえず体力をつけようと庭にでて運動を始めた。
庭はまあまあの広さがあり歩き回るだけでいい運動になる。
メルルの体では1周でひいひい言うが、それもこの数日でマシになってきた気がする。
さすが魔石で生計をたててきた家。門や柱に魔石が埋め込まれている。
綺麗だなぁ!
でも少し怖いことがある。そう、この家は幽霊が出るのだ!
姿は見たことないけどよく声が聞こえる。
大きい声ではない、ヒソヒソ声。
何をしゃべってかは全然わかんない!
ほんとに怖い!
今日だってほら……。
うう……こういうのって一旦気になるとずっと気になって仕方がない。
しかもどこから聞こえるかわかんないし!
ただ朝とか夜には聞こえない。
なんでだろ……。
ひそひそ声から逃げるように屋敷へ戻る。
すでに昼過ぎでお腹はペコペコ。
「あれ?」
耳を掴んでまわす。
なんか屋敷の中なのに声が聞こえる。
疲れてるのかな……。
首も回す。
声は止まらない。
ザワザワして気持ち悪い!
自室へ走って逃げる。
バンっ!
扉を勢いよく閉めて呼吸を落ち着けようとする。
「ね、ね、ね」
「ひぃっ!」
自室の中なのに聞こえる!
布団を頭まで被って何とか声を消そうともがく。
布団で壁をすればだいぶ気にならなくなった。
ふぅ。と息をつく。
コンコン
「はぁい。」
リュシーが来たことを感じ安堵から気が抜けた声が出る。
「お嬢様〜お食事を〜って大丈夫ですか?!」
ベッドで蹲る私を見てリュシーが駆け寄ってくる。
「こ、声が……。」
「声?あっ!もしかして発作ですか?!薬持ってきますね!」
ダダダダっとリュシーは走ってどこかへ行ってしまった。
リュシー発作って言ってたな……。
メルルがずっと持ってたやつなのかな?
「持ってきましたよ!起きれますか?」
いつの間にか戻ってきていたリュシーが錠剤と水を差し出す。
「あ、ありがとう……。」
知らない声が渦巻く中声を何とか絞り出して薬を受け取る。
そしてごくんと飲み込む。
シン。
飲んだ瞬間に空間が静かになった。
この薬……すごい……。
「久々にでてましたね……。最近ご無理をされてたから……。」
心配そうにリュシーが顔を覗き込んでくる。
「そう……だっけ?」
情報を引き出そうととぼけてみる。
リュシーはまるで私が転生したことを知ってるかのように情報を話してくれるからなぁ。
「そうですよ!ちょっと前は毎日声が聞こえるって怯えててずっと薬飲んでたじゃないですか?!最近お嬢様変ですよぉ。まるで人が変わったみたい……。」
「そ、そうかな?原因ってなんだったっけ……?」
「医者からは分からないって言われてましたよ!それも覚えてないのですか?元気になるのは私も嬉しいですけどね?あまりご無理はなさらないでくださいよ……。」
リュシーの手が優しく私の頭を撫でる。
温かくて気持ちがいい。
「うん……。」
「はっ!も、申し訳ありません!妹がいるせいでつい!」
焦ったようにリュシーは手を引く。
「全然大丈夫だよ?すごい心地よかったからまたして欲しいぐらい!」
「良かったです……。またいつでもお申し付けくださいね!」
ニコニコしながらリュシーは言った。
「ご飯食べれそうですか?」
「うん!ありがとうリュシー。」
また取りに来ますので。
とリュシーは1度出ていった。
お昼はガレットみたいなものとコーンスープ的なもの。
コーンスープは冷たいもので頭も少しずつ冷静になってくる。
転生する前からずっと発作が出ていたとすると最近出始めた理由は体と私の精神が馴染んだ?癒着してきた?ってことかな。
元のメルルと私が一緒になっていくことは少し怖い。
お互いが消えてしまってもう分離出来なくなるみたいで……。
そんなことを考えたって仕方がない!
ぶんぶんと頭を振る。
でもこの幻聴?みたいなのは良くない。
何も進まなくなる。この原因も探さなきゃいけないんだ。やらなきゃいけないことがまた増えてしまった。
はぁ。さっきの感覚を思い出してゾッとする。
体力つけるよりもこっちを片さなきゃ。
机の上で割れたまま置かれているオニキスを見つめる。
はぁ。宝石に集中したいのに……。
ふいに触れたくなってオニキスを手を取る。
「で……ないで……。」
「えっ!」
声が突然聞こえて驚いてしまいオニキスを落としてしまった。
なんで声が!
床に転がったオニキスを恐る恐る見つめる。
まさか……。
もう一度手を伸ばして触れてみる。
「むし……で」
やっぱりそうだ!
触った瞬間に声が流れ込んでくる。
意を決してオニキスを掴む!
「無視、しないで。私はここに。」
「えっ。」
さっきとは違う驚きが込み上げる。
「やっと聞いてくれた。」
「ほ、宝石が喋った?!」
「静かにした方がいいんじゃない?」
「そうかも……。えってかなんで喋れるの?」
「ずっと私たち、喋ってた。貴女が聞いてくれなかっただけ。」
「そ、そうなんだ。」
私の頭がおかしくなったのかな……。
ありえない状況に混乱する。
リュシーに薬追加でもらおうかな。
「私たち、わかってもらえない。」
「え?」
無機質に喋り続けていたオニキスから悲しそうなニュアンスを感じる。
「もっと力あるのに。聞いてもらえない。」
「力?」
「そう、秘めたる力。ある。」
これって前本で見たやつ?
「めっちゃ強い……やつ?」
「そう。」
わぁお。まじ……か……。
「もしかして……他の魔石達も喋ってる?」
「そう。」
「力の引き出し方教えてくれるの?」
「それが私たちの願い。」
これって幻聴じゃなくて能力だったのか……。
てかこれって……チートじゃない?!
なんか思ったよりも道が開けて来たな。
ちゃんと仲良くなれば全部の魔石の力引き出せるんじゃない?!
ゴクリ。
喉を鳴らしてオニキスをぎゅっと握った。
次回、交渉編。ってこと。
お会いできて光栄です。
宝石の声ってなんなんでしょうね。
魔石ごとに色んなキャラを作ろうと思っております。
お楽しみに
それではまた次の夜に。