4.告白の行方
会社の昼休み。
美波は自分のデスクに突っ伏してぐったりとため息をついた。
そんな様子に気づいた大学から一緒の同僚、由香がすかさず椅子を寄せてくる。
「どうしたの?疲れてる?」
「…うん。ちょっと昨日夜更かししちゃってさ…。」
美波は顔を上げて苦笑いした。
由香は手に持ったコーヒーを机に置いて興味津々といった様子を見せた。
「なんかお悩み…?」
「あー、まぁ…」
答えに詰まる美波に由香は恋か!と嬉しそうに声を上げた。
周りを気にしながら声をひそめ、美波はポツリと話し出す。
「昨日…陽翔くんに告白されて…」
「え、陽翔って湯目陽翔…!?すっごいじゃん!モテるらしいよーあの子。こないだも受付の子が告白したらしいし。振られたって話だけど。で?返事はなんてしたの?」
「まだしてない…」
「なんで?気遣いもできるし優しいって噂じゃん!早くOKしちゃいなよぉ」
「断ろうと思ってて…」
由香にとってそれが意外だったのだろう。由香は目を丸くして驚く素振りを見せた。
「すごくいい人なのは分かってるんだけど…私には…忘れられない人がいるから…」
しんとした空気が2人の間に流れる。
由香はそっと微笑んだ。
「そっか…。航平さんね…。」
美波は小さく頷いた。
「でもね美波。新しい恋も悪いことじゃないんだよ?航平さんを忘れるんじゃなくてさ、ちゃんと胸に閉まった上で誰かを好きになってもいいんだよ?」
「それは…わかってるけど…」
「まぁ、美波が決めたならしょうがないね。」
私は応援してるぞぉ湯目くん!協力も厭わない!と軽口を叩く由香に応援しなくっていいってばと美波は笑う。
その時美波の携帯が振動した。
何気なく手に取ると
ーーー今日の夜空いてますか?
それは陽翔からの連絡だった。
ひゅーひゅーと野次を飛ばす由香を横目に美波は
ーーー空いてます。
と送った。
「ごめんなさい先輩!僕から誘ったのに仕事長引いちゃって!」
階段を急いで駆け降きたのだろう少し汗をかきながら陽翔はエントランスにいる美波に謝りながらやってきた。
「大丈夫だよ」
そう言って笑う美波の横で由香が仁王立ちして胸の前で腕を組んで立つ。
「美波を待たせるなんて……」
ちょっと由香!という美波をよそに由香は言葉を続ける。
「お詫びに私も連れて行ってよ!!」
「え、あ…美波先輩がいいなら…」
子犬のようにおどおどしながら美波の様子を見る陽翔とお願いお願い!と懇願する由香に美波は深いため息をついた。
「ここの居酒屋美味しいんだよー。焼き鳥3つと…2人ともビールでいい??あ、ビール3つで!!あ!私のこと気にしないで喋っちゃって!」
そんなこと言われても…と思いながらも美波は話し始めた。
「あの…気持ちは嬉しかったんだけど…。陽翔くんにはもっといい人が…いるんじゃないかなって思うんだ…。だから…」
「そうですよね…僕なんかじゃ先輩に釣り合わないですよね…。高望みしてごめんなさい…。」
「違う…そうじゃないよ…。本当に私が悪いだけで…。」
先にビール3つお持ちしましたー。と店員が置いたビールを由香が手に取るゴクゴクと飲み始める。
「え、由香、ちょっと、大丈夫??」
一気にジョッキ一杯分のビールを飲み干した由香は陽翔にこう告げた。
「美波はね!忘れられない人がいるだけ!!湯目くん!君に待つ覚悟があるならチャンスはあるぞ!」
「由香っ!」
美波は由香を睨みつけた。
恥ずかしさと怒りで涙が滲みそうになる。
だが陽翔はそんな美波をまっすぐ見つめなにかを考えた後ゆっくり口を開いた。
「じゃあ…俺……待ちます。」
覚悟に満ちたその声に美波の心の奥が震えた。
そんな美波の横で由香がニヤリと笑い満足げに言う。
「してやったり。」
真っ赤になって俯く美波を見つめながら陽翔はどこか安心したように静かに微笑んでいた。




