表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第1章 小学6年 夏

「中学の野球部に、女子が一人いるんでしょ」

 試合を終え、蛇口の水をバシャバシャと顔にかけていた時だった。同じ学年の安部凛太が顔に付いた泥を手で拭きながら、こちらに歩いてきた。

「ああ、そうらしいな」

 そうらしいなとは言いながら、頭では全く別のことを考えていた。7回表にセンター前ヒットを打たれた場面、自分の目の前に白い蝶が横切り、一瞬集中を切らせた。相手は同じチームの5年生で、通常であればヒット1本すら打たせない自信はあったのだ。

「凛太、俺のクーラーボックスどこにある?」

「ベンチの裏にお前の母ちゃんがさっき置いてったよ」

 クーラーボックスを開け、アイシングサポーターを肩に巻いていると、凛太がクーラーボックス内の保冷剤を手に取り、俺の頬に当ててきた。

「冷てえな、やめろよ」

「経験者なんかな? 俺あんまり上手くないと思うんだよなぁ~」

「どうでもいいだろ、そんなこと」

 凛太の手から保冷剤を奪い取り、クーラーボックスにしまう。右肩がひんやりと冷たくなってきて、少し気分は良かった。先程の白い蝶だろうか、物置の傍の木の葉の上で、羽を休ませていた。

「なぁ、お前さぁ」

 振り返らずになんだよと答えた。

「中学でも野球やんの?」

「さあな。気が向けばね」

 もちろん続けるよ、とは言えないのが俺の性格だ。小学校から自宅の帰路にある中学校のグラウンドは、想像しろと言われたら、どこまでも鮮明に思い出せるほど目にしている。ただ中学生になったら、なんて言われても、今はまだイメージが全くつかなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ