第七章 覚醒
「う……あ……」
キタガワは──曖昧な空間にいた。自らが死んだのか生きているのかすらわからない。っその目に見えているのは──
(あれが、走馬灯かね……)
この世界に来る直前のことだった。武道館でのタイトルマッチに勝利をおさめたキタガワは、すぐに私服に着替えこっそり会場を出て──保育園で一人寂しくお迎えを待っている娘の紬を迎えにいっていた。その途中──
キー! ドカン!
赤信号にも関わらず突っ込んできたトラックに、ふっ飛ばされたのだ。
その時に見えた光景──
〈ママ……〉
〈紬……つむぎー!!〉
手を伸ばす紬の姿。しかし、いくら手を伸ばしてもそれには届かず、遠ざかっていくばかりである。そして、再び目の前にその光景が広がりつつある。
(ああ、アタシは……本当に死ぬんだな、今度こそは……)
──その時であった。
〈ママ──〉
〈あ、アンタは誰だい……〉
手を伸ばしたキタガワに触れるあたたかい感触。それは、白く弱々しく光る、今にも消えそうな命のきらめき──
〈ママ、ボクノ、チカラヲ……〉
〈なんだか知らないが……アンタ、力を貸してくれるのかい? ヨシ!〉
キタガワがその光をグッと握る。
〈いくよ……ボウヤ!〉
「ぐへへ……さっそく、R十八Hサービスから始めるとするからなぁ~」
ジョーが涎をたらしながら──キタガワの赤いビキニに太い指をかけたその時である。
カパッ。
「カパッ?」
ジョーの目の前でぐったりとしていたキタガワの首が不自然に持ち上がり、大きく口が開かれ──
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
「う、ウギャアアアアアアアアアアアッ!」
その口から吐き出された凄まじい勢いの火炎が、ジョーの顔面を直撃するッ!!
突如キタガワに宿った力、それは──この世界最後のドラゴンの力だった! 最強の女戦士となったキタガワの前に次々と現れる強敵、そしてこの世界すべてを巻き込む大陰謀! はたしてキタガワは一億YENを稼いで大魔道士マックマンに会い、娘の待つ現実世界に戻れるのか!
第一部 これにて完!