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影踏み
…あの日、俺は影踏み遊びをしていた。
みんなで影を踏んで、楽しかった。
小さな影を踏んでは、セーフだと声をあげた。
大きな影を踏んでは、ここは三人までだとケンカをした。
その日も、全力で、遊んでいた。
ひときわ黒い影があったので、俺はそこをめがけ…ジャンプした。
着地したと思った瞬間、体が…スウと地面に吸い込まれた。
影しかない所に、俺は落ちてしまったのだ。
もう…、太陽を、色を…、 何かを目にしたのは、何十年も昔の話だ。
誰か、誰か…、落ちてこないだろうか。
誰かが落ちてきたら、そいつを踏み台にして、影の向こうに行けるのに。
ずっと、ずっと…俺は待っている。
影の中を這いずり回りながら、引きずり込むやつを待っている。




