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歩道橋での邂逅
私は、歩道橋が好きだ。
大通りにかかっている歩道橋を渡る時、いつも中ほどで足を止め、眼下を見る。
自分の下を通り過ぎてゆく車を見るのが…心地いい。
遠くから向かってくる車を眺めていると、何となく癒される。
遠くに向かって小さくなっていく車を見ると、何となくすっきりする。
じっと見ていると、吸い込まれて行きそうな…。
ぼんやり眺めていると、飛び込みたくなるような…。
「お嬢さん、何か…困りごとでも?」
突然初老男性に声をかけられ、ハッとする。
いつの間にかトリップしていたみたい。
「ぼんやりしてただけです…」
「飛び降りするんじゃないかって心配したよ」
親切な男性に頭を下げ、階段に向かい。
ふと、振り返ると。
誰 も い な い 。




