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余談・水酸化カリウムと炭酸カリウム
エルンストが迎えに来る前も、ベルは錬金術師の遺した書物をひたすら探していた。
「そうか!中和するのに、アルカリ性のものをあてがえばいいんだから、黄砂に含まれる水酸化カリウムじゃなくて、草木を燃やした灰に含まれる炭酸カリウムを使えば、人体に無害だわ!」
これをエルンストに伝えなくては。そして、炭酸カリウムを酸性雨に作用させる装置を作る!
ベルは孤軍奮闘した。中空を飛びながら、炭酸カリウムを噴霧する装置を、あれでもないこれでもない、ここがこうだとあれが出来なくて、でもこっちを変えるとここが……と思考を巡らせた。
中和する時に二酸化炭素が発生することも実験でわかった。
魔技師ベルの真骨頂がここに証明された。
伝書鳩にかいつまんで書いた手紙を託し、エルンストにしか伝わらない魔法の呪文の公式を書き止めた。
くるるっぽー、くるるっぽー。
「鳩さん、お願いね」
チュっとキスして、鳩を空に放った。
全てうまくいきますように!
どこまでも蒼い空を見上げて、彼女は願った。