エピローグ☆ベル
エルンストが北部へ帰ってからひと月たった。
ベルのアトリエの窓に真っ白い伝書鳩が飛んできて、ガラスをコツコツ突いた。
「手紙?……エルンストから!」
くるくる巻いてある羊皮紙をはずすと、鳩は飛び去った。
羊皮紙を広げてみたが、なにも書かれておらず、まっさらだった。
「どういうこと?」
「こういうこと」
ベルの背後にエルンストが立っていた。
「エルンスト!」
ベルが思わず彼に抱きついた。ぼろぼろ涙がこぼれる。
「ベル。北部の街を案内するよ」
さあーっと雨が降り出した。2人は手を繋いで歩いた。
いつのまにかベルのアトリエは見えなくなって、どこを歩いているのかわからなくなった。
「これも魔法?」
「そうだよ」
緑の萌える林を抜けて、苔蒸した豊穣な土を踏んで、原っぱに出た。雨がやみ、日の光が差した。
「見てごらん、ベル」
さあっと一斉に花々が咲いた。水滴が光を反射してキラキラ光った。
「ここまで北部は回復したよ。君に一番に見せたかったんだ」
「ありがとう。エルンスト」
「……さて、ここから君1人で戻れるかい?」
「えっ?」
「送ってくつもりはないよ」
「いじわる!」
ベルはエルンストの胸板を叩いた。
「俺と一緒にならないかって意味だけど」
「えっ」
ベルは頭の中が真っ白になった。