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大陸北部の酸性雨

こと。

食事の皿がテーブルに並べられた。

沸かしたお湯でハーブティーを淹れて、ベルは席に座った。

真向かいの席のエルンストはさっきからずっと腹がぐうぐう音を立てて、所在なげにしていた。

「どうぞ」

「いただきます!」

がつがつ食べ始めるエルンスト。

ベルはちょっと微笑んで、自分も食べ始めた。

「そんなに食事をとれないほど切羽詰まって錬金術師に会いに来たの?」

「火急の要件だ。大陸北部の酸性雨が深刻化していて、対策の手立てを伺いに来たんだ」

「酸性雨?」

「化石燃料を燃やした空気が雨に溶け込んで酸性になる。植物は枯れ、人の髪は緑になり、鉄が溶かされる」

「具体的な手立てを聞きにきたの?」

「まあ、手っ取り早く言えば、化石燃料を燃やすのをやめりゃいいんだが、生活に密着した燃料供給源だからそうもいかない。酸性の雨を中和する方法を知りたいんだ」

「酸性雨を中和する方法」

ベルのアトリエにある薬品で小規模な実験はできそうだった。

「あとで一緒に幾つか実験してみましょう」

「助かるよ」

窓の外は薄暗くなっていた。雨は相変わらずざあざあ降りだったが、この地方の雨はまだ大丈夫。植物が瑞々しく雨の恩恵を受けている。

カンテラの灯りを調整して、いい具合に部屋を照らす。

「いやあ、おいしかったよ。特に卵が絶品!良い環境なんだな」

ベルは嬉しそうに笑った。

「あなたが来る少し前に届いた卵よ。新鮮で美味しいはずよ」

「俺が来ること知ってたの?」

「まさか!」

くすくす笑いながら、実験の用意をする。

「酸性雨に見立てて薄い硫酸を使うわ。気をつけて」

「オッケー」

中和させるには、アルカリ性の物質が必要だが……

「自然にあるものでアルカリ性のものがいいわね」

「玄武岩が良いって聞いたんだが」

「玄武岩。火山地帯の岩をとってこなくちゃ」

「玄武岩の粉末を持ってきた」

「そうなの?手間が省けたわ」

粉末を硫酸に淹れてガラス棒で混ぜる。

リトマス試験紙が中性になった。

「これがわかってるんなら、なんとかできなかったの?」

「岩を砕くために許可がいるんだ。それから、粉を散布して支障がないか実験してほしいって依頼」

「んー、自然現象で、鉱物が砕かれて風に舞う現象があったような、なかったような」

「おいおい、しっかりしてくれよ」

「調べるわ。あなたは2階の奥の部屋で休んで」

「悪いな。実をいうとくたくたなんだ」

「わかってる。おやすみなさい」

「ありがとう。おやすみ」

夜はふけていった。

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